開業手続き

飲食店開業の手引き タイミングと開業準備で押さえるポイント

開店ポータル編集部
2019/09/10
この記事の目次 [表示する]
 飲食店を開業するにあたっては、様々な手続きや準備が必要になります。 そのため、一般的には開業を決意してから、約1年間かけて準備をすすめるのが妥当だと言われています。

 勢いや思い付きだけでお店を開いても、長続きする繁盛店となれる可能性は低いでしょう。開業を決意したら、まずは開業のタイミングを見定め、準備段階から繊密な計画を立てることが重要になります。

 本記事では、独立開業を目指す方向けに、開業のタイミングと開業準備のポイントについて説明していきます。


開業するにあたって最適なタイミングとは?



 開業を希望する人が、まず最初に悩むのが開業のタイミングではないでしょうか。

 漠然と「いつかは独立したい」と思っているだけでは、いつまでも現状のままです。「何歳までに」「この資格を取ったら」「何年下積みを経験したら」など人によって目標は様々あり、そのタイミングも重要です。

 それらにプラスして、押さえておきたいタイミングの見極めポイントを見ていきましょう。

①開業のタイミングの見極めには「自己資金」が重要

 開業後に苦労することとして、運転資金の問題があります。自己資金が不足していると、運転資金にも影響が出るうえ、金融機関からの融資も受けづらくなります。

 一般的には、開業資金の3分の1は自己資金で補えると良いとされています。勢いや熱意だけで開業しても、長続きしなくては意味がありません。
 経験を積みながら自己資金の貯まるタイミングを見極めて、開業日の設定をしてみましょう。

②飲食店開業に「ベストな月」を狙う!

 実は飲食店を開業するにあたって、時期的に最適なタイミングがあります。それは9月から10月。プレオープン含め、最初の2~3か月はお店を周知させ軌道に乗せる期間、仕事に慣れるのに必要な期間として考えましょう。その期間は新店舗に興味を持ったお客様で最も賑わいます。そんなお試し期間を越えるとお店は落ち着きだし、一部の常連さんだけが通う店にシフトしていくのです。

 そして、そんな閑散期を乗り越えるために利用したいのが、季節イベント。世間はクリスマスや忘新年会のシーズンを迎えます。そのため、12月から1月は飲食店が最も忙しくなります。

 お客様の立場からも予約が取りにくく、宴会やパーティーができる飲食店を探すのに苦労する時期で、お店にとってはまさに書き入れ時。この繁忙期に不慣れな接客でお客様をお迎えするのは避けたいですよね。そこで逆算すると、やはり開店時期は9月~10月に向けて準備を進めるのがベストと言えます。

 タイミングを見極めて開業したとしても、すぐに繁盛するとは限りません。そんな時は、気力や体力も必要です。タイミングを待つばかりに、気力や体力が衰えてしまってからの開業では、営業に支障が出る可能性もあります。精神面や体力面においても不安のない状態での開業を目指しましょう。

開業準備で押さえておくべきポイントとは?

 いざ、開業に向けて準備を始めようと思うと、次から次へとやらなくてはいけないことが出てきます。

 何をいつまでにおこなえばいいのか、そして資金はいくらかかるのかなどきちんとした計画を立ててスケジュール通りに進めることが肝となります。

 一般的に言われている1年間を準備期間とし、いつ何をするべきかのポイントを押さえていきましょう。

開店日を迎えるまでの流れを確認しよう


―――【1年前~】―――


 ■コンセプトを決めて事業計画書を作ろう!
 飲食店を開業するためのはじめの一歩は、店のコンセプトづくりです。トータルイメージから客層、メニューや価格帯など、それぞれについて明確にしていく必要があります。コンセプトに近いお店を訪ねてイメージを膨らませつつ他店との差別化を図り、自店の売りを考えることが重要です。

 そして事業計画書を作成する際に、そのコンセプトが実現可能かどうかを検証しましょう。この時点の事業計画書は、完成形ではありません。準備を進める中で段々と詳細をつめていくことになります。

<Point1:看板メニューを作る>
 
リピーターを獲得する要素として、料理がおいしいことは必須です。自信のある料理メニューの中でも、看板メニューを必ず準備しましょう。看板メニューを目当てに訪れるお客さまは多いものです。

<Point2:コンセプト作りは“5W2H”から>
 
コンセプトを作る際は“5W2H(=なぜ、いつ、なにを、どこで、だれに、どうやって、いくらで)”について、詳細を固めていくと良いでしょう。

 

―――【6か月前~】―――


■物件探しを始めよう!
 ターゲット層や価格帯など、コンセプトに沿った集客が見込めるエリアで物件を探します。不動産屋に足を運ぶだけでなく、居抜き物件などを検索できるサイトなども活用し効率的に進めましょう。

