飲食店経営におけるFLコストとFLコスト比率とは?
飲食店に限らず経営をするにあたって、売り上げとコストの計算と徹底的な管理をしておくことは重要なことです。特に飲食店は目まぐるしく情勢が変化する業種でもあり、開業3年で70%程度が廃業するといったデータがあることから、『飲食店は3年続けば良いほう』というのは多くの方が耳にしたことがあるのではないでしょうか。その上、10年続くのは1割程度であるとも言われています。
おいしい料理を出していれば必ずしも繁盛したり、必ずしも長く続けられるわけではなく、経営者としてしっかりとしたコスト意識とコスト管理を行っていかなければお店を長く続けることはできません。
そこで本記事では飲食店の経営において重要な指標である『FLコスト』と『FLコスト比率』について解説し、飲食店をコストダウンして黒字経営を続ける方法について解説してまいります。
FLコスト、FLコスト比率とは
飲食店におけるFLコストとは、F=フード(材料費)、L=労働(人件費)の合計金額のことで、FLコスト比率とは、飲食店の売上高に占めるFLコストの割合のことを指します。
売り上げから会社経営に必要な経費を引いたものが飲食店の営業利益ですが、その経費の多くを占めるのがこのFLコストです。もちろん、どれだけ飲食物の売り上げが高くても、FLコストが膨大であれば、赤字になる可能性もあり、採算が取れずに廃業となってしまう可能性もあるため、飲食店経営ではこのFLコストやFLコストいh率の最適化を図っていかなければなりません。
FLコスト比率の計算式と適切な目標設定値
では、FLコスト比率はどのように計算するのかというところですが、基本的にFLコスト比率は
(F(材料費)+L(人件費))÷売り上げ×100で計算されます。
例えば、材料費が単月200万円、人件費が単月150万円、売り上げが単月500万円の店舗の場合は、FLコスト比率が70%であるということです。基本的にFLコスト比率が70%を越えている場合飲食店としては間違いなく利益が出ない状態で赤字に転落してしまう可能性が高くなります。
そのため、FLコスト比率の目標としては、個人経営の飲食店であっても60%に設定しておくと良いと言われています。この場合の比率は、一般的にF,L共に30%ずつの合計60%で、人件費150万円、材料費150万円です。単月500万円の売り上げであれば家賃や光熱費などを加味しても大体営業利益が7~8%程度でる計算になります。
ここの考え方として、自宅や日常生活で、決まった給料の中でいかにして貯金をするかと考えた時に毎月かかってくる通信料や食費の見直しをするのと同じことであるとお考えいただければ分かりやすいのではないでしょうか。携帯電話は最近では格安SIMに乗り換える方も増えておりますが、大手で利用していた時には1万円かかっていた携帯料金が3000円に下がることで7000円多く貯金ができます。
この場合と同様に、飲食店の経営においても固定費やコストを抑えることでより多くの売り上げを得ることができるということです。
・FLRコスト比率のRって何?
