閉店手続き

【飲食店閉業】コロナ閉業の現状と手続き方法について解説

開店ポータル編集部
2021/09/28
新型コロナウイルスの影響で、外出自粛や緊急事態制限の時短要請により、多くの飲食店が打撃を受けています。

中には経営を続けるのが困難になり、閉業を考えるオーナーも少なくありません。しかし実際に店舗を閉業するとなると、さまざまな手続きが必要となります。
 
今回は、飲食店閉業の際に必要な手続き方法を解説していきます。

コロナ禍で飲食店の閉業が増加中

新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年以降、全国的に外出自粛が求められています。2021年の5月には三度目となる緊急事態宣言が発令され、時短営業や酒類提供停止が求められる飲食店は、厳しい状況が続いています。

先の見えない状況が続く中で、閉業を決断する飲食店も増えています。閉業を決断する理由はさまざまですが、主に以下のようなケースが見受けられます。

・赤字経営からの倒産、閉業
・オーナーの加齢・健康状態の悪化による閉業
・近い将来再出発することを見越し、ダメージが少ないうちに一旦閉業
・仕入れ先の経営状況が悪化し、必要な食材を確保できなくなり閉業
 
今まで大人数の会食が売上の主力だった居酒屋などは、特にコロナの影響を受けやすいとされています。テイクアウトやデリバリーの需要は高まっていますが、それらに対応しきれていない店舗は、非常に厳しい状態にあります。そのため現在では、閉業を決断する飲食店も少なくありません。 

飲食店を閉業する方法

飲食店を閉業する際に、方法は大きく分けて3つのパターンが挙げられます。それぞれ特徴が異なるので、一つずつ見ていきましょう。

店舗を売却する


飲食店の店舗売却は、一般的に居抜きで行われるケースが多いです。キッチンや空調など設備をそのまま転用できるので、売り手だけでなく買い手にもメリットがあるからです。物件が賃貸だった場合は、売却交渉の前に貸主の許可を得ておきましょう。無許可で交渉を進めると、居抜きで売却できなくなり、原状回復した上で売却しなければならない可能性があります。

第三者に業務委託する


オーナーが経営から退き、第三者に店舗を委託するという方法もあります。
基本的な売上やリスクは委託した相手に帰属しますが、一定割合の報酬を受け取る契約にすることも可能です。
一方で収益やリスクを自身に帰属する契約にする場合には、経営者である時と状況はあまり変わらなくなる可能性もあります。

M&A・事業譲渡する

店舗自体をM&A・事業譲渡するという方法もあります。買い手に不動産契約や店舗経営権を譲渡することになりますが、店舗自体は引き続き経営してもらうことが可能です。この場合、お店自体は存続するので、従業員や取引先に迷惑をかけずに済むというメリットがあります。
 
M&Aで飲食店の経営権を譲渡する場合、買い手側は店舗の人材やノウハウをすべて継承できます。人材確保やノウハウ習得にかかる時間・手間を短縮できるので、買い手側にとっても大きなメリットがあります。

また店舗がテナントで賃貸している物件の場合、契約満了までの賃料、違約金、退去時の原状復帰費用などを負担しなければなりません。しかしM&Aで売却する場合、買い手が納得してこれらを引き継げば、撤退コストが発生しません。これらの理由から、たとえ売却額が低額だったとしても、売り手側にとっては複数のメリットがあると言えるでしょう。 

飲食店の閉業手続き方法

飲食店を閉業する際には、いくつかの手続きを済ませなければいけません。必要な手続きを怠ると、後から通達が届きトラブルに発展しかねないので、気をつけましょう。
手続き方法は法人の場合と個人の場合で異なるので、まずは法人から解説していきます。

法人の場合の手続き方法

飲食店を法人名義で経営している場合、閉業の流れは以下の通りになります。
 

1.スケジュールを決め、営業を終了する

まずは飲食店の閉業スケジュールを策定します。全体の流れが決まりましたら、閉業手続きに入る前に店舗の営業を終了しましょう。
 

2.解散決議と清算人の選任

次に株主総会や取締役会で、解散決議と清算人の選任を行いましょう。「決算人」とは、解散後の精算行為を担当する役割です。多くの場合は経営者が務めることになります。精算内容は債権回収・債務整理や、不動産の解約・名義変更などが含まれます。
 
解散後は清算行為以外の営業が行えなくなるので、忘れずに担当者を決定しておいてください。決議と選任が終わった後、法務局へ解散登記・清算人選任登記をします。あわせて税務署など行政機関への手続きも行いましょう。
 

3.通知・官報公告

次に債権者に対して、解散の通知・官報公告を行います。すべての債権者に異議申し立ての機会を与えることが目的とされているので、2ヶ月以上の公告期間を設けるよう定められています。公告を行った後、通常の事業年度開始日から解散日までの決算承認と確定申告を行います。解散日は株主総会で解散決議された日となるので、間違えないようにしましょう。
 

