【東京・早稲田】伝統と革新を胸に…和菓子屋『七里香』のマーケティング戦略とは

　2017年4月27日、東京・新宿区、東京メトロ東西線早稲田駅徒歩4分ほどのところに『七里香(nanarica)』がオープンしました。こちらはこだわりの和菓子が食べられるお店…と思いきや、その裏には徹底した経営戦略が隠されていました。今回はオーナーの成田さんにお話を伺いながら、和菓子業界についても詳しくなっていきましょう。

美味しい和菓子を作りたい

　オーナーの成田さんは、6年間和菓子製造販売に携わった経験をお持ちで、その後、コンサルティング事業に転向。現在は株式会社クーヤン代表取締役を勤めています。
　そんな成田さんと親交の厚い店主の中川さんは、和菓子職人として、上生菓子をJAL国際線フランス便のファーストクラスに提供するほどの腕前です。この2人がタッグを組んでオープンしたのが『七里香』です。そこには、本当に美味しい和菓子を作って、お客さまに届けたいという熱い想いがありました。

和菓子屋が減ってきている！？

　皆さんは、和菓子と洋菓子の需要、どちらが多いと思いますか？2015年度の売り上げデータでは、和菓子の小売金額は4,750億円、洋菓子が4,167億円（全国e-お菓子ねっとデータ抜粋）−−−ということで、和菓子が洋菓子より大きなシェアを持っています。しかし、後継者不足から新しい和菓子屋は誕生していない現状もあり、既存の店舗も、単品商品が強いお店ばかり。そのため、コンビニやスーパーで和菓子の取り扱いが増加する一方、町のお店からは、和菓子屋が姿を消しつつあります。
　この現状に危機感を覚えた成田さんは、和菓子屋をオープンしようと決心しました。『七里香』では“和の菓子”をとことん追求して、手間はかかるものの、本来の手作りで美味しい和菓子を提供しています。

おしゃれな店名の由来とは

　店名の由来は、ジンチョウゲの別称である『七里香』から取られています。ジンチョウゲは、甘い香りが遠くまで広がる花。そこで、この店を有名にしたいという思いと、和菓子の甘みが口の中でふわっと広がることを掛けて店名にしたそうです。

和菓子が生み出す温かい空間

　お店は30坪あり、入り口を抜けると和菓子屋とは思えない、スタイリッシュで広々とした空間が広がっています。白の壁に木を基調とした店内には、都会の喧騒さを忘れさせる温かさが宿っています。そのなかに、美しく佇む和菓子はまるで宝石のよう。

　また、お客さまはガラス越しに和菓子が出来上がる過程を見て、楽しむことができます。お客さまが集中して職人の技を見て楽しむことができるよう、立っているときは職人の手元しか見えない造りになっているのだとか。職人はお客さまに見られているという意識が芽生えて仕事にも精が出るそうです。

 “和の宝石”を頬張ろう！

　“伝統と革新”をコンセプトに掲げる『七里香』では、昔ながらの製法はそのままに、現代のエッセンスを加えることにこだわっています。

▲豆大福¥180・どらやき¥180

　成田さんがオススメするのは、この2品。豆大福は、富良野産の赤えんどう豆、山形産こゆきもち、北海道産こしあんを使用。もちはまるで雪を思わせる美しさで、もっちりとした食感がたまりません。どらやきは粒餡と十勝小豆、共に手作りのものを使用。3種類の小麦をブレンドしているため、さくっとふっくらな生地に仕上がっています。どちらも定番の和菓子ですが、だからこそ職人の腕が光る一品となっています。

▲金魚(日向夏のフルーツ羹)¥350

　こちらは季節限定の商品です。オレンジ、さくらんぼ、ブルーベリーを、金魚をかたどった寒天で包んだ一品。見た目も涼しげで、これからの季節にぴったりですね。

　ほかにも、米粉100%のシフォンケーキ、羊羹、最中など、手作りの出来立てを提供しています。また、商品は全てテイクアウトが可能。当初の予想に反し、ギフトではなく自分用に買っていく男性のお客さまが多いそうです。和菓子好きの皆さまは、どれを買うか迷ってしまいますね。

常に楽しさと美味しさを

　「お店は完成したので、これからは新しい商品を開発していきながら、お客さまに認知されていくことを目指します。将来の店舗展開は、この店とは違うことを、例えばカフェスタイルを考えています。」と成田さん。
　まごころのこもった和菓子を頬張れば、笑顔がこぼれる『七里香』。昔ながらの懐かしい味と、現代の新しい味を堪能しに行ってみてはいかがでしょうか。真の和菓子との出会いが待っています。