【東京・御徒町】食を求めて47ヶ国！ 旅人夫婦が営む多国籍パブ『Hitch×kakeru*』

　東京都台東区、御徒町駅北口を出て歩くこと約20秒！ 世界一周旅したご夫婦がやっている、おもしろい飲食店があると聞いて行ってきました。

世界中の料理とスイーツ、70種以上のビールが味わえる

　『Hitch×kakeru*（通称ヒチカケ）』は旅の帰国から4ヶ月後、秋葉原でオープン。2016年4月にこちらの御徒町駅へ移転しました。

　営むのは、世界47ヶ国を1年4ヶ月で周ったという大田さんご夫婦。旦那さまは世界中のビールを飲み歩き、好みに合うビールを瞬時におすすめしてくれる “おたけ” さん。奥さまは世界中の美味しい料理を食べつくし再現する、食べニケーションならおまかせの “kei” さん（なんと2か月前にご出産されたばかりのお母さん！）。

　ヒチカケでは、そんなお二人が再現する “世界中の美味しい家庭料理” と “世界各国のビール” を味わうことができます。ビールは常時70種以上あるということで、通にはたまりません。

　「ビールはちょっと苦手で……」という方には、飲みやすいものをおたけさんがチョイスしてくれるのでご安心を。日本ではなかなか飲むことができないようなグレープフルーツのビールや、ココナッツの風味を感じるビールなんかもあるのだそう。生樽は常時変わり、時にはレアな生ビールも！

多国籍なフードメニューは、なんと日替わり！

　定番メニューもありますが、メインのフードはほぼ日替わりだというのもヒチカケならでは。

　日替わりの人気フードは “シェパーズパイ”。BBQ風味のひき肉に、チーズやマッシュポテトを重ねて焼いたイギリス版肉じゃがです。

　現地のスパイスを買い付けて作っている、モロッコ料理の “タジン”。ヒチカケでは、その国でしか手に入らない調味料が使われた料理もたくさんあります。スパイスがなくなると二度と味わうことができない、なんて幻のメニューもあるのだとか！

　アイルランドのデリで食べた美味しさに衝撃を受け、keiさんが再現した “ナッツローフ”。半分が豆で作られているので、ミートローフよりもヘルシーな上に食感も楽しめるという一品です。

　こちらは大人気メニュー、“バインミー”。バケットのサンドイッチなのに挟まれた具材はパクチーたっぷりのアジアンテイスト、というベトナム料理。絶妙なバランスがとれた絶品なのだとか。

　「これっていう料理にしぼり切れなかったんです……いろんな国の美味しいものがたくさんあるし、旬の野菜も活かしたいので。それにこのほうが常連さんも飽きなくて面白いかなと思って。」

　ハロウィンにはかぼちゃ、寒くなってきたら煮込み料理、などなど。季節やイベントごとに変わる、“世界の家庭料理” をぜひ楽しんでもらいたいということです。

世界一周の目的は、“食”

　お二人が世界一周に出たのは、飲食店オープンのため。世界中の美味しい食べ物を求める “食の旅” でした。帰国後に自分たちで再現できるよう、実際に舌で味わい、メモを取り、レシピを学んだのだといいます。

　時には宿の厨房をのぞかせてもらったり、現地で仲良くなった方のお宅にお邪魔したりして家庭料理を伝授してもらうこともあったのだそう。
　「言葉は違うけど、コミュニケーションは料理についてだけならなんとかなります！ 執念ですね、食べ物への(笑)。」と、keiさん。

　ペルーに滞在していたときのこと。スペイン語しか話せない現地のお母さんに料理を習う機会がありました。しかし、Keiさんはスペイン語が全く話せません。はじめはたどたどしい単語を使っていたものの、最終的には日本語とスペイン語を織り交ぜて会話をしながらレシピを学んだのだとか。数字や文法はちんぷんかんぷん。でも食材と料理の名前だけはきっちり覚えられるというので、驚きです。

　「嫁の食に対する執着はすごいです。現地でレストランに入っても、食材の名前だけは彼女の方がわかるからメニューだけは教えてもらいました。」と、苦笑いのおたけさん。

　「外で食べて美味しかったものは好きな時に好きなだけまた食べたい。」という理由から、使われているスパイスや食材を覚え、レシピを考えて再現するのだといいます。keiさんの食への探求心と深い情熱を感じました。

人見知りさんも、おひとりさまも大歓迎！

　ヒチカケでは世界中の暦のイベントも開催されています。お邪魔したのは11月1日、メキシコのお盆 “死者の日ナイト”。日本のお盆のような雰囲気ではなく、“お墓をデコレーションして派手なガイコツメイクで街を練り歩き、お酒を飲み、騒ぐ、ハッピーな日” なのだそう。

　この日はアルバイトの女の子たちの本気メイクを披露していただきました。さすがスタッフの方もみんなノリが良い！ こんな風にさまざまな国にちなんだイベントを行っているそうですよ。

　意外にもお客さはおひとりさまや女性の方が多いとのこと。

　「ビアバーっていうと男性のイメージですが、うちは女性がすごく多いです。しかもみんなよく飲む！」
　それも大体が “旅好き・お酒好き・楽しがり” だそうで……ご新規さんが一人で飲んでいてもすぐに話しかけられるから一人飲みにならないのだとか。

　「海外でよく見かける “その場の出会いを楽しむ” パブに近いですね。お客さん同士がお店で出会って、飲みに行ったり旅行する仲になったり。秋葉原の店舗のときには、カウンターで隣に座ったのがきっかけで付き合いだしたお客さんもいました」

　なんとそのカップルはその後ご結婚が決まり、今度ヒチカケでもパーティが開催されるのだそう！

　出会い以外にも、「世界中どんな国のことでも、聞けば誰かしらが教えてくれる。」なんて特典も。店主のお二人以外にも世界を旅しているお客さんが多いので、現地の美味しいお店や旅情報が集まっているのだとか。「どこどこの国に行こうと思っているんだけど……」なんて相談にも気軽にのってくれますよ。

世界で一番美味しかった料理は？

　「スイーツの一番は、ヨルダンの “カナーフェ”！ 世界の中でもここのが一番美味しかったです。これを食べるためだけにまたヨルダンに行きたいぐらい！」

　カナーフェは中東系の国ではメジャーなスイーツ。チーズや細切りパスタ、ピスタチオなどに甘いローズシロップがかかったアツアツのお菓子です。

　世界一周した料理人が認める世界一のスイーツなんて……ぜひとも食べてみたい！ 「お店のメニューに載るご予定は？」と聞いてみましたが、材料の仕入れや仕込みの関係で「メニューにするのは難しい。」のだそう……残念！

　「“世界で一番美味しかった料理” と聞かれると、いつも悩ましいです。決められないですね。世界には美味しいものがいっぱいあるんですよ！」
　お二人とも、声を大にして答えてくれました。

　世界各国の料理とビールが味わえるお店『Hitch×kakeru*』。旅好きでビール好き、そして楽しいことが好きな方はぜひ一度訪れてみてください。

■文、写真・yoshikokuroiwa