4.財産・債務の整理

次に債権の回収や、債務の整理を行うことになります。これらの整理をすべて完了させないと閉業することはできません。すべての精算が完了したら、残った財産は株主に分配することになります。経営者が100%の株式を所有している場合には、すべての財産が手元に残ります。
 

5.清算確定申告

財産分配が確定してから一ヶ月以内に、清算確定申告を行いましょう。ただし期間内に最終分配が行われる場合には、その前日までに申告を済ませておかなければならないので、注意しましょう。
 

6.清算結了の登記

最後に法務局にて清算結了の登記を行い、税務署などに清算結了届を提出しましょう。ここまで済ませれば、法人の閉業手続きが完了となります。

個人の場合の手続き方法

飲食店を個人事業主として閉業する際の手続きは以下の通りです。法人の解散登記とは異なり、順序はあまり意識しなくても大丈夫です。
 

1.財産・債務の整理

まず財産の整理を行い、閉業後に残る現金を計算しておきましょう。もし借入金が返済しきれない場合には、金融機関などに相談して返済計画を立てるようにしましょう。
 

2.リースの清算

店舗の設備がリース契約の場合、解除や精算を行う必要があります。また営業終了日に合わせてリース品の返却も行ってください。
 

3.賃貸契約の解約

店舗が賃貸だった場合、物件所有者と管理不動産会社に対して、賃貸借契約の解約通知を行う必要があります。契約内容によって通知期限が異なるので、事前に契約書を確認しておいてください。
 

4.閉業通知

従業員を雇用している場合、解雇の30日以上前に従業員へ通知を行う必要があります。通知が遅れてしまうと不当解雇として訴えられるリスクもあるので、通知を忘れないようにしましょう。
 

5.行政機関への届け出

飲食店は開業の際にあらゆる行政機関からの認可が必要ですが、閉業に際しても届け出が必要になります。税務署、保健所、消防署、警察署などに必要な届け出を提出しましょう。
 

6.取引先へ連絡する

店舗の閉業後は継続した取引が不可能になるので、取引先にも連絡しておかなければいけません。閉業の予定日や取引の有効期限など、余裕を持って伝えておきましょう。
 

7.原状回復工事

居抜き物件として売却しない場合には、原状回復工事が必要になります。原状回復工事とは、入居前の状態に戻る工事です。床・壁紙の貼り替え、クリーニング、各種塗装などの工事を済ませ、借りる前の状態に復元しましょう。

閉業届の提出先は?

閉業の際にはいくつかの届け出を、指定の提出先に出さなければいけません。
主に保健所、警察署、消防署、税務署に届け出を出す必要があるので、必要な書類や手続きを見ていきましょう。

保健所


飲食店を閉業する際、保健所には「廃業届」の提出が必要です。一般的には、提出期限は営業終了から10日以内に提出する必要があります。ただし地域によっては機嫌が前後するケースもあるので、事前に所轄の保健所ホームぺージなどで確認しておきましょう。

また「飲食店営業許可書」の返納も行う必要があります。「飲食店営業許可書」は開業時に受け取っているものですが、もし見つからない場合には、紛失届を提出することで対処可能です。許可書の原本を紛失している場合、早めに所轄の保健所に問い合わせましょう。

警察署


飲食店を閉業する際、警察署には「廃止届出書」を提出します。「廃止届出書」は所轄の警察署ホームページでダウンロードできるので、廃止事由を記載して提出しましょう。

「風俗営業許可」を取得している場合、返納が必須となります。廃業・返納の理由を記載した返納理由書を同封した上で返済してください。また「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を提出している場合には、「廃止届書」を提供する必要があります。届け出の期限に関しては、どの場合も営業終了日から10日以内となっています。

消防署


飲食店を閉業する際、消防署には「防火管理者解任届」の提出が必要です。また防火管理者に選任されている場合には、「防火管理者選任届出書」の「解任」に、閉業日を解任日として記入して提出してください。
届け出に明確な期日は設けられていませんが、営業終了日が解任日とされるので、遅滞することなく提出しましょう。

税務署


飲食店を閉業する際税務署には以下の届け出を提出する必要があります。

・事業廃止届
・給与支払事業所等の開設・移転・廃止届出書
・所得税の青色申告の取りやめ届出書
・事業廃止届出書

もし複数の都道府県にまたがって経営していた場合には、それぞれの自治体において手続きが必要となるでしょう。事前の各自治体の税務署ホームページを確認しておいてください。

まとめ


コロナ禍において飲食店の閉業は増加しています。閉業の理由はさまざまですが、どの場合でも閉業手続きは欠かせません。法人・個人で閉業手続きの手順が異なりますが、どの場合も税務署・警察署・保健所・消防署などに届け出の提出を忘れないようにしましょう。

そして閉業後にどうするのか、展望を固めておくことも大切です。閉業後に後悔することがないように、一つずつ確実に処理していきましょう。
開店ポータル編集部
2021/09/28