経営支援

飲食店が店舗撤廃でデリバリー・テイクアウトに業態を絞るメリットは

開店ポータル編集部
2021/01/12
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新型コロナウイルスの感染拡大が猛威を振るう中、政府は1月8日、首都圏1都3県に2度目の緊急事態宣言を発令しました。飲食店では、今後の経営が見通せない中、何とか経営を存続させようと、思い切ってデリバリーやテイクアウトなど中食化へ業務体制をシフトする店舗も増えています。

外出自粛や時短営業の長期化も見据え、大きな業態転換を決断しなけばいけない時であるのが現状です。

 

そこで本記事では、飲食店の店舗撤廃が相次ぐ中で、デリバリーやテイクアウトに業態を絞るメリットについて詳しく解説してまいります。

 

緊急事態宣言で販売チャネルがオンライン化


コロナ禍の外出自粛の影響でリモートワークやオンライン飲み会などおうち時間が増える中、デリバリーやテイクアウトサービスに加盟する飲食店が急増しました。他にもネット販売や通販などECサイトを立ち上げる飲食店も増えています。今後、飲食店が生き残っていくためには、外出自粛や時間短縮、非接触サービスなどに対応できる販売チャネルのオンライン化を強化して売り上げを伸ばしていくことが必要となってくるでしょう。
 

飲食店の販売チャネルの中でオンライン化が進むサービスは、

・デリバリー、テイクアウトの導入

・ネット販売等のECサイトの構築

・実店舗を持たないゴーストレストラン

・出張シェフサービス

・オンライン料理教室の開催

などが挙げられます。また、居酒屋やカフェを中心に、店舗内の座席をオンライン飲み会やリモートワーク用に貸し出すサービスも広がっており、ある意味では販売チャネルのオンライン化という見方もできるでしょう。

飲食店はデリバリー・テイクアウトに絞る選択肢も

2020年にコロナの流行が加速し、飲食店への客足が減る中、売り上げを確保するため、新たにデリバリー・テイクアウトを始めた店舗は多く、現在では全く行っていない飲食店を探すのが難しいくらいに浸透しています。しかし、実際に運用してみると、来店されるお客様に接客しながら、同時にデリバリーやテイクアウトの注文が電話やネット経由で入り、それぞれに対応した調理法を使い分け、配達用の容器にも気を配り、配達員への対応もしなければいけないなど、非効率さを実感した飲食店も多いでしょう。また逆に、それぞれのサービスが中途半端になって、もどかしさを感じた飲食店経営者もいるかもしれません。

コロナ禍中、今まで何とかあの手この手で経営してきた飲食店の中には、今回2度目にあたる緊急事態宣言が発令に伴い、業務形態をデリバリーやテイクアウトに絞るという選択をする飲食店もあるようです。コロナの長期化が予想され先行きが見えない中で、このように思い切った業務転換に踏み切るのも、飲食店の生き残りをかけた一つの選択肢であるといえるでしょう。


飲食店が業態を絞るメリット


飲食業界は時代とともに大きく変化し続けています。飲食店が「業種」を絞った例を見ると、喫茶店やカフェという括りであっても現在は、パンケーキ専門、パフェ専門、タピオカ専門、ラテ専門など、一つのメニューに特化した専門店化が進み、定着しています。このように専門店が増えるのも、顧客のニーズに応えた経営戦略を行いながら経営的にもメリットがあるから成り立っているのです。

ここでは、飲食店がデリバリーやテイクアウトに「業態」を絞った場合のメリットを解説いたします。業態とは「どんな客層に、どのように売るか」という売り方のことを指します。

・食材ロスが少なくなる

顧客が来店型の業態は、いつどのくらいのお客様が入って、どんなメニューをどれだけ消費するのかという数字を予測するしかありません。その点、デリバリーやテイクアウトに特化すると、提供数を飲食店側で決めることができるので食材ロスを少なくすることが可能です。

