【飲食店】テナント出店と路面店の違いとメリットデメリットの比較
飲食店の開業時、最初に行うことは店舗の物件探しであり、それと同時に考えるのが出店場所です。全く物件の検討が付いていない状態では、道路に面した路面店が良いか、ビルやショッピングモールに出店するテナント店が良いかと悩む飲食店経営者も多いでしょう。また、開業資金の都合で決め兼ねてしまうケースもあるかもしれません。テナント出店と路面店では、どちらも長短の両面を持ち合わせています。それぞれの飲食店のコンセプトや理想像によって選択した方がよい場所も変わってくるでしょう。
そこで本記事では、テナント出店と路面店の違いとメリット・デメリットを詳しく比較し解説してまいります。開店や移転をお考えの飲食店経営者様は是非参考にしていただけたら幸いです。
テナント出店とは
テナントというのはビル、百貨店、ショッピングセンターといった商業施設に出店する事業者を指します。そのような施設の中の貸店舗にお店を出すことを「テナント出店」と呼びます。一般的に知られているショッピングセンターに出店しているチェーン店をイメージされる方も多いでしょう。他にも駅直結型などの飲食店も多く、天候に左右されずにある程度は安定した集客が見込める立地条件であるといえます。
路面店への出店
「路面店」とは、文字通り街中や道路沿いなど、通りに面した店舗のことを指します。特に都市部の大通りの路面店は、チェーン展開している店舗やブランド力のある有名店が多く見かけます。道路に面しているためお客様は気軽に出入りしやすいのも特徴です。路面店への出店は、人通りがいかに多くても、ターゲット層が通行していなければ、意味がありません。路面店はエリア選び、立地選定が重要となります。また、飲食店における路面店への出店は人気が高いため、賃料が高くなりがちです。中には同じ物件であっても2階や地下1階と比較して賃料が2倍以上するケースもあるようです。
テナント出店と路面店の違いとは
同じ飲食店を営むにあたっても、テナント出店と路面店では様々な面で違いがあります。出店場所だけではない両店舗の違いを確認していきましょう。
経営方針が異なる
飲食店経営者が自ら空き店舗物件を探し、賃貸契約を行った上で店舗運営を行っていく「路面店」の場合は、経営者が自ら営業方針や営業時間を決めることが出来るため、比較的、自由に経営を行うことができます。フランチャイズ店や系列店等でない限りは、報告書などの提出義務も発生せず、経営方針に口を挟まれることはありません。
一方、ショッピングモールのような商業施設に入居する「テナント店」の場合は、営業方針はショッピングモールの規定に従わなけれないけません。営業時間も施設の定めに沿い、照明等の明るさなど、他店舗と足並みを揃えたり、イメージを損なわないため規定が詳細に決定されているケースもあります。また、賃料計算のための売上実績報告やトラブル時の報告書などの提出が求められることが多いため、自由度は低くなることが予想されます。
賃料の算出方法、発生状況が異なる
「路面店」の場合には、斡旋と管理は不動産会社を通して行われ、固定された家賃となる賃料を毎月、不動産会社に支払います。そのため、売り上げから家賃と経費を差し引いた残りはすべて店舗の利益となります。当然、経営者が保有している不動産物件を店舗として営業している場合は、賃料負担を少なく(またはゼロ)設定することができます。
これに対し「テナント店」の場合では、賃料は運営会社によって規定されており、一般的には固定された家賃ではなく、月次売上に設定利率をかけた金額を請求されることが多くなっています。また、たとえ売り上げのない月でも賃料がゼロになるわけではなく、「最低保障売上額」が設定されています。つまり、テナント店では売り上げを出しやすい環境を提供してもらうことに対し、売り上げがアップするとその分、賃料も上がるという仕組みになっています。
プロモーションの方法が異なる
これは、後述する両者のメリット・デメリットで詳しく解説いたしますが、プロモーション方法(宣伝・PR)が異なります。「路面店」におけるプロモーションは、店舗が自主的に行う必要があり、集客対策に関わるマーケティング戦略は全て飲食店経営者が自ら決定し実行していかなければいけません。片や大型商業施設に入居する「テナント店」の場合は、運営会社自体がマーケティングを行っており、各種媒体のメディアへのプロモーションを実施している場合がほとんどです。独自に宣伝をしなくても、ある程度は知名度が保障されているといえるでしょう。
