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【コロナが飲食店に与えたプラスの「遺産」】ようやく訪れたDXの波《第3回》

開店ポータル編集部
2021/01/18

前回の連載コラム第二回では、コロナウイルスによるパンデミックが飲食店に与えたプラスの「遺産」として「破棄食材や破棄食品に対する考え方が改善されたこと」をあげました。

>>【コロナが飲食店に与えたプラスの「遺産」】破棄食品への考え方改善《第2回》

 

休業や時短営業の影響で余ってしまった食材の消費方法を検討したことで、改めて「食品ロス」に目を向けた店舗も多かったことでしょう。

 

しかし、このコロナ禍において、飲食店が最も変化したというべき点は、「デジタル化」です。もっと言えば、破棄食品の流通や、第一回に解説した「未来の食事代を支払う文化」も、活用できる「デジタルシステム」があったから実現できたにほかなりません。

>>【コロナが飲食店に与えたプラスの「遺産」】未来の食事代を支払うという文化《第1回》

 

そうした意味では、飲食店にもようやく「DX化」の波が訪れたと言えるでしょう。

新型コロナで飲食店に広まったもの

実際、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、飲食店では下記のようなシステム導入やサービス開始が広まりました。

・デリバリー、テイクアウト

・ECサイトでの販売

・キャッシュレス化

・モバイルオーダーシステム

それぞれ解説していきましょう。

・デリバリー、テイクアウト

1つは、デリバリーやテイクアウトです。緊急事態宣言の発令やそれに伴う時短営業要請によって、飲食店は「イートイン」という販路を狭められることになりました。

そこで、非対面・非接触で料理を提供することができるデリバリーやテイクアウトなどの「中食」の導入が盛んになったのです。

 

また、ニッセイ基礎研究所による「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」では、2020年1月ごろと比べて、9月末では外食の減少が目立ち、テイクアウトなどの中食が増加傾向にあるのが分かります。


・ECサイトでの販売

ECサイトでの販売も同様です。オイシックスなどの料理キットや、鍋キットなど、自宅にいる時間が長いからこそ、作るところから楽しみたいという需要に応えるサービスが広まりました。

 

テイクアウトやデリバリーよりも、自宅で調理するため、「出来立てを食べられる」「調理体験という付加価値をつけられる」というメリットがあります。

・キャッシュレス化

また、テイクアウトやデリバリーなどが更に広まるにつれて、アプリ上やサイト上でそのまま決済ができるようにと、「キャッシュレス化」の動きも更に拡大しました。それだけでなく、キャッシュレスに対応することで、お客と店員の接触を最小限に抑えることができるため、モノを介した感染を防止することに繋がります。

・モバイルオーダーシステム

イートイン事業の中でも、より「安全性」を担保するため、「モバイルオーダーシステム」を導入する店舗も増えてきています。実際に、マクドナルドの「モバイルオーダー」を利用したことがある方も少なくないのではないでしょうか。

マクドナルドのモバイルオーダーは、テーブル上にあるコードを読み込んで、席についたまま注文と決済ができるシステムです。レジに並んだり、お金のやり取りをしたりせずにスマートに注文ができます。

イートインでも人との接触を最小限に抑えることができるため、マクドナルドを筆頭に「モバイルオーダー」の導入が飲食店に浸透してきているようです。

コロナで広まった飲食店非接触化のメリット


と、このように、飲食店ではコロナ禍においても売上はもちろんお客の安全を担保するため販路をオンライン化したり、キャッシュレスを導入したりするなどの対策を行いました。

 

これらの対応は、実際飲食店自身にどのようなメリットをもたらしたのでしょうか。

安全性をアピールできる

1つは、飲食店に安全性をアピールできるという点です。非対面・非接触、ソーシャルディスタンスの確保が一定の感染リスクを低下させるとされており、日常生活においても気を付けている方が多いのではないでしょうか。

 

誰もが知っている、そして誰もが簡単にできる感染対策だからこそ、マスクを外して飲食をする飲食店がこれらを取り入れていなければ「安全ではない」と認識されてしまう可能性があるのです。