・オペレーション効率がよくなる

業態を絞ると、仕入れや仕込みなどの準備時間も効率化できます。また、注文経路や注文内容もシンプル化され、オーダーミスも減り、本来の業務に集中することができるでしょう。これらの効率化によって、場合によっては人件費(人材採用)の削減も見込めるかもしれません。

・口コミが増える

デリバリーやテイクアウトに業態を絞ると、お客様から見て、どんなお店なのかがわかりやすくなります。お客様の中には、「あのお店はデリバリーを行っているのだろうか?」と検索するのが億劫になる方も多いですが、業態を絞ると一目瞭然で認知されやすく、業態が定着すると口コミも増えていきます。デリバリーやテイクアウトサービスを利用する顧客はネットを活用しますので、SNS上での口コミも拡散されていくでしょう。

・メニューのクオリティーがより高くなる

飲食店ではそれぞれこだわりを持って、お客様にメニューを提供していますので、どんな業態であってもクォリティは高いというのが前提ですが、業態を絞ることで、よりクォリティを高めることが可能となります。例えば、同じメニューでも、店内用とテイクアウトでは、食べる時間も考慮した調理方法や容器の選定などが必要となってきます。通常は、店内用のメニューをテイクアウトとして提供しているお店が大半でしょう。しかし、テイクアウトの専門メニューとなると、メニュー全体の調理法や付け合わせも変わってきます。このように、専門だからこそ、よりメニューのクオリティを高められるという面も業態を絞るメリットになるといえるでしょう。

・天候に左右されない売り上げが見込める

飲食店への客足や売り上げは、どうしても天気が悪い日や時間帯に影響されがちです。しかし、デリバリーであれば極端に波が出るということもないでしょう。

・メディアに受け入れられやすい

他店とは異なる特徴的なテーマやキーワードを持ったお店は、メディアの露出も増える傾向にあります。特に現代ではネット記事で「〇〇のお店10選!」などのテーマに沿った店舗紹介も増えており、コンセプトが明確な飲食店は、紹介するライターやディレクターの目に留まりやすく、採用度もアップします。

・ターゲットの嗜好変化がキャッチできる

メニュー開発においては、顧客の嗜好を把握しなければいけません。業態を絞ると、より客層やメニューを絞り込んだ戦略を強化することができます。自店舗の強みを集中させた経営を行うことも可能となります。

 

飲食店が業態を絞るデメリット


続いて、飲食店が業態を絞るデメリットを見ていきましょう。

・商品単価が低くなることも

テイクアウトやデリバリーのメニューは、どうしてもスーパーやコンビニのお弁当等と比較されやすいため、商品単価や客単価が低い傾向があります。一般的には「薄利多売」と言われることもあります。しかし、今の社会ではその流れが大きく変化しています。お客様は安いからテイクアウト商品を購入するという意識ではなく、外食を控えながら、値は張っても美味しいものが食べたいという意識に変わりつつあります。実際に、ミシュランの常連店でも中食産業に参入が進んでいますので、「少々高くても食べたい」と思われるような魅力あるメニュー開発が大切になってくるでしょう。

・味が落ちてしまう可能性がある

メニューによっては持ち帰りや配達している間に冷めてしまい、味が落ちてしまう可能性があります。そうなると店舗の評判に関わってくることになり兼ねません。店内メニューとの差別化や、品質を維持する工夫がより必要となるでしょう。

・メニューに向き不向きが出てくる

デリバリーやテイクアウトの場合、調理してからすぐに食べることができませんので、できる限り味が劣化しないメニューが望ましいとされています。食中毒の観点からも、市場には火の良く通ったものが多く出回っています。しかし、中食の普及にともない、美味しい食べ方や盛り付け方などをシェフがレクチャーするデリバリーサービスが誕生するなど、新しい形も続々登場しています。今後は、従来の中食に対する常識が変わっていくことが予想されます。

・商品の魅力を伝える必要がある

店内で飲食する場合は、お客様は店舗の雰囲気や香りなど全体からメニューを想像することができますが、デリバリーやテイクアウト商品は魅力を伝える力に欠けてしまうことは避けられません。これからは、デリバリーやテイクアウトに特化して事業展開していく飲食店も増えていきますので、商品の魅力を伝える写真や説明文は手を抜かず妥協せずにSNS等を含めてPRしていく必要があるでしょう。


