【千葉・柏】空きアパートをDIY! 科学館『Exedra』で宇宙と科学に思いを馳せて

 「柏駅前に面白そうな科学館ができるらしい」
 そう聞きつけ、まだ開館前の科学館『Exedra(エクセドラ)』に一足早くお邪魔しお話を伺ってきました。定常公開はまだ少し先となりますが、オープンに先駆けて行われているイベントの様子とあわせてご紹介いたします!

街の科学館での “アストロトーク”

 JR柏駅西口を出て徒歩数分。細い路地沿いに、一棟のアパートを改装して作られた科学館があります。名前は『Exedra(エクセドラ)』。

 “エクセドラ” とは、古代ヨーロッパ貴族の自宅にあった団らんスペースのこと。かつて貴族たちは、石造りのベンチに座り半円状のテーブルを囲みながら、哲学や科学について日夜議論をしていたそうです。

 この日行われたイベントは、エクセドラでは2回目となる天文講座 “アストロトーク”。

 実験・工作がある小中学生を対象にした “昼の部” と、晴天時には天体観察もできる大人向けの “夜の部” に分かれています。どちらも2017年10月~2018年3月にかけた全6回の開催。毎回異なるテーマで宇宙について学ぶことができます。今回お邪魔させていただいたのは昼の部。この日のテーマは “宇宙の立体地図を作ろう!!” でした。

 受付開始時刻になると、敷地内にはすでに賑やかな子どもたちの声が。参加人数も多く、子どもたちが全員入るとアパートの一室がいっぱいになりました。早くも人気の高さが伺えます。正面のスクリーンに向かって木の椅子や大きな机が並ぶ部屋は、小学校の理科室のようで懐かしさを感じました。

 科学館エクセドラは、柏の葉サイエンスエデュケーションラボ “KSEL(ケーセル)” という非営利団体によって運営されています。この日講師を務めていらっしゃったのは、KSEL会長の羽村さん。

 天文講座といっても堅苦しい様子はありません。なんだか近所のお兄さんが子どもたちに勉強を教えてあげているような雰囲気です。みんな興味津々にスクリーンを見つめ、工作の時間はもちろん、講演中も子どもたちの楽しそうな発言が飛び交っていました。

 同日おこなわれた大人の部のテーマは、“見上げてごらん 大きな月と流れ星”。「天文に詳しくなくても大丈夫?」と心配される方もいるそうですが、アストロトークはそんな “初学者(初めて体験する人・学び始めたばかりの人)向け” の天文講座。「興味はあるけど、日頃あまり科学に触れる機会がないという方、大歓迎!」という、気軽に参加できるイベントです。星や月を見上げるのが好きなら、ぜひ一度参加されてみてはいかがでしょうか?

子どもたちの作品も展示される手作り科学館

 KSELは、東京大学柏キャンパスの大学院生が主体となり、2010年6月に発足された団体。“科学コミュニケーション活動を通じた地域交流の活性化” をテーマに掲げ、千葉県柏市柏の葉地区を中心に活動し、これまで7年間かけて徐々に活動の場を広げてきました。

 科学館内の壁や天井、水回りに至るまで、アパートの改装作業はすべてが地道なDIY。自分たちの手でコツコツと改修を進め、2017年10月、待望のイベント開催に至りました。

 こちらの写真は、イベント開催の1か月程前に伺った際の様子です。実はこの時はまだ部屋の中も解体作業の真っただ中でした。

 天井の梁をはがしたり、色とりどりの床板を組み合わせてフローリングにしたりと、まるで秘密基地を作っているよう。まだ見ぬ科学館にわくわくしながら見学させていただきました。

 この日の講座が行われた一室(ワークショップルーム)の他に、見学させていただいたのはお隣の展示室。化石や生物の標本、科学に関する書籍などが置かれていました。

 展示物に関してはまだまだこれから増やしていかなければならず、現在も定常公開に向けて猛ピッチで制作中なのだとか。

 書籍も増やし、イスとテーブルを設置してゆっくりと閲覧してもらえるような場にしたい、とメンバーの方はその完成イメージを語ります。

 その他にも、過去のイベントで子どもたちが制作した自由研究作品の展示スペースも作られるのだそう。自分の作ったものが街の科学館に飾られるなんて、なかなかできない貴重な体験です。

手作り科学館誕生までの道のり

 イベント開催前にお伺いした際、エクセドラができるまでの道のりを、会長の羽村さんにお聞きしました。着想したのは、ある地域活動を行っていた時だったそう。

 自分たちで耕した畑を使って野菜やハーブを育てながら理科を学ぶ ”理科の体験農園” を運営していました。空き家の荒れた庭を子どもたちと開墾していた時、「こんな空き家をまるごと借りて科学館に作り変えられないか?」と思ったのだとか。

 「ここは “海の部屋”、となりは “山の部屋”、そして2階には “宇宙の部屋” などと部屋ごとにテーマを決めて……実験室も作りたいし、これはなんだかすごく面白くなりそうだと思ったんです」と、楽しそうに話してくれた羽村さん。そこから手作り科学館のアイデアが広がったそうです。

 築30年を超えるアパートを丸ごと一棟改装するのだから、その作業はとても大がかり。資金のやりくりのために、クラウドファンディングを行いました。元々は費用集めが目的でしたが、それを見て資金以外の面で協力してくれる人が現れ始めたのだそうです。

 「資金で協力はできないけど、○○なら得意だから手伝えますよ」と、様々な方が申し出てくれるようになりました。自分たちで補えない部分を各分野に精通した方々が手助けしてくださるのは、とてもありがたかったといいます。

 その他にも、SNSで活動を知って手伝ってくれるようになった方や、近隣の学生ボランティア、過去にKSELのイベントに参加してくれたお子さんのお母さんなど……KSELメンバー以外にもたくさんの方の協力があり、手作り科学館を形にすることが叶ったのでした。

科学を身近に感じられる場に

 「この科学館を作るまでには、科学の様々な分野の専門家やその卵たちがたくさん参加してくれています。そういう専門家たちと近い距離で気軽に話すことができるところが、規模の大きな科学館とは一味違った魅力かなと思います」

 お話を伺った際にも、その場にあった化石や写真などへの質問にとても気さくに答えてくれた羽村さん。イベント当日も、メンバーの方が、イベントに参加している子どもを待つお母さんたちと展示物の話をされている場面を目にしました。立派な設備のある大きな科学館も素敵ですが、こんな風に研究者に気軽に話を聞くことができるのは街の科学館ならではの楽しみ方です。

 「エクセドラは街の科学館ですが、科学を伝えるためだけでなく地域交流の場になればと思っています」そう羽村さんは語ってくれました。

 “科学を学ぶ” といったかたい雰囲気はなく、「興味はあるけど知識は全くなくて……」という大人の方や「理科好きな我が子に何か体験をさせてあげたい!」と願うお父さん・お母さんにぜひおすすめしたいスポットです。オープン前の今行われている天文講座のイベントも「実は星や天体を見るのが好き」という方ならきっと楽しめるはず。

 定常公開が待ち遠しい柏の街の科学館、エクセドラ。現在行われているイベントにもぜひ足を運んでみてくださいね。

■文、写真・yoshikokuroiwa

店舗名 手作り科学館 Exedra(エクセドラ)
住所 千葉県柏市末広町9-6 柏嶋屋荘
電話番号 080-6520-3302
アクセス JR柏駅徒歩5分
営業時間 土日10:00~17:00
定休日 月~水曜日
ホームページ http://udcx.k.u-tokyo.ac.jp/KSEL/
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