 物件探しには時間も労力も必要です。なかなか理想の物件と巡り合えないこともあるでしょう。ただし、内外装の施工なども考えて3か月前には、不動産契約書を締結しましょう。

<Point:適正家賃を念頭においた物件探し>
 飲食店を経営するうえでの適正家賃は、収益還元法という計算式から求めることができ“想定売り上げ×10%”が適正家賃とされています。
 つまり、“家賃は売り上げの1割以下に抑えるべし”ということです。


■資金調達の計画を立てよう!
 開業時には莫大な資金が必要になります。自己資金や親族から借りるなどして賄うのが理想ですが、それだけでは足りないということがほとんどです。
 その場合は、何らかの形で資金調達をする必要があります。資金調達の際は、物件取得費用、設備資金、運転資金(最低でも3か月分)を考えましょう。

<Point:賢い資金調達を>
 民間の金融機関
からの借り入は、ややハードルが高めと思っておいたほうが良いでしょう。実績が重視されるので、初めての開業の場合は融資をしてくれない可能性があるからです。

 一方、公共の金融機関である日本政策金融公庫は民間の金融機関に比べると通りやすい傾向にあります。ただし審査には時間がかかります。そのタイムラグも頭に入れて計画に組み込む必要があります。また、返済義務が発生しない補助金や助成金の取得も視野に入れて賢く資金調達をしましょう。



―――【3か月前~】―――


■店舗の施工設計をおこない、施工着手!
 物件の契約が済んだら、店舗の内外装の施工をおこないます。最近では、自身でDIYをする方も多く、施工費用の削減も可能です。プロの手を借りる場合は、複数の施工業者から相見積もりを取ることをおすすめします。

 あらかじめ予算を組んで、その範囲内で実現可能なデザインを考えてもらうことが大切です。

<Point①:保健所への事前相談も忘れずに>
 
店舗デザインが決まったら、施工開始前に図面を持参し保健所に相談しに行くことをおすすめします。完成してから「あれはダメ、これもダメ」となっては手遅れです。営業許可がおりる条件をクリアしているかどうか、事前の確認を怠らないようにしましょう。

<Point②:施工時からお客さま獲得のチャンス>
 施工開始する際には、事前に大家さんや隣接の方々へのあいさつはもちろん、施工スケジュールなども共有をしておくとスムーズに作業を進めることができます。近隣の方々への第一印象は重要です。開店後は常連さんとしてのお付き合いが待っているかもしれませんよ。

 

―――【2か月前~】―――


■開店準備にとりかかろう!
 厨房機器やインテリア、販促物などの準備を始めましょう。また、従業員を雇う場合は、この時期から募集をかけると良いでしょう。開店日までに接客などの教育をおこなうことも考えて採用時期などを逆算していきましょう。

<Point:販促活動の重要性>
 
開店日から安定した集客をするためには、販促活動が重要です。ホームページ・SNS・チラシなどを駆使して、応援してくれる方々を事前に捕まえておくことをおすすめします。

 販促活動を開始する数週間前には、開店記念クーポンや広告物などが準備できている状態が理想です。

 

―――【1か月前~】―――


■各種役所への申請を確実におこなう!
 飲食店を開業するには、飲食店営業の許可を受けるために保健所への申請が必要になります。深夜営業をおこなう場合は、警察署へ申請する「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出」が必要となります。

 そのほかにも自店に必要な申請が何かをきちんと調べて、滞りなくおこなえるようにしてください。


 開店日まで1か月を切ったら、最終的な確認や決定をおこなっていきます。営業内容の打ち合わせやメニューの最終決定仕入れ品の発注などをおこないましょう。開店前にスタッフだけでリハーサルをおこなうのも良いでしょう。そして、関係者を招いてのプレオープンを経て、いよいよ開店となります。

仕事は辞めずに経験と資金を蓄えながら準備を進めましょう!


 本記事で挙げた以外にも、開業のために押さえておきたいポイントはたくさんあります。まずは、開業にベストなタイミングを見極めることが大切です。

 ここで重要なのは、現在お勤めのお店や会社を簡単に辞めないこと。資金と経験を蓄えるためには必要なことだからです。開業資金の融資を受ける際も、無職で申請をすると審査に不利になってしまうこともあります。融資を受けて本格的に開店準備に取り掛かるギリギリまで、お店や会社を辞めずに並行して準備を進めましょう。

 大変なのは開店までのステップだけではありません。お店を維持するには、さらなる困難が伴います。そのためにもベストな開業時期を見定めた入念な準備が必要です。

 

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2019/09/10