飲食店の業態転換に活用できる補助金

新型コロナウイルス感染症の影響で、売り上げが落ち込む飲食店への施策として現在まで、

・感染防止対策の徹底に活用できる「持続化補助金」

・時短要請により従業員を休ませている店舗に最適な「雇用調整助成金」

・月々の家賃負担を軽減してくれる「家賃支援給付金」

・テイクアウト・デリバリーの強化にも活用できる「IT導入補助金」

など、飲食店が活用できる補助金や助成金制度が交付されてきました。

 

その中で2020年12月の臨時閣議では、「追加経済対策」の一つとして「中小企業事業再構築促進補助金」の募集を2021年から行うことが決定されました。今月1月の通常国会で予算案が承認された後に詳細が公表される見通しとなっています。この補助金には、飲食店の業態転換の支援も含まれていますので、次項で詳しくご紹介します。

・中小企業等事業再構築促進事業

「中小企業等事業再構築促進事業」は、コロナ禍における中小企業などの事業再構築や業態転換を支援する制度です。転換にかかる費用の3分の2を補助し、1社当たり100万~1億円を給付する補助金です。補助金の対象となる飲食店としては、新型コロナウイルスの影響で売上が回復しない店舗が実店舗を撤廃しオンライン専用の注文サービスを新たに開始したり、ECサイトへの一本化、宅配や持ち帰りの需要に対応するなど業態転換をする飲食店が対象となります。

飲食店における事業再構築補助金を活用できるのは具体的に次のようなケースが想定されます。

 

①ECサイトの構築

飲食店が店舗での営業を停止し、ECサイトでのオンライン販売のみに業態転換する場合。対象経費としては、ECサイトの構築費用や、店舗縮小に伴う建物改修の費用、広告費用やITシステム導入費用などです。

 

②サブスクリプションサービスの提供

顧客が一定料金を支払うことで、受けられるサービスがお得になるサブスクリプションサービスの提供を始める場合。一部のメニューがテイクアウトし放題、お得なオンライン商品(メニュー)が定期的に届く、余剰食品を提供する食品ロスを減らすためのサブスク提供などが当てはまります。

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③ゴーストレストランへ業態変換

店舗を持たず、いわゆる間借り形態でテイクアウトやデリバリー、オンライン販売のみを行うゴーストレストランへ業務転換する場合。新規サービスにかかる機器導入費や広告宣伝のための費用などが補助対象となる見込みです。

 

④AIを活用

飲食店が観光客をはじめ三密回避のため、来客データの収集と分析を行い、来店予測、混雑予報に対応できるAIを開発して、新しい生活様式に対応する飲食店の構築をする場合。

 

⑤セントラルキッチン事業への参入

大量多品種の調理を1カ所で行う施設「セントラルキッチン」の事業展開によって宅配サービス(デリバリーサービス)を強化させる場合。

現在は、緊急事態宣言の再発令に伴ってさらに飲食店の時短営業や営業の縮小化が要請する流れになっていますので、この機会に補助金の活用を視野に、飲食店の経営を大きく業態転換をするのも、長期化が予想されるコロナ禍で飲食店が生き残っていく戦略の1つと言えるでしょう。


 

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まとめ

今回は、飲食店が店舗撤廃でデリバリーやテイクアウトに業態を絞るメリットを解説いたしました。

コロナ禍で、飲食店を巡る状況は大きく変化しており、飲食店経営者にとっては業態の方向転換も視野に入れた経営方針の見直しを図らなければいけない時に直面しています。飲食店がデリバリーやテイクアウト等の中食業界への参入を検討する際は、しっかりと実態と動向を把握し、事業の基盤をしっかり築く必要があります。コロナの長期化によって、今後も助成金や補助金、支援情報が今後も増えることが予想されますので、飲食店経営者の方々は、国や自治体の情報収集を都度チェックし、必要に応じていつでも申請できるように準備することをおすすめします。

 

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