 

その点、デリバリーやテイクアウトを実施し、席も間隔を開けて配置し、キャッシュレス化やモバイルオーダーにも対応していることで、「安全です」とアピールすることができます。

販路拡大を期待できる

これまでイートインのみの営業であった店舗も、この機会にデリバリーやテイクアウトに販路を広げることで、多角的に売上をアップすることができます。

中には、緊急事態宣言や、時短要請が解除されれば、デリバリーやテイクアウトの営業はストップされる飲食店もあるようです。

理由としては、

・1人で営業をしているためイートインのお客を対応しながらデリバリーやテイクアウトに手が回らない

・複数のアプリを利用すると上手くさばけない

などがあげられます。

 

しかし、このような場合でも予約管理システムを利用したり、イートインのお客にはモバイルオーダーを活用してもらうなど対応することで、効率的に業務をすすめることができる可能性もあります。

全国の人々にお店を知ってもらえる

また、全国の人々にお店をしってもらえるというメリットもあるでしょう。インターネットに掲載された情報は、全国に配信されます。そのため、TwitterやInstagramを上手く活用スあれば、ユーザーによる拡散を狙うことができ、全国の人々にお店を知ってもらえるきっかけになることでしょう。

ECサイトでの販売等、全国からの注文を受け付けていれば、新たな販路拡大にも繋がります。

DX化に対応できた

そして、このように、飲食店がデリバリーやテイクアウトを開始したり、キャッシュレスを導入したりすることは、結果的に飲食店の「DX化」につながっています。DXとはいわゆるデジタル技術を活用することで、飲食店や飲食店を取り巻く人々の生活が豊かに変革することをさします。

これまでデジタル技術との縁が薄いとされてきた飲食店も、新型コロナウイルスによる非対面非接触化の文化によって、DXに対応する店舗が増えたと言えるでしょう。

コロナで加速した飲食店の「DX」


このように、飲食店ではコロナ禍においても、お客に求められるよう「中食」に対応したり「安全性」を確保するよう努めました。その上で必須だったのが「デジタル化」なのです。

 

そもそも、ビフォーコロナの時代から、飲食店だけでなく国内企業には「DX化」が求められてきました。しかし、デジタルに対する知見がなかったり、どのシステムがどこに必要なのかが明確にならない企業が多かったことで、国内企業におけるDX化は世界でも遅れを取っている状況だったのです。

 

特に、飲食店のように、アナログでも十分に営業ができるとされてきた業界は、DX化など必要のない業種という見られ方をしていたのも事実でしょう。しかし、今回新型コロナウイルスの感染拡大によって、イートインという最大の販路を失った時、飲食店はデジタルやオンラインを活用して販路を確保するほか手がありませんでした。

 

そうして、これまで「DX」と縁の遠かった飲食店が、急速にデジタルを導入することになり、様々な活用方法を模索しているところです。

 

今後は店舗を持たずオンライン販売のみで営業をするゴーストレストランを開業する方や、EC事業に参入する店舗、データを活用してマーケティング分析をする方などが増えてくることになるでしょう。そして、飲食業界ではますますデジタルの活用が加速するはずです。

 

まさに、この飲食店の「DX」はコロナ禍における必然出来事であったのかもしれません。


まとめ

本連載記事では、コロナが飲食店に与えたプラスの遺産として、

①未来の食事代を支払うという文化

②破棄食品に対する考え方の改善

③DX化への対応

の3つをあげました。

 

どれも、コロナ以前から、問題視されてきたことですが、日々の業務に手一杯の店舗も多い飲食店にとって、なかなか向き合う機会がなかったのも事実でしょう。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、これらの問題点について、飲食店は向き合わざるを得ない状況になったのです。もっと言えば、「向き合わなければお店の存続を左右する」。このような問題に、再度ゆっくりと目を向け、改善、施策をうつ店舗が増えたことが、コロナ禍における唯一の「正の遺産」と言えるのではないでしょうか。

 

開店ポータル編集部
2021/01/18