【北海道・小樽】東洋随一の所蔵量! 小樽芸術村 『ステンドグラス美術館』

 明治から昭和初期にかけての小樽は、ニシン漁や北の貿易の要として栄え、かつて「北のウォール街」と呼ばれるほど北海道の経済の中心でした。そしてそんな小樽の発展により、ガラスランプや漁業用のガラス浮き玉の製造など、“ガラス工芸の街” としても発展してきました。

 今回は、ガラス工芸品の街・小樽にふさわしく、人々の目を惹きつけるステンドグラスを展示している『ステンドグラス美術館』へお伺いしました。

ステンドグラスの歴史

 ステンドグラスの起源は諸説あり、具体的な年代はいつか定かではありませんが、5世紀のフランスの文献に記述があることから、最低でも1500年以上の歴史があると言われています。

 ステンドグラスは、キリスト教の発展とともに栄えた芸術。それは、文字が読めない人々にも神の教えの物語をわかりやすく伝えるためのツールとして使われ、教会の拡大とともにステンドグラスが多く作られるようになりました。

 時代が進むにつれて、ステンドグラスは “宗教芸術” の枠から飛び出し、風刺画、有力者の権力を表す道具、そして装飾品や家具などに発展していきます。

美術品に隠された謎

 『ステンドグラス美術館』に所蔵されている作品は、19〜20世紀のイギリスの教会の窓を飾った作品が中心です。その頃のステンドグラスには、当時の歴史的な背景を垣間見ることができます。


▲神とイギリスの栄光

 こちらの作品は、1919年頃の作品です。つまり、第一次世界大戦の頃。敵国(この画では赤い竜)をねじ伏せる強いイギリスが聖人として描かれ、当時、同盟国として戦ってきたフランスの象徴として、右の窓に “聖ニコラウス” と “聖女ジャンヌ・ダルク” が描かれています。

 これだけでも、当時の様子が伝わってきて興味深く見ることができますね。

教会に寄進されたステンドグラス

 19世紀イギリスでは、ヴィクトリア女王のもと大英帝国が最盛期を迎え、多くの教会が建設されました。それに伴い、裕福な信者たちが競って高価なステンドグラスを寄進するようになります。もはや聖書の物語を知らしめる役割よりは、個人の財力や地位、亡くなった人への記念碑のような役割に変貌していくのです。


▲聖オスワルドに守護される兵士

▲チャード1世に守護される兵士

 こちらは、自分の息子が戦地で弾に当たることなく、無事に帰ってきてほしいという一心で、大金を払い我が子を聖人の傍に描かせたものです。一緒に出征する他家の子の親達もいくらかの資金を出したと思われますが、その金額や家柄が低い場合は、後ろのほうに顔半分で描かれていたりします。

ステンドグラスが廃材に?!

 一般的に連作ステンドグラスは珍しい作品です。それは、16世紀の宗教革命と17世紀のピューリタン革命、そして20世紀後半に人々が教会離れしたことで教会が取り壊されたことにより、多くのステンドグラスが廃材として処分されてしまったため。

 しかし、教会を取り壊す際に、縁起のいい内容のもの、装飾品として使い易いものだけは、美術商が買い取り、一部のステンドグラスが残りました。連作作品の場合、購入者が好きな部分だけを購入するケースが多く、全てが揃った状態で残ることはとても珍しいのです。

火事の多い小樽ならでは建物つくり

 『ステンドグラス美術館』はもともと、大正12年に大豆を保管する “高橋倉庫” として建設されました。

 建物構造は、木造建築外壁に小樽軟石を積み上げた “木骨石造” と呼ばれる造りです。小樽らしい木骨石造は、明治37(1904)年の稲穂町の大火をきっかけに、防火性が高いという理由で市街地を中心に木造からの転換が進みました。

 また、他にも、
 ・夏は涼しく冬は暖かいという特性から物資を保管する倉庫にも適していた
 ・外壁材となる軟石が小樽の奥沢や天狗山、近郊の札幌でも採れた
 ・木造の技術を利用して工期の短縮が図られ経費も軽減できた

 などが、商業都市として急速に発展していた小樽に木骨石造が定着した理由と言われてます。確かに、冬場のこの時期に訪れても館内は暖かく快適でした。

お土産物品

 展示を見終わった後は、1階にあるミュージアムショップへ。ここではステンドグラス関連の商品や小樽在住のアーティストの作品などを購入することができます。

 最近、注目を集めている小樽の女性ガラス工芸家・木村幸愛さんの作品も購入できました。

 館内の展示品に関連した、図録やクリアファイルなど様々な商品が購入できます。特に面白いと思ったのは、卓上のステンドグラス。

 こちらは後ろにライトが仕込んであり、スイッチを入れると、あの荘厳なステンドグラスの美しさを再現できます。お部屋に飾れば、ちょっとしたアクセントとして活躍してくれるのでは?

 最後にお土産としてオススメしたいのは、小樽のガラス工芸を発展をさせた漁業用ガラス浮き玉を模したLEDランプ。人気が高く観光客によく購入されるそうです。普通の照明器具よりもやさしい光が出ていて癒されます。

 このように、『ステンドグラス美術館』は小樽と世界的な歴史を同時に体験できる場所。見て、触れて、お土産物を買って、小樽の良き思い出の1ページに加えてみてはいかがでしょうか。

■文、写真・ミトモナオ

店舗名 小樽芸術村 ステンドグラス美術館
住所 北海道小樽市色内1丁目2-16 小樽芸術村内
電話番号 TEL:0134-31-1033 / FAX:0134-31-1035
アクセス JR小樽駅から徒歩10分。車では、札樽自動車道小樽ICで降り、余市方面行きの臨港線へ。色内1丁目の交差点そば。
営業時間 [5~10月] 9:30〜17:00 [11~4月] 10:00~16:00 ※入場は閉館30分前まで
定休日 [5~10月] 無休 [11~4月] 毎週水曜(祝日の場合はその翌日)
ホームページ http://www.nitorihd.co.jp/otaru-art-base/
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