近年では上記で解説したFとLのコストに加えて、R=賃料もコスト比率の計算に加味されるようになってきました。F(食材)、L(労働)、R(賃料)の3つを合わせて計算する場合は、FLRコスト比率70%を目標とすると良いといわれています。
というのも最近では、駅前に出店したり、都市に出店したりする場合は、田舎や郊外に出店するよりも賃料がコストの大半を占める割合が高くなってきたからです。賃料の高いところに出店をしても、FLR比率70%を保っておくことで、十分な営業利益を確保することができるようになります。
ただ、本項で挙げたFL比率、FLR比率の目標値はあくまでも飲食店の一般的な比率です。飲食店それぞれの状況や、立地、従業員の熟練度によっても左右されます。次項では、業態別のFLコスト比率についてを解説していくこととしましょう。
FLコスト比率は業態によって変動が
先ほども申し上げたように、FLコスト比率は業態によって大きく変動がありますので上記に解説した目標比率と同じように行かない業種もあります。
ここからは、業種ごとのFLコスト比率の基準値について解説していきます。
・業態ごとのFLコスト比率の基準値
業態ごとにFLコスト比率に変動がある理由としては、一流の料亭であれば高級食材を提供したり、腕のある料理人を雇わなければなりませんし、手厚い接客も求められます。逆にテイクアウト専門店であれば、アルバイトスタッフが多かったりと人件費を削減でき、その分を食材費に充てることができる可能性が高くなるなど、それぞれの業種のサービス内容によって費やすべきコストが変わってくるからです。
業態ごとの一般的なFLコスト比率は下記のような具合になっています。
業態 | F(フード) | L(人件費) |
焼き肉 | 40% | 20% |
ラーメン | 30~35% | 25~30% |
居酒屋 | 28~35% | 25~32% |
ファストフード | 40% | 20% |
レストラン | 31~35% | 27~29% |
カフェ | 24~35% | 25~36% |
飲食店それぞれの業態と特性に合わせて、60%未満のFLコスト比率を目指せば、大体の売上高は確保することができるでしょう。
飲食店が知っておきたいとコストダウンと黒字化のためのポイント
基本的に飲食店が黒字化するには、売り上げを伸ばす事か、コストを下げることしか方法はありません。言い換えればこの二つを実現することで、黒字化ができ、何年も続けて営業ができる飲食店となれるわけです。
上記に解説した、月間売り上げ500万円の例で解説するならば、FLコスト比率70%を60%に下げるには、現状のF40%L30%を、それぞれ5%ずつ下げる必要があります。飲食店としては料理の質や接客の質を落としたくないのが本音でしょうが、食材費や人件費を5%も下げるにはどうしたら良いのでしょうか。
・食材費を下げる
食材費を下げるには、
①食材の仕入れ原価を下げる
②食材破棄率を下げる
③オーバーポーションをなくす
などの対策が挙げられます。仕入れの原価を下げてしまうと料理の味に影響があるかもしれないと懸念される場合は、とにかく食材の破棄率を下げたり、オーバーポーションをなくしたりして徹底的な管理をすることが重要です。
オーバーポーションは、通常の盛り方よりも多く盛り付けることによって1品の原価が高くなってしまうことで、居酒屋や喫茶店などの個人店では常連さんが多い為、これが起こりやすくなってしまいます。
・人件費を下げる
また、人件費を下げるには
①業務効率を上げる
②デジタルシステムを導入する
などの対策があります。
デジタルシステムとは飲食店でいうと机上のタブレットで注文できるシステムの導入などが主にあげられるもので、注文を聞きに行くなどの接客時間を削減することができるため、業務効率化を図ることができます。QR決済端末などのキャッシュレスシステムの導入もレジ前の業務効率につながるため、粛々と小さな業務効率を積み上げていくことで5%の人件費削減につなげることができるようになるでしょう。
・光熱費など固定コストの見直し
食費や人件費以外にも、飲食店では賃料や光熱費などがかかってきます。電気会社を安くで利用できる電気会社に変更したり、水道に節水コマを設置したりすることなども固定費削減につながります。
食費や人件費だけでなく賃料や光熱費なども合わせて計算しておくことでより徹底した管理ができ、売り上げアップや集客力アップに注力することができるでしょう。安定したコスト管理をしていれば、接客や店内管理も余裕ができ、リピート率が上がる可能性もあるかもしれません。
まとめ
飲食店経営では、今回ご紹介したFLコスト以外にもその他のコストが30%以上もかかってくると言われています。それは、家賃はもちろん、光熱費や減価償却費、消耗品、販促費、雑費などで、売り上げ100%に対して90%以上のコストがかかってくると考えると、利益はわずか数パーセントしか残りません。
その他のコストが30%以上かかってくることを考えると、FLコスト比率は60%以下を死守しておくことが黒字経営を続けていくコツであるといえるでしょう。賃料を安くすることは引っ越し代などの費用も考えたりすると現実的ではない面もありますので、FLコスト以外のコストを削減するのならば、光熱費や雑費なども少しずつ減らしていくと安定したコストコントロールができるようになります。
そして、安定したコストコントロールができるようになると、接客などにも余裕が出てきて、結果的に多くのお客に愛される飲食店となることもあるかもしれません。
いずれにせよ、飲食店が黒字化するには、コストを削減するか売り上げを上げるかしかありませんので、まずは、FLコスト比率を60%以下に抑えられるよう意識して管理してみてください。