会社のルールブック「就業規則」作成から届け出までの注意点・ポイントとは?
就業規則の作成方法
就業規則の作成を進めるにあたって、いくつかの方法があります。
1.専門家に相談
初めて作成する場合、分からないことだらけで不安もあると思います。その際には、専門家に依頼するのもひとつの手段です。そうすることで、法律に沿って、抜けのない就業規則を作成することができるでしょう。依頼をする専門家は、人事労務に関する知識が豊富な“社会保険労務士”や、労働問題に強い“弁護士”などが適切です。これまでの実績や、報酬額などをリサーチして、依頼先を決めることをおすすめします。
2.テンプレートを活用
自社で作成する際にも、就業規則のテンプレートを活用してみてはいかがでしょうか。労働基準監督署に置いてある雛形や、厚生労働省がホームページに記載している“モデル就業規則”をはじめ、インターネット上でダウンロードが可能な、無料の雛形やテンプレートが多く存在しています。
これらを活用する際に気を付けたいのは、雛形やテンプレートというものは、多くの会社に適応する一般的な内容で構成されています。また国が作成しているものは、基本的には従業員の権利を守るため、従業員に有利なルールが記載されている場合も。そのため、自分の会社に適しているかどうかの見極めが必要になるので、注意してください。
厚生労働省「モデル就業規則」:http://www.mhlw.go.jp/stf/
3.自社で全て作成する
一から社内で作成する場合の手順を追っていきましょう。
■作成手順①事前準備
会社の状況や環境などをしっかり把握することから始めます。社内の労務管理についての資料や、従業員の勤務実態について調べていきましょう。現状、社内でルール化されているものを全て洗い出し、それらを就業規則として明文化していくことになります。
■作成手順②情報分析
揃った情報を分析し、現在抱えている問題と、今後改善していきたい問題、今後トラブルになりそうな事柄を確認していきます。また、きちんと規則として定める必要があるものとそうではないものの整理もしていきましょう。
■作成手順③項目ごとに整理
内容の整理ができたら、テンプレートや見本を参考にしながら、内容に沿って項目を当てはめていきます。これが、就業規則の“章”になります。
■作成手順④条文作成・確認
振り分けた項目(章)ごとに、条文を作成していきます。分かりやすい内容になっているか、会社の価値観と相違がないかなどの確認を行ってください。法律に違反している内容がないかもチェックしましょう。
作成が終えた時点で、最終チェックを専門家にお願いすることも選択肢のひとつです。作成自体を依頼するよりはコストも抑えられて、内容に不備がないかの確認もできるのでメリットは大きいです。
作成時の注意点
就業規則は、多くの人が目にするものです。誰が見ても理解できる内容で、実態に即しているものでなければなりません。
■各事業場に合わせて作成する
就業規則は、雇用形態や環境に合わせて作ることが望ましいとされています。雛形やテンプレートがあるため、形式にとらわれがちですが、特に形式が定められているわけではありません。事業場の数だけ就業規則が存在すると言えるでしょう。自身の事業場の実態に沿った就業規則を作成しましょう。
■分かりやすくハッキリ書く
内容は誰が見ても理解できるように、具体的に記しておきましょう。抽象的なものや複雑な内容だと、せっかくの就業規則も意味を成しません。結果、トラブルに繋がりやすくなってしまうので注意したいところです。
■法律や契約違反がないように注意する
就業規則は、法令や事業場に適用される労働協約に違反する部分があった場合、その内容は無効となります。
※労働協約:労働条件その他について、労働組合と使用者との間に結ばれる書面の協定。(労働組合法14条の要件を満たしたもの)
作成後の手続き
厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/
■意見徴収
作成した就業規則は、労働基準法で労働者代表の意見書を作成しなければならないと定められています。代表者がいない場合には選出しなければなりません。また、会社役員や管理監督者からの選出は認められていないので注意してください。
■労働基準監督署へ届け出
就業規則を新たに届け出る際に必要なものは、作成した就業規則、就業規則届、意見書になります。就業規則届、意見書ともに定められた形式はありません。各都道府県の労働局のホームページからフォーマットをダウンロードできる場合があるので参考にすると良いでしょう。
期限についての決まりは特にありませんが、“滞りなく届け出なければならない”とされているので、常識の範囲内で完了させましょう。届け出後は受付印が押された控えをもらえるので、大切に保管します。また、内容を変更した場合にも同様の手続きが必要です。
■従業員に周知する
作成後に一番重要なことは、従業員に対して周知することです。これは労働基準法106条で義務付けられています。周知する際は、必要な時に閲覧できる状態にすることが条件です。これらを怠った場合には内容が効力を持ちませんので注意が必要です。
周知の方法は、事業場の見やすい場所に掲示、一部ずつ従業員に配布する、データ化してメールに添付するなどがあります。労働基準監督署への届け出前であっても、従業員の周知が完了した時点から就業規則は有効となります。
働きやすい環境づくりの第一歩
多くの手順を踏んで作り上げなくてはならない就業規則ですが、その分しっかり作成することで、会社と従業員にとって働きやすい環境を整えることができます。また、現状の洗い出しを行うことは、経営をするうえでも非常に重要なことです。
注意点を頭に入れて、就業規則の作成から届け出までを完了させ、会社と従業員がより安心して働ける環境づくりを目指しましょう。