閉店手続き

飲食店廃業前に知っておきたいM&Aという選択肢

開店ポータル編集部
2020/10/26

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大打撃を受けた飲食店は計り知れず、2020年10月現在の飲食店の倒産・廃業件数も前業界の中で最多の46件と約50%を占めている状況です。

 

事業を少しでも継続させることができるよう、国からも持続化給付金や家賃支援給付金などの支援がされているものの、それでも廃業をせざるを得なくなってしまった飲食店も多くあります。

しかし、そうした中、廃業ではなく新しいオーナーに飲食店を売り渡す『M&A』という方法で、新しい形で事業を継続させる方法が話題になっています。廃業をしようとしていた飲食店も実はM&Aを行うことで、廃業をせずに済むこともあるかもしれません。

 

本記事では飲食店が廃業を検討する際に合わせて検討しておきたい『M&A』について解説してまいります。

 

M&Aとは?

そもそも、M&Aとはなんなのか?というところ疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、M&Aとは簡単にいうと会社や事業の売買を行うことです。

M&Aを直訳すると『合併』と『買収』となり、企業再編や事業承継等で利用されます。

 

合併とか買収などと言われると仰々しく、『大企業同士でしか行われないのでは』と感じられる方もいらっしゃるでしょう。やはりひと昔前までは日本も大企業同士のM&Aが基本だったのですが、近年では飲食店などの小規模事業者同士のM&Aや、個人を相手にしたM&Aの事例も増えてきています。

 

実際、2019年に日本で行われたM&Aは4088件で、過去最多を記録しました。市場が拡大し、多くの事業者にM&Aへの理解が浸透するとともに、飲食店などの小規模事業者の実施例も増加していくことが予想できるでしょう。

飲食店がM&Aを行う方法

M&Aと一口に言っても、飲食店を売る際に利用できるM&Aの方法はいくつかの方法があります。

 

基本的には法人格を持っていない飲食店の場合は『事業譲渡』という方法で買い手に事業を売り渡し、対価として現金を得るというのが一般的です。

法人の飲食店の場合は、買い手が株式の一定数を取得することで経営権をわたす方法もあります。これを俗に『株式公開買い付け(TOB)』といいますが、これは最近でいうと、大戸屋とコロワイドのM&Aがこれにあたりますね。

 

今回ここについて解説してしまうと長くなってしまうので割愛し、基本的に小規模飲食店であることを想定して解説していきます。

 

・飲食店がM&A時に利用する『事業譲渡』という方法

事業譲渡とは飲食事業の一部又はすべてに価格付けをして飲食店を売却する方法です。先ほども申し上げた通り、売買の対価として現金が買い手より支払われます。

 

事業譲渡では、譲渡する資産や負債を自由に選択できることから、売り手にとっても買い手にとっても柔軟にスキームを検討することができる取引方法です。しかしそれゆえに事業を成立させている資産の特定と価値算定、取引契約や許認可の移行など、手続を包括して行うわけではないので、煩雑になりがちであるというデメリットもあります。

 

しかし、基本的に小規模なM&Aの場合は、この事業譲渡で、一つ一つ契約を見直しながら丁寧に交渉を進めていくのが一般的です。

 

・飲食店の事業譲渡はM&Aの専門家にサポートを依頼する

 

M&Aはいわば大きなお金の関わる取引契約になりますので、M&A取引の契約完了までにいくつかの契約書を交わしたり、法に触れないよう配慮する部分が出てきたりと、通常の人が持っている知識だけではまかなえない場合があります。

 

そのため、飲食店に限らずですが、M&Aを行う際は専門家にサポートを依頼するのが一般的です。
 

 

飲食店がM&Aを行うメリット

忙しい飲食店にとって、交渉の時間を設けたり、売り上げがぎりぎりの中M&Aの専門家にサポートを依頼したりと、資金的、時間的コストがこれ以上かかることは避けたいというかんがえの方もいらっしゃるでしょう。

 

しかし、廃業を検討されている飲食店であれば、専門家依頼料を含め、M&Aを行う場合よりも安価に済ませることができる可能性がたかいのです。

 