テナント出店のメリット・デメリット
初めに「テナント出店」のメリットとデメリットを確認してみましょう。
メリット
①プロモーションを行ってもらえる(広告費を抑えられる)
テナント店の1番のメリットといえるのが、プロモーション活動を商業施設の運営側が行ってくれる点です。ショッピングモール等の大型商業施設の場合は、テレビ、ラジオ、チラシ広告、インターネットなどのメディアでプロモーションを実施していますので、店舗側で一から集客のための対策や手間をかけるという負担を減らすことができます。また、店舗自体の広告費や販促費などが節約できるというメリットにもつなげられるでしょう。
②知名度が保証される(集客力がある)
これは①のプロモーションを施設側で行ってもらえることに共通しますが、大型商業施設に入居している場合はその施設自体に知名度がありますので、ある程度は知名度が保証された状態で店舗運営をしていくことができます。その代表的な例が、大型商業施設で買い物をした顧客がそのまま飲食店に入店するようなケースです。
③運営本部のサポートが受けられることも
下掲のデメリットの中に含まれる「契約解除の場合がある」という項目とリンクしてきますが、何らかのトラブルが発生した場合には運営側への報告義務が必須となります。一見、面倒だと感じるかもしれませんが、大型商業施設にはカスタマーセンターのような、クレームやトラブル処理をする窓口や専門部署があります。報告をすることによって、的確な解決へと導くサポートを受けることができますので、これはメリットにあたる部分となるでしょう。
④コスト削減ができる
交通アクセスを考慮した駐車スペースの完備や、駐車パーキングとの提携などを自ら行う必要がありません。そのため、維持・管理費用もすべて賃料に含まれるという意味ではコスト削減につながります。
デメリット
①自由度が限られる
テナント店の場合は、営業時間を自らの意志で決めることが基本的にはできません。入店している商業施設の定めに沿った営業時間を設定することとなります。また、内装や外装などの自由度が低く、個性的過ぎるデザイン等のアレンジは制限されます。施設が定めた規制を守りながら、店舗の独自色を打ち出していくことが求められます。
②契約を解除されてしまう可能性がある
商業施設に入居するテナント店として、施設全体の評判やイメージダウンにつながるような、顧客からのクレームやトラブルが発生した場合は、運営本部への正確な報告が必要となります。場合によってはテナント契約を解除されてしまうケースもあるので対処には注意しなければいけません。
③出店のハードルが上がる
大型商業施設への出店となると、ハードルは路面店より高くなります。理由は、実績や業績も評価された上で出店許可を得られる場合が多いため、初めて開業される飲食店は難しいかもしれません。逆に、既存店として評判が高い場合は、運営側から声がかかることもあるようです。
④競合店が近くに位置する可能性がある
テナント出店の場合は、出店する業種がかぶってしまうこともあり、顧客や売り上げが分散されてしまうことを懸念する飲食店経営者もいらっしゃるでしょう。一方で、大型商業施設の場合は、ジャンルに偏りが出ないように施設側が調整していることが多くなっています。しかし、ライバル店が全く無いというわけではないので、集客という意味では、ジャンルの異なる飲食店も競合店になることを意識しなけれないけません。
路面店のメリット・デメリット
続いて「路面店」のメリットとデメリットを確認していきます。
メリット
①自由度が高い
営業時間や店舗の内外装、ポスターやのぼり等の展示物、メニューの種類などルールや規定に縛られることなく経営者が自由に決めることができます。
②顧客が入りやすい
お店の顔が道路に面していることで、店舗の入り口もわかりやすいため、お客様が入店しやすいという意味では集客力が見込めやすいということも言えます。さらに、店頭に陳列や配置できるテイクアウト販売も行いやすくなるでしょう。
③店舗ブランドイメージやこだわりを確立しやすい
