労務管理

【保険のはなし】開業するなら知っておくべき”加入必須の保険”

開店ポータル編集部
2018/05/09
 生活するうえで自分にあったものを自由に選べる保険ですが、飲食店を経営するうえで、加入が義務づけられている保険もあります。それが、今回紹介する労働保険と社会保険です。名称は聞いたことがあっても、どのような保険なのか知らない方も多いのではないでしょうか。2つの保険の仕組みや、どのような時に役立つのかを見てみましょう。

働けなくなってしまった時に備えた“労働保険”


 労働保険とは、“労災保険”と“雇用保険”の2つをまとめた呼び名です。労災保険は従業員を雇っている場合に加入義務が発生するのに対して、雇用保険は条件を満たした従業員がいた場合に加入する義務がうまれます。では、労災保険と雇用保険とはそれぞれどのようなものなのでしょうか。

労災保険

 労災保険とは、労働者が業務中もしくは通勤中に事件や事故に巻き込まれて死傷した際に、本人もしくは遺族に対して給付金が出るものです。雇用形態に関係なく、働いて給料をもらっている労働者が対象となり、月々の保険料は会社側が全額負担するものとなっています。とくに飲食店は、事故の原因となり得る火や刃物を使う機会がとても多いので、加入しておかなければなりません。
 一言で業務中・通勤中といっても、さまざまな状況が考えられます。労災保険が適用されるには、業務中に発生したものなのかという“業務遂行性”と、原因は業務によるものなのかという“業務起因性”が認められるかどうかがポイントです。
 仕事場や配達先などで起きた業務中の出来ごとの場合はほとんど問題ありませんが、休憩時間中は業務によるものではないと判断されるケースが多いです。また、通勤は基本的に“仕事場と自宅の移動”を指し、途中で寄り道をした場合には私的とみなされてしまいます。ただし、生活用品の買い物や通院など生活をしていくうえで必要最低限の行為であれば認められることもあるようです。
 このように、発生時の状況により、給付対象となるかどうかが変わってきます。万が一の事態が起きてしまった際は、現場の詳しい状況確認が必要です。

雇用保険

 雇用保険とは、労働者が失業した際に、再就職を応援するものとして失業給付金を受け取れるものです。労災保険が全額会社側で保険料を負担するのに対して、雇用保険は被保険者も一部を負担する必要があります。従業員が以下の条件を2つとも満たす場合に、雇用保険に加入する義務が発生します。
・あらかじめ定められた1週間の労働時間が、20時間以上の場合
・31日以上雇用する予定がある場合
 これを満たしていれば、正社員やパート、アルバイトなどの雇用形態は問いません。基本的には雇用した従業員に適用されるので、オーナー自身は加入できません。ただし、スタッフを兼務しており、労働者としての一面が強い場合には被保険者となることも。あてはまる場合は、ハローワークで相談してみましょう。
 また、失業した場合のほかにも、一定の条件を満たせば育児介護で休業する方も給付金が受け取れる保険です。

日常生活の傷病や将来にも役立つ“社会保険”


 “社会保険”とは、”健康保険”と”厚生年金保険”をまとめた呼び名です。一人でも勤めていれば、加入の義務が発生します。そのため、オーナーのみで運営している店舗でも加入しなければなりません。正社員は必須ですが、非正規雇用のアルバイトやパート、派遣社員などは“労働時間が正社員の4分の3以上”となった場合に必須となります。平成28年の10月、29年の4月にはルールが改定され、改定以前よりも多くの人が社会保険加入の対象となりました。厚生労働省のHPによると、下記の項目が全て該当する場合も対象に含まれます。
【加入条件】
①一週間あたりの労働時間が20時間以上
②一ヶ月あたりの給料が880,000円以上
③雇用期間が一年以上の予定
④学生ではないこと
⑤従業員が501人以上の会社に勤めているもしくは500人以下の会社に勤めていて、社会保険加入に同意している方が過半数を超えている

 注意事項として“一週間あたりの労働時間”と“一ヶ月あたりの給料”とは、残業時間や賞与を省いたもので、あらかじめ定められている時間や額を指しています。もし雇用期間が1年に満たない場合でも、契約書面上にて更新の可能性があることが明記されている場合や、夜間・通信制の学生の場合には対象となります。

健康保険

 健康保険に加入していると、業務中や通勤中に該当しない時に患った、病気や怪我に対して給付金が出ます。条件を満たしているのに健康保険に加入しなければ、国民健康保険への加入義務が発生します。つまり、どちらかの保険には必ず加入しなければならないのです。健康保険であれば店舗と被保険者で保険料が折半になりますが、国民年金保険の場合は全額被保険者負担となります。

厚生年金保険

 厚生年金保険とは、定年後の働けなくなった時に備えた保険です。年齢によるものだけでなく、障がいが出てしまったり亡くなってしまった時には遺族に対して給付金が出る仕組みとなっています。年齢による給付は“老齢年金”、障がいによるものは“障害年金”、亡くなった場合には“遺族年金”と呼ばれます。
 条件を満たしているにも関わらず、厚生年金に加入していない場合には、健康保険と同じように、国民年金への加入が義務づけられ、保険料の被保険者負担も全額となります。

厚生労働省 HP:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/2810tekiyoukakudai/


保険に加入する必要性


 条件を満たしている場合、労働保険社会保険に加入することは義務となっています。家賃や材料費、人件費などのほかに、保険料を毎月支払うとなると、負担額が大きくなり煩わしく感じる方もいるかもしれません。しかし、もし失業や病気にみまわれて働けなくなってしまった場合、保険に加入していないと、収入が得られず生活が苦しくなってしまいます。加入して保険料を納めていれば給付金を受けとることができるので、もしもの時の支えとなってくれるのです。


理解することで見出せる保険の価値


 今までは、よくわからずに保険料を払っていた方も、保険の内容や仕組みを知ることで加入の意味を感じられたのではないでしょうか。正社員以外に、パートやアルバイトを雇う機会が多い飲食店。ほとんどの場合は、店舗側で手続きをしなければならないので、どういった場合に加入義務が発生するのかよく頭に入れておきましょう。

 
開店ポータル編集部
2018/05/09