閉店手続き

都市開発による立ち退き問題!飲食店が優位に事を運ぶ為に知っておくべきポイントとは

開店ポータル編集部
2020/01/14
 「街の再開発の区間に入っているので、立ち退きを…」「道路の拡幅をするから、立ち退きを…」「新しくビルを建てるので、立ち退きを…」飲食店を経営していて、ある日こんなことを言われたら、どうしようか困ってしまいますよね。
 
 立ち退きを求められたとき、損なく適切に対応するには、どんなことに注意すればいいのでしょうか。開発事業者や物件の管理者と交渉するうえで、気をつけたいポイントをまとめました。

立ち退きを求められても、すぐに出ていく必要はない

 公共事業の道路工事や都市の再開発工事にともなう立ち退きは、法律に従っておこなわれるため、最終的に拒否することはできません。一方で所有権者や賃借権者には権利が保護されており、「代替地の用意」や「金銭的補償」が受けられる場合があります。中には億単位の補償金が認められたケースも。

 立ち退き時にはさまざまな問題が起こりますが、うまく立ち回れば優位に話を進めることができます。


 道路の拡張やマンションの建設などは、法律に従っておこなわれる公共事業です。しかし、それを理由に立ち退きを求められたからといって、すぐに応じなければならないわけではありません。

 工事をおこなう事業者は、土地の所有権や賃貸権を持つ人(建物の管理会社や大家さん)の権利を守らなければなりません。代わりの土地を用意する、補償金を支払うなどの対応をするのが一般的です。

 また、立ち退きでは建物の管理者だけでなく、その建物を借りている人、つまり飲食店オーナーの権利も守られます。そのため、大家さんから「道路工事でビルを取り壊すから、すぐに出て行ってください」といきなり契約を解除されることはありません。



 立ち退き交渉では、貸主側の「なぜ立ち退いてほしいのか」という事情と、借主側の「なぜその建物を使い続けたいのか」という事情をすり合わせます。この段階で、場合によっては、立ち退きに応じなくてよくなることもあります。双方の事情を考慮して立ち退き料の金額を決め、契約を解除してはじめて立ち退きとなるのです。

 このように、立ち退きまでには何度も話し合いを重ねるプロセスがあるので、慌てる必要はありません。落ち着いてやるべきことを確認し、行動しましょう。

事業者側の手順を知ろう


 道路の拡幅工事であれ、都市の再開発であれ、それらの公共事業には必ず「施工者」や「起業者」がいます。ここではひとまとめに「事業者」と表記することにします。

 立ち退きにおいては事業者が一方的に即追い出すというようなことはありません。原則として「事業者と権利者が話し合いの末補償金などの条件について決め、契約を結んでから立ち退く」という方法をとります。

 土地収用の場合は、事業者は以下の手順を踏みます。
①土地や物件の状況を調査・確認する
②調書を作成して収用委員会に申請し、公告縦覧(公開)する
③収用委員会で審理し、裁決を得る


 このため、立ち退きを迫られてから実際に立ち退くまでには時間的猶予があります。事業者側もなるべく合意によって穏当に明け渡ししてもらい、事業を進めようとするので、慌てる必要はありません。

立ち退き交渉で損をしないためのポイント

①調書に納得がいかなければ、不服を申し立てる

 土地開発などをおこなうときは、事業者が土地や建物の状況を調査し、土地調書・物件調書を作成します。調書は、事業者から代わりの土地や補償金の提供を受けるために必要な資料で、交渉において重要な役割を果たします。

 立ち退き料の金額には、調書の内容が反映されます。交渉を有利に進めるために、調書に目を通して不明点や納得のいかない点がある場合は、不服の申し立てをしましょう。

 権利者は調書作成の際に署名や捺印を求められます。そして、「調書の内容に異議はないか」を確認されることになります。この時、調書の内容に不明点や不満点があった場合、異議をとどめなければ、この調書の内容が補償金の額に反映される可能性が高くなります。調書に納得がいかなければ、おとなしく認めずに、不服を申し立てましょう。

②立ち退き料の内容を確認する

 飲食店が受け取れる立ち退き料には、次のお金が含まれます。

借家権価格

 入居時から建物の資産価値が増えている場合、飲食店は、増えた資産価値のうちお店が貢献したぶんの金額を受け取れます。これを借家権価格といい、土地家屋調査士の鑑定によって金額が明らかになります。

店舗移転にかかる費用

 立ち退きにあたっては、店舗移転の費用がかかります。あたらしく物件を借りるためのお金(家賃、共益費、仲介料など)はもちろん、引っ越し費用、内外装工事費、移転のお知らせをするための広告宣伝費などが挙げられます。

