【飲食店開業】優良な店舗物件を見つけるためのコツ
飲食店の開業時に、最初に行うのが店舗の物件探しです。
開業の準備を進めているのに、理想の物件になかなか出会えず、予想以上に時間がかかってしまったという話もよく耳にします。中には、物件を探し始めて1年以上かかったということも珍しくないそうです。
飲食店の経営のおいて、賃料や立地を含めた店舗物件の選択は、売り上げに直結する大切な要素ですので、しっかりと見極めたいですよね。
そこで本記事では、優良な店舗物件を見つけるためのコツから、店舗探しのステップについて詳しく解説してまいります。
店舗物件の重要性
飲食店経営において、一番重要なのが「売り上げ」です。
店舗の売り上げを左右させる要因は、味、価格、接客、内装、立地条件など様々な理由が挙げられますが、その中で、一度決めて開業させると、そう簡単に変更できないのが「立地」です。
銀行からの融資が受けられず簡単に変更できない
時々、銀行から融資を受けて開業して間もなく、立地や物件が良くなかったので、店舗物件を変えたいと、銀行からさらに融資を受けられないかという経営者もいるそうですが、そのような場合は実績や業績を積んでいないため、追加の融資を受けられる可能性は低くなります。
他にも、妥協して店舗物件を決めてしまい、何とかなると開業したものの、売り上げも伸びずに、不満が募り続けるまま、営業を続けることになるケースもあります。
出店時に多額の投資や借り入れをしてしまったため、業績が振るわなくても、なかなか閉業や退店の決心がつかずに、赤字のまま営業を続けてしまうのです。
飲食店は立地が7割とも
極端な一例ですが、立地の重要性を表す言葉に、「立地7割」というものがあります。これは、どんなに努力しても、立地が悪ければ売り上げはあまり上がらないという事を示しています。
もちろん、物件や立地条件をカバーする工夫も大切ですし、逆に生かしていく集客対策も必要です。あまり他人が選ばない物件を、敢えて選んで戦略を練る経営者もいるでしょう。
店舗物件は、一度決めたら後戻りができない状況であることを認識し、開業時には慎重に決める必要があるでしょう。
多くの飲食店開業者はの8割は店舗物件探しに苦労
飲食店を開業する際、理想の物件が見つからずに苦労する店舗経営者というのが非常に多いのが現状です。
その理由は、
・なかなか良い物件が見つからず出店できない
・候補の物件は見つけたが、本当にここに決めてよいのか迷い、契約に踏み切れない
・物件の検討や契約時に、気づかぬうちに不必要な損をしてしまった
などが挙げられます。
思い描くお店の場所、賃料の条件を満たす店舗物件というのは、なかなか見つかりません。
では、次でどのように店舗探しを進めていったらよいのか、確認していきましょう。
飲食店開業時に優良店舗物件を見つけるコツ
まず、はじめに抑えておきたいのが、店舗物件=飲食店の店舗物件とは限らないということです。店舗には飲食店の他にも、美容室やエステ、雑貨屋など色んな店舗があります。
飲食可と書いてあっても、カフェなど軽飲食のみの場合もありますので、まずは自分が開業したい飲食店ができる店舗物件かのチェックを事前に行うことを忘れないでください。
それでは、優良店舗物件を見つけるコツをピックアップしていきます。
条件を明確に洗い出す
店舗探しをイメージする際、「店舗物件がお店のコンセプトに合っているか」と「その店舗物件でちゃんと儲けが出るのか」の二つはしっかりと見極めなければいけません。
そして、そのためには、どんな条件が当てはまるのかを明確に洗い出しましょう。
コンセプトの優先度で選ぶ
空き物件の「数」だけでいえば、駅の近くなどの中心部の方が多いのが実情ですが、物件自体が多いという事だけでなく、入れ替わりも多いということになりますので、慎重に選ぶ必要があります。
また、中心部には、路面店だけでなくビル店舗(空中店舗)も含まれます。むしろこちらの方が多いでしょう。
空中店舗でも人通りの多い中心部を選ぶか、路面店にこだわって許容範囲を広げるかなど、賃料を含め、店舗のコンセプトによって優先すべき項目を洗い出してみましょう。
ゆったりした時間を提供するために、人通りの少ない場所に決めたり、営業時間帯を差別化して敢えて競合店が多いところを選んだりなど、案外、店舗のコンセプトが物件選びのヒントになっていたりするものです。
根気よく探す
自分で探す際も不動産屋さんに仲介を依頼する際も、即決で見つかる場合はほとんど無いといっても過言ではありません。
店舗物件の空きは、いま入居している人が出ていくか、店舗が新しくできるかのどちらかしかないため、時間がかかることを想定し、根気よく探しそうという気持ちが大切です。
妥協点を打つ