自由度が高い点とも共通しますが、店づくりが自由に行えるということは、お店のブランドイメージを確立していく点においても、飲食店経営者独自のカラーを打ち出しやすいといえます。個性的なPRも顧客に受け入れられれば、お店のブランドイメージを強く定着させることができるでしょう。
デメリット
①集客は自力で
特に個人経営の路面店の場合は、集客対策や宣伝・PRまで売り上げアップのための全てのマーケティング戦略を考案し、それに伴うプロモーション活動を自分で進めていかなければいけません。しかし逆の発想では、自由度が高い分、人通りの多い路面店の場合は人目につきやすく、お店の宣伝効果も期待できることもあるでしょう。
②賃料が高い
路面店が集客しやすい人気の立地であることは、飲食店経営者にとっては共通の認識となります。そのため、路面店は他の出店場所に比べると、賃料が高く設定される傾向にあります。路面店に出店できても、月々の売り上げが賃料で圧迫されては困りますので、出店前に現実的な売り上げの目標を立てておかなければなりません。
③物件がでにくい
飲食店経営ではやはり路面店での出店は人気があります。人気のエリアや人が多く集まる繁華街では、賃貸物件を見つけるのが難しくなります。立地条件で物件探しをする際は、予想以上に時間がかかってしまうことも多いのが現状です。
コロナ禍で変わる店舗形態
さて、ここまでの解説では、テナント出店と路面店の違いや、メリット・デメリットをご紹介してまいりましたが、今年流行した新型コロナウイルスの感染拡大で、飲食業界の店舗形態に伴う状況が変化しつつあるようです。コロナ禍で少しづつ変化している現状を認識していきましょう。
デリバリーの導入
コロナの影響で打撃を受ける飲食店が売り上げを確保する集客対策として、デリバリーやテイクアウトを新規に始めた店舗も多いでしょう。路面店のような独立店舗は、規律のあるテナント店に比べ、比較的参入しやすい面があるかもしれません。そんな中、東京のある大手商業施設では、テナント店のデリバリーサービス展開を後押しし、運輸会社がまとめてデリバリーを行うというシステムを導入し始めています。今後は、商業施設内のテナント店として出店する飲食店のデリバリーサービスは、施設の運営側が体制構築をしていくという流れが増えてくることが予想されます。
飲食店に不向きな場所が人気に
飲食店と言えば、人通りの多い路面店や多くの人が集まるテナント店というイメージが強いですが、今後は人との接触を避けられるデリバリー中心の「立地にこだわらない飲食店」が増える可能性があります。人通りの少ないビルのテナントや、ゴーストキッチンの利用など、場所にこだわらないで売り上げを確保していくという、飲食店経営者の意識も変化しつつあります。
駐輪場や駐車場があるビルのニーズが高まる
現在はUberEatsなどのデリバリーサービスを導入する飲食店が増えていますが、今後は、デリバリーありきの営業を目的とした、自前でデリバリーサービスを実施する飲食店が増えることも予想されます。そうなると、自転車やバイクを止められる駐輪場や、配達車を止める駐車場付きのテナントのニーズが高まる可能性が出てくるでしょう。
良い立地条件が必ずしもメリットを生むわけではない
店舗にとって立地条件は最も大切だと言われていますが、必ずしも自分が理想とする良い立地に店舗を構えられるとは限りません。テナント店と路面店にはそれぞれメリットとデメリットがあり、またそれらが全ての飲食店に共通しているわけではなく、店舗のコンセプトによってはデメリットが逆にメリットになる場合もあり得ます。まずは、店舗の個性やアピールポイントを洗い出し、継続的なコストを見据えた物件をさがすことが大切です。
そのためには、自店舗の方針等を明確化しておくことが大切であると言えるでしょう。そして、立地においてマイナスポイントが出てきたとしても、そこをカバーできる戦略を練り、お客様に選ばれる店舗経営を目指していく心構えが重要です。
まとめ
今回は、テナント出店と路面店の違いから、それぞれのメリットとデメリットを比較し、解説いたしました。出店場所は一度出店を決めてしまったら、後から物件を変えることは簡単ではありません。自店舗のコンセプトに基づき、ターゲット層や経営戦略をしっかりと掲げ、物件を見極めていきましょう。
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