開業手続き

飲食店開業のために必要な手続き【税務署編】

開店ポータル編集部
2018/06/18

 開業をする際に、書類を提出しなければならないのは保健所や警察署、消防署だけではありません。忘れてはならないのが“税務署”での手続きです。お店を経営するわけですから“事業を開始しますよ”という届出を税務署に提出する必要があります。雇われていた頃には、給与から所得税などの税金を差し引いて国に納付する“源泉徴収”や、年末調整を会社にしてもらっていましたよね。お店を経営する立場になった場合は、自身で売り上げや支出の管理をし、申告を行い、所得税を納めなければなりません。そのため、開業時には税務署への届出が必ず必要になるのです。
 また、個人が開業する場合と、法人がオーナーとなる場合では手続き内容が異なりますので注意してください。本記事では個人事業主として必要な税務署関係の手続きをみていきます。

1.個人事業の開業届出書

 新しく事業を始めた時に必ず提出しなければならないのが“個人事業の開業届出書”です(所得税法229条)。期限は、“事業の開始等の事実があった日から1ヶ月以内”と決められています。提出期限が、土・日・祝日に当たる場合は、その翌日が期限となります。
 また、この開業届を提出しなければ、所得税の確定申告を“青色申告”で行うことができません。これは個人事業主にとって、非常にデメリットとなるので“開業届出書”と“青色申告書”はセットで考えましょう。

個人事業の開業届出・廃業届出等手続/国税庁HP:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/

 

2.所得税の青色申告承認申請書


 事業主が1年に1度行う、所得税の確定申告を“青色申告”で行うために提出する申請書が“所得税の青色申告承認申請書”です(所得税法第144条、所得税法第166条)。確定申告は“白色申告”と“青色申告”の2種類がありますが、白色申告と比べて青色申告は、若干手間はかかるものの、節税面でお得な点が多々あります。この申請書を、前述の開業届出書と一緒に提出しておかないと、青色申告はできません。忘れずに申請しておくことをおすすめします。
 期限は、青色申告をしようとする年の3月15日迄、その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合には、その事業開始等の日から2ヶ月以内に提出してください。

■白色申告とは

  開業したばかりで節税するほど所得が高くないという場合や、会計に詳しくない方に適した確定申告と言えるでしょう。メリットとしては、誰でも記入できるフォーマットを使って“単式簿記”で記帳するため、会計業務が非常に簡単に行える点です。納税者が所得と税額を計算して、税務署に申請して納税します。
 

■青色申告とは

 一定以上の事業収入がある方に適した確定申告です。まず忘れてはいけないのが、前述の“開業届出書”を提出していないと、青色申告をすることができず、自動的に白色申告となります。
 青色申告は、申請書を提出して税務署の承認を受ける、帳簿の記入は複式簿記で行うなどの条件をクリアして、初めて申告ができます。白色申告と比べて、かなり手間はかかりますが、その分メリットも大きいのが特徴です。総収入額から65万円を差し引く特別控除があり、大幅な節税ができるのです(単式簿記の場合には10万円控除)。その他にも、控除される項目が多々あるので併せて確認しましょう。
 

所得税の青色申告承認申請手続/国税庁HP:https://www.nta.go.jp/
 

3.青色事業専従者給与に関する届出手続

  これは青色申告を行う事業主が家族や親族を従業員として雇用した場合に必要な届出です(所得税法第57条)。青色申告では、家族従業員に支払った給与を全て経費として計上ができます。この手続きを行わなければ給与を支払うことができませんし、もちろん経費にもできません。
 青色事業専従者給与の提出期限についても、申告を行う年の3月15日迄で、1月16日以後に開業した場合は開業から2ヶ月以内となっています。

青色事業専従者給与に関する届出手続/国税庁HP:https://www.nta.go.jp/taxes/


4.給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出

 アルバイトやパートなど従業員の所得税を給与から源泉徴収する際に必要な手続きです(所得税法230条、所得税法施行規則第99条)。これには家族従業員の給与も含まれます。所得税が発生しない給与が少額の従業員であっても届け出なければならないので注意してください。期限は、給与支払事務所の開設の事実があった日から1ヶ月以内
 また、開業時に提出する“開業届出書”に給与支払いに関する項目があるので、そこに記入すれば給与支払事務所等の開設届出書は不要ということになっています。しかし、実際には提出を求められることがあるようです。二度手間を避けるためにも、あらかじめ提出をしておいた方が良いでしょう。

給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出/国税庁HP:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/

 

5.源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請

  これを申請することによって、毎月税務署へ納める所得税を、年2回(1月・7月)にまとめて納められるようになります(所得税法第216条、第217条)。個人経営の飲食店にとって、毎月の納税は負担も大きいのではないでしょうか。そういった手間を少しでも減らし経営をスムーズに行うためにも、申請をしておくと良いでしょう。ただし、適応される条件は従業員9人迄となっているので注意してください。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請/国税庁HP:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/

 

個人事業主としての自覚を持とう!


 飲食店をオープンする際には、さまざまな届出や申請を行わなければいけません。届出を行わないと開店できないものであれば、見落とすことも少なくなりますが、税務署への届出は、開業後に行うものばかりです。忙しさにかまけて、うっかり忘れていたなんてことも。お店を経営し従業員を雇うことは、自分だけでなく従業員の生活を支えていかなければなりませんよね。個人事業主としての自覚を持ち、税金や記帳などに関する知識をつけていきたいところです。

 

開店ポータル編集部
2018/06/18