飲食店を開業したい多くの人に人気のある条件が、「人通りが多く、道路に面している家賃の安い1階の居抜き物件」です。
しかし、そのような物件に出会えるのは稀でしょう。まず、大抵、人通りと家賃の設定額は比例しますので、集客しやすい優良物件は、賃料を高く設定しても入居者が後を絶えません。
人通りが多く、家賃の安い物件を探し続けても、出会えずに時間がかかるばかりですし、たとえ出会えても、契約更新時に家賃が大幅に値上がりするという想定もしておいたほうが良いでしょう。
理想の物件探しをし続けていると、いつまで経っても決められず、お店を出すことができませんので、妥協するポイントを抑えておくことが大切です。
未公開物件にアプローチする
「未公開物件」とは、ネットにも公開されておらず、不動産業者間の共有されていない物件のことをいいます。もちろん、出回ってない優良物件を他の人より先に掴めたらいいですよね。
優良物件を見つけにくい主な理由の中には、「ネットに公開されない」「現テナントの”閉店”情報はネガティブイメージにつながるので、公開範囲が限られる」「優良テナント情報は業者間での情報共有がされにくい」などが挙げられます。
優良物件の場合、不動産業者やネットには公開せず、実際に借りてくれる人にしか情報を出さないというところも多いようです。なぜなら、その方が手数料を多く取れるからです。
そこで有効な手段は、「実際に足を運んで歩く」ことです。
意外と「テナント募集」の広告が貼ってある場合があります。近隣が繁盛店で集まっている地域などでは、店舗の移転や多店舗展開の店が希望しやすいため、現地広告のみで空き物件の告知をするケースが多いのです。
ターゲットとする地域がある場合は、自分の足で歩いてみることをおすすめします。
情報のアンテナを張る
現在営業している店舗が数か月後に退去するなどの情報は、事前に告知されるものでもありませんので、なかなか入ってきませんよね。
この手の情報を事前に知れるのは、店舗と取引のある業者や常連客くらいでしょうか。店舗経営者は、親交のある不動産業者に物件の管理を任せていることが多いですから、不動産業者への問い合わせでは、「今、空いている物件」だけでなく、「今後空く予定のある物件」を尋ねるのも良いかもしれません。
ただし、期間的な余裕を持った事前の行動が大切です。
潜在物件をチェックする
これは、レアなケースではありますが、現在は賃貸物件ではないけれど、貸してもらえるようにアプローチするという方法です。
例えば、繁盛していないような個人店舗や、高齢でお店を営んでいるが後継者がいなさそうな場合など、交渉の余地がありそうな物件も存在します。そのような場合「今後、お店をどうしていこうか」と先方も悩んでいるケースがあります。
自らアプローチすることが難しい場合は、頼れる不動産業者を介して交渉することをおすすめします。
飲食店の店舗探しの3ステップ
それでは、飲食店の店舗探しについての3ステップを解説いたします。
このステップの順序と内容は非常に大切で、何かが抜けてしまうと、自店にとって優良な店舗物件が見つかる確率を大幅に下げることになりますので、順番を守って計画的に物件探しを進めていきましょう。
①事業計画から逆算して条件を洗い出す
まずは、「事業計画書」を作成します。
飲食店をしっかりと運営していくためには、現実的な事業計画を立てる必要があります。
事業計画書とは、どのようなお店を開業するのか、売り上げはどのくらいを想定し、どう運営していくのか、どのように資金を調達し、どのように返済をするのかなどを記載するものです。これは、どのような物件を探すのかが明確にもなりますし、開業時に融資を受ける際や、物件を借りる際の説明資料・説得材料にもなります。
目標とする売り上げ規模や利益が得るために、どのような物件が良いかという条件の整理は、事業計画書を基に考えていきます。
次に、初期投資や総予算から逆算して検討していきます。
飲食店で必要な開業資金の目安は以下の通りです。
①物件取得費
・賃料の9~12ヶ月分:通常の住居用の物件と違い賃料の10カ月分程度が相場といわれています。
・居抜きの場合は造作代金50~300万円:前の店舗の内装や設備をそのまま受け継ぐ居抜き物件の場合は、前の借主にその譲渡代金を支払うことになります。
②内装工事・設備
・スケルトン:50~80万円/坪
・居抜き活用:5~50万円/坪
上記は、坪単価の目安なので、例えば20坪30席のお店を開業しようとすると、1,000万円~1,600万円かかるということになります。
内訳には、改装工事、厨房機器、看板、内外装、備品(食器、調理器具、ユニフォーム等)があります。
居抜物件の場合は厨房機器や内外装はそのまま使えることもあり、投資を抑えることも可能です。
