【長野・茅野市】東日本大震災を乗り越えた『信州大黒屋』素材の味とパワーを最大限に活かすお菓子作り

　福島県須賀川市から長野県茅野市へ2011年7月8日に移転した『信州大黒屋』。1960年創業の同店では、先代であり創業者でもある父親の和菓子への想いを受け継ぎながら、独自のフレッシュフルーツ洋菓子を生み出す2代目・伊丹由貴夫さんのこだわりが詰まったお菓子をいただけます。

　菓子販売店舗とカフェを併設しており、手土産やプレゼントにお菓子を買うこともできるし、カフェでゆったりとお菓子を味わうこともできます。
先代の逝去や震災などを経て現在の『信州大黒屋』ができるまでの軌跡と、伊丹さんの想いについてうかがいました。

東日本大震災を経て

　福島県須賀川市の地で1960年に『大黒屋』として創業した同店。伊丹さんが2代目社長となったのは1998年に、先代である父親が亡くなったことがきっかけでした。
　地元の方々に愛されるお店として創業50周年を迎え、店舗もカフェ併設に改装した矢先、東日本大震災が起こります。ご存知の通り、福島県は津波や原発事故などで大きな被害を受けました。伊丹さんもそんな被災者の一人。震災により店舗の運営もできなくなり、着の身着のまま、縁もゆかりもない長野県へと非難してきたそうです。
　そこで知ったのが、長野県の豊かな自然と温かい人柄。山に囲まれた自然豊かな地で育まれた食材と、こだわりを持って大切に食材を育てている農家さんに触れ、長野県へ移転することを決意したのだとか。

　「生まれ育ち、地元の方に愛されてお店をやらせていただいていた福島県を離れることは、非常に重い決断でした。しかし、安心・安全の食材、安定した店舗運営を考えたとき、そう決断せざるを得なかったんです。」と伊丹さんは当時を振り返ります。

明るい店舗とシックなカフェ

　そうして長野県茅野市への移転出店した同店。信州の地での出店ということで、店名も『信州大黒屋』と改めました。

　店作りの際にこだわったのは、カフェを併設することと、販売店舗とカフェのテイストを変えること。店舗は白とオレンジを基調とした明るい店内になっており、お菓子を選ぶのがワクワクするような内装になっています。対して、カフェはブラウンをメインにしたシックな空間で、落ち着いてお茶を飲みながらお菓子をいただける空間。テイストを変えることで、お客さまが飽きずに楽しめるようになっています。

“良い食材”を最大限に活かす

　『信州大黒屋』のお菓子作りは、素材選びから始まります。
　「“良い食材”にはパワーがあるんです。食材そのものが持つ栄養や生産者の想いなど、とても大きな力を持っている。その力を活かすお菓子作りを心掛けています。」

　卵は長野県松本市のもの、牛乳は長野県大町の松田乳業のもの、小豆は北海道十勝産のものを使用。また、いちご、メロン、桃などのフレッシュフルーツは、それぞれの生産者から完熟した状態の新鮮なものを仕入れています。

　「量販店で売られているフルーツは、まだ青い状態で出荷されて配送の段階で熟成させていきます。しかし、当店で扱っているフルーツは、農家で完熟した状態のものを発送してもらい、新鮮な状態のまま入荷します。完熟してすぐのものを仕入れることで、味もパワーも違うんですよ。」

和菓子も洋菓子も

▲ほん和香

　伊丹さんおすすめの商品は“ほん和香”というオリジナル菓子。5時間かけて低温で焼いた小麦粉と、日本伝統の和三盆糖と奄美・徳之島の黒糖、そしてヒマラヤのクリスタル岩塩を合わせています。口に入れるとほろりと崩れてとろけます。
　
　あんこをふんだんに使った和菓子も人気。四季に合わせて桜餅や草餅、あんみつや栗大福などバリエーション豊かな和菓子をいただけます。もちろん、フレッシュフルーツを使ったケーキも人気です。定番のイチゴを使ったスイーツから、季節ごとのスイカ、洋梨、シャインマスカットなどさまざまなフルーツを使ったケーキまで、幅広く展開しています。

「幸せな気持ちになれるお菓子を作る」

　最後に、伊丹さんに、メッセージをいただきました。
「今後も、良い商品を作り続けるだけです。毎日毎日お菓子を育てて、よりおいしいものをお届けできるように大切に作っていきます。食べて幸せな気持ちになってもらえることが最高の喜びなので、そんなお菓子作りを続けていきたい。
新鮮なフルーツの香り、よく考えられたお菓子の食感など、食べていただかないとその良さは分からないと思いますので、ぜひ召し上がっていただきたいです。遠方の方でも、インターネット販売をしているのでぜひ！」

　さまざまな困難を乗り越え、多くの想いを詰め込んだお菓子を作り続ける『信州大黒屋』。食べたら幸せが生まれるお菓子をぜひ味わってくださいね。