ここからは、廃業を検討していた飲食店がM&Aを行うメリットについて解説していきます。

 

・事業を継続することができる

 

1つは事業を終了させずに継続させることができるという点です。特に飲食店の中には長年お客に愛され続けており、閉店を多くの人に惜しまれるような存在であった場合、閉業を踏みとどまることがあるでしょう。

 

また、経営者自身が別の事業をしたいが、飲食店は閉業させたくないので困っていたという方もいらっしゃるかもしれません。

 

そうした場合に、第三者に経営を引き継ぐことで、これまでの飲食店経営者は事業を継続させつつ、経営をリタイアすることができるようになります。

 

・売却益を得ることができる

 

また、飲食店でよく行われるM&Aの取引方法は『事業譲渡』であると申し上げましたが、事業譲渡の売買の対価は現金であるため、売り手の飲食店経営者は売却益を得ることができます。

 

経営リタイア後、新しい事業を始める資金に利用することもできるかもしませんし、定年ほどの年齢であれば、今後の人生の生活資金にすることもできるでしょう。

 

・廃業コストを削減できる

 

廃業をするとなると、原状回復費用の支払いやリース契約の残りの支払いが残っていしまっている場合があります。

 

そうすると、リース契約などの借入金は今後も継続して払っていかねばなりませんし、その他契約の解除や、原状回復費用などの支払いもしなければなりません。

敷金が返金された分で、原状回復費用などをまかなうことができれば良いですが、その後の生活が無一文になってしまう可能性もあるでしょう。

 

しかし、M&Aで事業を売却することで、原状回復費用はもちろんリース残高などを次の経営者に引き継ぐことができれば、廃業コストを削減することができます。

 

要は、廃業であればマイナスになったかもしれないところを、M&Aであれば売却益が得られるので、プラスになる可能性が高くなるということです。

 

飲食店でM&Aではなく廃業をしたほうが良い場合はある?

とはいえ、M&Aの売り手案件として登録すれば必ずしも買い手がついたり、高くで売れたり、希望通りにいくというわけではありません。

当然ながら買い手がつかない可能性もありますし、もしM&Aを実施できたとしても希望通りの取引にならなかったり、その後結局つぶれてしまったなどということもあります。

 

そうなると時間をかけてM&Aの準備をしたり専門家を雇ったりしても結局は損して追ってしまうこともあるかもしれませんよね。

 

では逆にM&Aよりも廃業をしたほうが良い場合とはどのような場合があるのでしょうか。

 

・多額の借金がある場合

1つは多額の借金がある場合です。多額の借金がある場合ですと、M&Aをしても借金だけ引き継いでもらえなかったり、そもそも買い手が現れない可能性があります。

 

例外として、該当する飲食店に長年蓄積されたノウハウがあり、それを求めている場合などは買い手が現れる可能性もありますが、そうでもない限り難しいとお考えいただくと良いでしょう。

 

・第三者に任せたくないというこだわりがある場合

 

また、第三者には経営を任せたくないという強いこだわりのある経営者もいらっしゃるかもしれません。廃業コストがどのくらい必要で、M&Aの取引をすればどのくらいの相場が見込めるのか等をシミュレーションしたうえで、それでも廃業をしたいという場合は、廃業を行うという方法もあります。

 

まとめ

売り上げが落ちた→もう続けられない→廃業しよう と、廃業しか選択肢のないように廃業をするのはもったいないです。これまで続けてきた事業、誰かに売り渡せば今後は買い手が新しいノウハウで立て直してくれる可能性もありますし、何より売却益を得られれば、現経営者は新しい事業を始めたりすることができるでしょう。

 

私たちの生活を取り巻く環境は一分一秒と著しい速さで姿を変えています。その中で、飲食店も、人も、そしてもちろん経営者も市場に合わせて常に変化をしていかなくてはなりません。マンネリ化してしまって、売り上げが落ちてしまったという場合も、第三者の知識を取り入れることで以外にも良い方向に傾くこともあるかもしれません。

飲食店のM&Aをお考えの方、飲食店の閉業を検討されていた方はぜひ下記のお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
 

開店ポータル編集部
2020/10/26