【北海道・札幌】アイヌ文化を五感で味わう食と空間。北海道に来たら必ず訪れたいお店『海空のハル』

北海道や樺太、千島列島に住み、狩猟や漁をして暮らしていた先住民族・アイヌをご存じですか?今回紹介するのは、狸小路駅の近くにある個室居酒屋『海空のハル』。道産食材を使った季節料理や地酒、そして、アイヌの住居を模した“チセ”で味わう伝統料理が自慢です。そんな同店を運営するのは、店長の中田さん。知れば知るほど面白いアイヌ文化を五感で味わえる、同店の魅力を語ってくれました。

アイヌ振興プロジェクトとのコラボレーション

以前、こちらには19年続くお店『札幌海鮮問屋 魚金』がありました。オーナーが店舗のリニューアルを決めたところ、白老町のアイヌ民族博物館の国立化に向けた “ルイカ・プロジェクト”の話を持ちかけられます。こちらは、アイヌ文化を各地域や人々と繋げ、発信していくことを目的としたものでした。オーナーは喜んで協賛を決め、『魚金』はアイヌの伝統文化をコンセプトにした居酒屋として生まれ変わることに。かくして今年5月18日に誕生したのが、『海空のハル』なのです。

博物館長が監修した本格料理と内装

「北海道は、国内海外問わず多くの観光客が訪れるところ。だからこそ、多くの人に古き良き民族文化に触れてほしいですね。当店でのお食事を通してアイヌに関心を持ち、民族博物館に足を運ぶ…そんな架け橋のようなお店になれたらと思います。」と中田さん。
 本格的な雰囲気の“チセ”(アイヌの住居を模した個室)はもちろん、こちらで食べられるアイヌの伝統料理は、博物館館長の監修のもとで作られたこだわり深いものだそうです。

五感でアイヌの伝統を体験できるチセ

予約制の個室・チセは、囲炉裏や民具に囲まれたアイヌ住居の雰囲気を体験できる、特別な空間です。こちらでいただく“アイヌの伝統食セット”(1日8食限定、1,980円)は、串焼きの“ユク”(鹿肉)、サーモンなどの魚をたたき、塩のみで味付けする“チタタプ”、“チポロシト”(芋餅のいくら乗せ)など、趣向を凝らしたアイヌの伝統料理を味わえます。大根、人参、じゃがいも、鮭など具だくさんの汁“オハウ”は、極寒の北海道でアイヌの人々の身体を温めてきた料理です。山なら鹿肉、海なら魚やアザラシというように居住地域によって色々な具を入れ、素材の味と塩や昆布、鹿の骨などのダシで調味していたのだとか。

伝統食セットは、野菜の切り方や魚の下ごしらえなど、博物館館長の指導のもと試作と試食を繰り返して完成した、同店の自信作だといいます。
 “カムイトノト”は、アイヌ民族が飲んでいたお酒を、小樽の田中酒造に再現してもらったもの。どぶろくのような見たながらあっさりとして飲みやすく、甘い香りがするのが特徴です。「いつもはお酒を飲まない女性のお客様が、“どこで売ってるの!?”と大変感動されて、酒造に直接買いに行ってくれたほどです。チセ以外の部屋でも単品でお出しできるので、ぜひ冷で飲んでみてくださいね。」

鮭はアイヌにとって“カムイチェプ(神の魚)”、“シぺ(本当の食べ物)”と呼ばれるほど、生活に欠かせない食材でした。このように吊るして乾燥させ、あぶったり水でもどして料理に使ったのだとか。出かけるときに数切れ懐に忍ばせ、歩きながらかじったり、お弁当の代わりに食べていたそうですよ。

北海道のいいとこ取り!海の幸、山の幸

▲漁師のお造り10点“ヤン衆船盛り”(5,000円)

チセ以外の席では、道産食材を使った季節料理を贅沢に味わうことができます。思わず歓声を上げてしまいそうなお造りは、新鮮さと身の弾力が何よりの自慢。厚切りで食べ応えも抜群です。こちらは2人前、3人前での用意もできるとのこと。

女性人気の高い活アワビは、お造りでコリコリした歯ごたえを楽しむほか、バター焼きもおすすめです。稚内や礼文島の近海で水揚げされるホッケ、種類豊富な海鮮丼など、北海道の海の恵みを心ゆくまで堪能してください。

鵡川町産の鹿肉は、狩猟から処理まで一貫して行う“むかわのジビエ”お墨付きのものです。臭みがあって固いという鹿肉のイメージを一気に覆す、柔らかでジューシーな味わいは体験の価値ありです。あぶり焼き、カツレツ、煮込みなど色々な料理で味わいましょう。秋には生サンマの塩焼き、焼いても蒸しても美味しい牡蠣、大根おろしで食べる舞茸の天ぷらなどが登場します。おすすめ料理は月替わりで色々なものが登場するので、いつ来ても楽しみが尽きませんね。

こだわり地酒で今夜も一杯

『海空のハル』では、毎月数種類仕入れるおすすめ限定酒と合わせ、北海道の地酒を常時15種類ほど取り揃えています。以前は全国のお酒を扱っていたそうですが、リニューアル時に地酒にこだわって仕入れるようになったのだとか。“高砂酒造”、“国稀”、“千歳鶴”など個室全てに酒蔵の名前が付いているのも、地酒への愛が感じられますね。ビールでは、七飯町のブロイハウス大沼が作る“大沼ビール”がおすすめとのこと。美しい琥珀色ときめ細かな泡が自慢の、喉越しの爽やかな一杯です。

ここでしか体験できない食、酒、文化

「アイヌの伝統料理を再現し、実際に売っていくのはとても大変でした。ただ提供するだけでなく、特注の器やチセのような特別な空間を用意したり、五感で楽しめるように工夫しました。」そんな中田さんの努力が実り、アイヌ文化の研究に訪れる教授や生徒、国籍問わない観光客など多くのお客様に恵まれている同店。中には、一人でチセを予約する方もいるそうですよ。アイヌの本格的な雰囲気の中で、伝統料理に舌鼓を打つ…こんな非日常の体験ができる居酒屋は、北海道広しといえども『海空のハル』のみです。

お店では、こちらのアイヌの伝統衣装を着て記念撮影をすることもできます。鉢巻きまでしっかりと巻いて、ノリノリの方も多いそうですよ。アイヌの文様は一つひとつに違った意味があり、衣服の他、マキリ(小刀)、テクンペ(手甲)など生活用品にもたくさん描かれていたそうです。

お客様の喜ぶ顔を励みに

先日は肌の色、髪の色も様々な外国人グループが来店し、料理とお酒で楽しく盛り上がっていたのだとか。衣装を着て記念撮影をし、大喜びでお店を後にしたそうです。日本の、そして北海道が誇る民族文化を、たくさんの人に楽しんでもらえた…それを実感したとき、中田さんは“苦労してお店を作り上げて良かった”と、この上ない幸せを感じるのだといいます。

「若い方々には、アイヌの文化に触れる機会がほとんどありません。当店をきっかけに関心を持って、博物館に足を運ぶ方が増えていけば嬉しいですね。素晴らしい民族文化の発信拠点として、これからもお店を盛り上げていきたいです。」と笑顔の中田さん。

“アイヌの人はこんなものを食べていたんだ!”“家族でどんな会話をして、どう過ごしていたのかな?”想像があれこれと膨らみ、アイヌの生活についてますます知りたくなる空間がここにあります。
 北海道への愛が詰まった食と酒。そして、五感で体験できる伝統文化。他店では味わえない特別な時間を楽しみに、『海空のハル』に訪れてみてはいかがでしょうか。

【店舗情報】