【福岡・金山】薪火が映す、素材の物語。― La Terra（ラ テッラ）―

地下鉄七隈線・金山駅から歩いて3分。
城南区の住宅街に、静かに炎の香りを漂わせる一軒があります。
季節の食材をまっすぐに、滋味深く仕立てるイタリアンレストラン──La Terra（ラ テッラ）。
薪の音、石窯の熱、漂う香ばしい空気。
そのどれもが、食欲をゆっくりと呼び覚まします。

店名の「Terra」はイタリア語で“大地”。
契約農家から届く野菜やハーブ、イタリア直輸入の食材など、自然の恵みを受け取る“土の力”を大切にしています。
シェフが目指すのは、派手な演出よりも、「また食べたくなる、記憶に残る一皿」。
滋味という言葉が、ここでは確かに形を持っています。

薪火の香りが織りなす、生命力のあるイタリア料理

La Terraの料理を特徴づけるのは、“薪火”の存在です。
薪を燃やす炎は、炭よりも柔らかく包み込むように素材を加熱し、
肉は香ばしく、野菜はしっとりと甘みを引き出します。
火を操るのではなく、炎と対話する。
その絶妙な距離感が、シェフ椎山良一氏の真骨頂です。

肉料理だけでなく、野菜や魚にも薪火を使うのがこの店の流儀。
焦がしの香りが全体に奥行きを与え、ひと口ごとに“自然の熱”を感じる仕上がりになります。
薪の香ばしさと、野菜の水分が生み出す蒸気が混ざり合い、口の中で一瞬、森の香りが広がるような感覚。
この温度と香りのバランスが、La Terraの真髄です。

手打ちパスタが語る、シンプルの豊かさ

店を象徴するもう一つの魅力が、手打ちパスタです。
生地を練るたび、その日の湿度や小麦粉の状態に合わせて水分量を微調整し、理想の食感を探り続けます。
ソースは多彩ながら、どれも素材の輪郭を生かすものばかり。

例えば、完熟トマトを使ったソースは、酸味と甘みの余韻が見事で、シンプルでありながら力強い旨味を感じさせます。
旬のきのこや自家製ラグーを合わせた一皿も人気で、香り、食感、塩味のバランスが絶妙です。

ワインが導く、料理との対話

La Terraでは、イタリア20州から厳選したワインを中心に、ラインナップ。
赤・白・スパークリングはもちろん、自然派やデザートワインなど、表情豊かなセレクトが揃います。

ワインは料理の脇役ではなく、もう一つの“主役”。
酸味の効いたトマトソースには軽やかな赤を、薪火で仕上げた肉にはふくよかなボディを。
食材の味わいを引き立てるペアリングを提案してくれます。

アルコールが苦手な方のために、ハーブや果実を煮詰めた自然派ドリンク「ハーブコーディアル」も用意。
季節ごとの香りを楽しみながら、心までゆるむ時間を過ごせます。

大地とつながる、シェフの哲学

オーナーシェフ・椎山良一氏は福岡出身。
2001年に単身でイタリアへ渡り、トスカーナ州やシチリア島で修行を積みました。
「土と生産者を尊敬する」──それが現地で学んだ教え。
福岡に戻ってからもその精神を貫き、自ら農家や猟師を訪ね、旬の素材を仕入れています。

店の前にはハーブや季節の草花が育ち、料理の香りと共に、自然の息吹を感じられる小さな庭のよう。
La Terraは、単なるレストランではなく、“人と食材、人と自然がつながる場所”として在り続けています。

La Terraの料理には、一皿ごとに確かな温度と優しさがあります。
手間を惜しまず、食材と誠実に向き合う姿勢が、食べた人の記憶にやわらかく残るのです。

ディナーのひとときには、炎の揺らめきを眺めながらワインを。
ランチでは、光の差し込むテーブルで季節の恵みを。
特別な日にも、日常の延長にも寄り添う場所。

福岡・七隈のLa Terra。
ここには、華美ではない“上質”が息づいています。
薪火の香りと大地の味わいが、今日も静かに人々を迎えています。