店舗設計

店舗設計の際に気をつけたい「動線」を設定するポイントとは?

開店ポータル編集部
2018/07/13
 店舗設計時にこだわりたいポイントのひとつに、お客様とスタッフが、効率良く動ける環境づくりがあげられます。

 お客様は入店し、席に案内され、お手洗いへ行き、食事が終わったらレジに向かいお会計、そして退店。
 それに伴い、スタッフはお客様を席に案内、料理を厨房から席まで配膳し、会計時にはレジに向かい、お客様のお見送りをします。また、厨房内は注文を受けた料理が次々と出来あがるため、絶えず人が動いている状態です。

 店舗設計をする際には、これら、店内を行き交う人たちの動きを考えた動線がポイントになります。れぞれがいかに効率良く移動できる経路を確保するかによって、料理の提供スピードや、接客の質、お客様満足度は大きく変化するのです。

 本記事で、店舗設計時のポイントとなる動線についてしっかりと確認しましょう。

飲食店における2つの動線とは?

  
 動線とは、人が動く線。つまり、一連の動きで通る場所を繋いだ線のこと。

 飲食店においては大きく分けて、2つの動線が存在します。1つは、お客様の動きを繋いだ “客動線”。そしてもう1つは、ホールスタッフや、厨房内のスタッフの動きを繋いだ“作業動線”です。

 この2つの動線を考えた店舗設計ができているかどうかが、今後の経営に大きな影響を与えます。客動線を工夫することは、お客様にとってストレスのない環境となり、顧客満足度のアップ、リピーター獲得に繋げることができるでしょう。

 また、作業動線を考慮し、スタッフの動きの無駄を無くせば、作業効率はぐんと上がります。その結果、少人数でお店を回すことができるようになり、人件費の削減にも繋げることができるのです。

 動線を考える上で重要なことは、ホールでは客動線と作業動線が交差しないよう、厨房ではスタッフ同士の作業動線が交差しないよう設定することです

 では、厨房とホール、それぞれの動線について詳しく見ていきましょう。
 

厨房における動線のポイントは?


 厨房内のスタッフの動線を考えるときは、調理スタッフが最短距離で動けるように設定することが理想です

 基本的な厨房内での流れとしては、①冷蔵庫から食材を取り出して②作業台へ向かい下処理をし③コンロ周りに移動④出来あがった料理を盛り付けし配膳スペースに運ぶ

 この一連の動きを踏まえた上で、動線を組み立てましょう。作業をする各々の役割、動きを考え、スタッフ同士の動線が交差しないようにしなければなりません。

作業動線:食材を取りだす→下処理→加熱加工→配膳や盛り付け→提供


■通路幅を設定
 厨房内の通路幅は60~80㎝ほどあれば十分です。
 調理スタッフが複数人いて、厨房内で人がすれ違う場合は、最低でも75㎝は確保しましょう。

■調理器具・機材の配置を設定
 冷蔵・冷凍庫から食材を取り出し、下処理を行い、加熱加工をおこなう。このとき、各場所への移動が数歩で済むよう、それぞれの設備を最短距離に配置しましょう

 焼く、揚げる、煮るなどの加熱加工を行う機器類は、できるだけ近くに配置し、1つのダクトでカバーするのが理想です。あまり離れてしまうと、作業効率が悪くなるので注意が必要です。

■配膳スペースを設定
 出来上がった料理を一旦置いておく配膳スペースも必要です。フロアスタッフにバトンタッチする場所になります。
 スタッフ同士、双方の業務に効率の良い場所、スペースを確保しましょう。

 厨房の設計時には、流れるような動線を描き、なるべくシンプルにする。そして、スタッフ同士の動線が交差しないことがポイントです。その動線を意識した上で、店舗にあった厨房レイアウトを選びましょう。

 また、小規模の飲食店では、通路幅を確保するにしても理想に近づけることが難しい場合もあるでしょう。しかし厨房にゆとりが無いと、当然スタッフもストレスを感じてしまいます。

 動線を考えて、ゆとりある設計を実現するには、設計のプロの力を借りるのも一つの手です。実際に業務にあたるスタッフの意見とプロの意見を取り入れて、理想の厨房を目指しましょう。

ホールにおける動線のポイントは?

 ホールでは、スタッフの作業動線とあわせてお客様の動きである客動線も考えなくてはいけません。

 ここで大切なのはスタッフとお客様の動線が交差しないこと。動線が交差してしまうと、お客様とスタッフがぶつかったり、お客様が配膳するスタッフに気を使ったりと、お客様にとって居心地の良い空間ではなくなってしまうので注意が必要です。
 

①客動線:入口→席/席→お手洗い/席→レジ


 厨房の通路はスタッフ同士がすれ違う場合を想定しています。一方ホールでは、スタッフとお客様、そしてお客様同士がすれ違うことになります。スタッフの動線はあらかじめ決めておくことも可能ですが、お客様の動線を固定することはできません。それを考慮して、厨房の通路よりも広めに設計することが重要です。

 ホールのメイン通路幅は120cmが理想です120cmが取れない場合、最低でも90㎝は確保したいところです
 

②作業動線:下膳→食器などの洗浄→片付け


 この動線を考える上で重要なのは、下膳と配膳の動線を交差させないこと。厨房の出入り口でスタッフ同士が、道を譲り合っている光景をよく目にしませんか?その無駄な時間は、あらかじめ動線を考えた設計をすることで省くことができます。

 キッチンカウンターの場合、カウンターの両側を出入りできるようにして、一方向に回るようにするなどの工夫が必要です。また、ホールにおける作業動線も、厨房同様に最短距離を目指しましょう。

 

■プラスアルファのポイント:回遊動線
 ホールでは従業員が店内をスムーズに動ける、“回遊動線”を意識した方が良いとされています。

 回遊動線とは、簡単に言うと店内をぐるっと回れるような動線のことです。動線に行き止まりがない構造になります。店内を一回りできるような回遊動線によって、客席の様子を確認しながら追加注文などの作業が行いやすくなります。

 ホールでの作業動線はお客様と従業員の動線を交わらないようにすることに注意しながら、回遊動線も意識した店舗設計にしていきましょう。
 また、お客様の動線は固定できないため、あらかじめ通路幅には余裕を持たせることも忘れないでください。これによって注文から料理提供、片づけまでを効率的に行えるようになります。

動線を意識した店舗設計で繁盛店へ!


 飲食店では限られた空間のなかを、不特定多数の人が行き交います。店舗設計の際には、それぞれの動線を設定することが非常に大切です。

 スタッフの業務効率を考えた動線が確保できれば、入店したお客様を待たせることなく案内できたり、料理提供や下膳をスムーズにおこなえたりと、サービスのスピードや質を高めることができます。その結果、顧客満足度も向上し、さらにはリピーター獲得や売上アップに繫げることができるのです。

 スタッフの業務効率が良くなることで余裕が生まれ、新たなメニュー開発、価格の変更など店舗運営をしていく上での大切な業務に多くの時間を割くことができます。動線を意識した店舗設計で、繁盛店への第一歩を踏み出しましょう。

 
開店ポータル編集部
2018/07/13