③開業諸経費
・初期仕入:想定売上の30~40%
・その他経費:50~200万円
販促のための宣伝費や、人材確保のための求人費なども開業諸経費に含まれます。
④運転資金
・月間固定費の6か月分
特に開業初期は売り上げが予想より低くなることもありますので注意が必要です。2ヶ月目~6ヶ月目はほぼ赤字のなる店舗が多いそうで、運転資金の目安は、物件取得費と同じく家賃の10倍程度が必要だと言われています。
店が軌道に乗るまでは、家賃や光熱費、従業員の給料、経費などの固定費を毎月滞りなく支払うために、事前に準備しておく必要があります。
上記に加え、居抜き物件の場合は、前テナントから造作を買い取る「造作譲渡料」と、物件の紹介元である業者に払う「造作譲渡の手数料」が発生する場合がありますので、確認が必要です。
②相場を確認してから物件を探し、検討する
物件の内覧を申し込んだり検討する前に、まずは経済条件など相場の把握を行います。
【家賃など経済条件の相場を知る】
出店エリアをいくつか選定し、家賃相場をチェックしましょう。それから、店舗物件サイトをチェックして、希望エリアの物件をピックアップします。
物件ごとに広さが違うため、比べる際は1坪あたりの価格(坪賃料単価)をチェックします。
坪単価で示すことで、異なる広さのテナントでもグレードや価格を比較しやすくなります。
それを基に、実際に調査した結果と、事業計画とのすり合わせをし、掲げた物件条件に見合っているか、かけ離れていないかをチェックします。
【物件の相場感を養う】
家賃など経済条件の相場を認識しても、「もしかしたら、もっと安くて良い場所の物件があるはず!」と思うのが人間です。
この、理想と現実のギャップを埋めて納得した上で開業させることが重要です。
その方法は、「現地で物件を見る」ことです。
インターネットや不動産屋で確認するだけでなく、実際の物件を見ると事前に調べた数字や相場を実感できます。
自分の足で物件を見ながら、坪賃料単価を比較し、現物を認識することで、「なんとなく良い物件」「もっと良い物件」を漠然と探すのではなく、事業計画書におとした、探すべき条件や項目がはっきりしてきます。
エリア、相場、坪数、家賃、取得費、物件状態(居抜きかスケルトンか)が明確になっていれば、妥協できるポイントも明確になってくるのです。
これは、店舗経営を成功させるために絶対に妥協できないポイントと、工夫次第でカバーできる妥協ポイントを改めて確認することにもつながります。
多くの物件を見ることは、相場観を養うことにつながりますし、なによりも自分の希望物件に対する考えを整理することができます。
【物件検討には内装会社の協力が必須】
物件の内覧では、現地でしか得られない情報を確認し、出店までの予算立てを行います。
具体的には、「どの程度の改装が必要か」「購入すべき機器・機材」のチェックです。
改装費用については内装会社に見積もりを出してもらう必要があるので、出来れば内覧に同行してもらい、費用の概算だけでも早めにもらっておくと良いでしょう。
特に、居抜き物件の場合、床や天井、壁に隠れている電気配線や水道やガス管など、図面が無かったり、工事してみないとわからないことが出てくる可能性があるため、予算オーバーや工期が延びることがないよう、事前にチェックが必要です。
この段階で、事業を成立させることが見込みが持てる物件であれば、そのまま契約しましょう。減額など条件変更しないと商売が成り立たない場合は、希望の入居条件を提示して交渉や、貸主の判断をあおぎます。
③スピーディーに決断・契約する
納得する物件が見つかったら、スピーディーに動くことが大事です。ある物件サイトでは、扱う物件の半数は、募集開始から2ヶ月以内に契約が完了するそうです。だからこそ、物件探しでは常に新着物件にアンテナを張り、心に決めた物件が出てきたら、内覧と申し込みはスピーディーに進めなければいけません。
良い物件ほどライバルにすぐに取られてしまいます。あなたが気になる店舗物件は、ライバルも気になる物件なのです。
また、特に、初めて飲食店開業をする人に貸すことは、家主や不動産業者からすれば「リスクが高い契約になりやすい」と言えます。判断が遅いと、他の検討者で進めたくなってしまい、結果、大きな魚を逃すことにつながってしまいます。
まとめ
飲食店を開業させる上で、店舗の物件探しは、今後の事業展開の流れを左右する重要な案件です。
良い物件に巡り合うことができれば、その後の内装工事、開業、集客対策という流れを掴むことができますが、物件探しの段階でつまづくと、開業がスムーズに進まないどころか、開業できても、後悔をすることになりかねません。
自店にとっての優良な店舗物件を手に入れて、理想のお店づくりを実現していきましょう!