営業補償

 営業補償とは、立ち退きで営業を中断しているときに生まれる損失をカバーするお金。営業を続けていれば入るはずだった利益、スタッフのお給料の補償、移転先でお店が軌道に乗るまでの期間の補償などが含まれます。

③「建物使用の必要性」を主張する

 立ち退き料の金額は、飲食店と物件の管理者の双方の事情を考慮して決められます。
 建物の老朽化や、耐震性に問題があるなどの理由で立ち退きを求められた場合は、貸主側が立ち退きを求める正当な理由として認められるため、立ち退き料の金額は安くなります。

 しかし、上記のようなやむを得ない理由による立ち退きではない場合、何も考えずに立ち退きに応じると、金銭面で大きな損になる可能性もあります。
 少しでも立ち退き料の金額を上げるため、次の視点から「建物使用の必要性」を主張しましょう。

お店と土地の強い結びつき

 長年その場所で営業し、地域に常連さんをたくさん抱えているようなお店では、「その場所にあること」自体が強みです。立ち退きに応じて移転した場合、お客さまが離れてしまい、営業を続けることが困難になることが考えられます。そのため、建物を使い続ける必要性が高いと判断され、立ち退き料の額が上がります。

お店の利益が家計に占める割合

 家族経営の場合や、オーナーがほかに何も事業をおこなっていない場合などは、建物使用の必要性が高くなります。お店の収入がオーナー一家の生計を支えているため、立ち退きによって営業を続けられなくなると、生活が成り立たなくなると考えられるからです。

飲食店側の設備投資の大小

 お店を開くときには、厨房機器や内外装工事などの初期投資をおこないます。お店を移転するとなれば、物件を借りるための費用、厨房機器などを買いなおすための費用、内外装をととのえるための費用など、あらたな投資が必要になります。そこでどれくらいの費用がかかるのかという点も、立ち退き料の金額に影響します。

④立ち退きにかかわるやりとりを記録しておく

 立ち退きにはさまざまなトラブルがつきものです。交渉がスムーズにいかないと、物件の管理者や事業者、周辺住民とのトラブルに発展する可能性があります。

 立ち退きにかかわるやりとりを記録に残し、トラブルから身を守るための資料として取っておきましょう。行政機関や弁護士に相談するさいの資料として、「誰からどんな文書を受け取ったのか、いつ何を言われたのか」という記録を詳しく取っておき、いつでも提示できるようにしてください。

⑤近所に同業者がいれば、情報収集をおこなう

 周辺に飲食店が多い場合は、自店以外にも同等の条件で立ち退きを求められているお店がないか探してみましょう。
 近所で親しくしているお店や、付き合いのあるお店と情報交換ができると心強いです。周囲と比べて補償額が明らかに安かったり、不当な条件を突きつけられたりしていないかを確かめることもできます。



★閉店時の手続きに関する記事はこちら★
飲食店閉店時に必要な行政機関への届出・手続きには何がある?

気を付けたいポイント

①立ち退き料をもらえない場合がある

 補償金を得るために、忘れてはいけないポイントがあります。それは、「家賃の滞納がないこと」。
 借家であれば3ヶ月以上、借地であれば6ヶ月から1年の賃料の未納がある場合は、賃貸借契約を一方的に解除されてしまうことがあります。この場合は、立ち退き料は発生しないと考えておきましょう。

②補償金は所得税の対象になる

 高額の補償金がもらえると、多くの飲食店オーナーはそれを元手に条件のいい土地に移転しようと考えるでしょう。ですが、手に入れた補償金は所得税の対象になることを忘れてはいけません。後で高額な税金を納めなければならなくなります。
 所得税を納めてもなお余裕がある場合はいいのですが、所得税の対象であることを知らずに使ってしまい、「余裕がなくなってしまった…」と頭を抱える場合も…。所得税を納め忘れることが無いように気をつけましょう。

トラブルが発生したら、迷わずプロに相談しよう


 前述のとおり、立ち退きでは、開発事業者や物件の管理会社、大家さんといった関係者との間でトラブルが起こる可能性もあります。話し合いで解決しないトラブルが起きた場合は、迷わずに弁護士に相談しましょう。
 
 納得できない立ち退き条件を突きつけられた、関係者から嫌がらせを受けたなどの困った事態になったら、自力で対処しようとせずにプロの力を借りてください。

 そのさいは、立ち退き問題に特化した弁護士に相談するとよいでしょう。さまざまな事例に合わせて対応できるノウハウがあり、解決までの道のりが短いです。
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 慌てずしっかりと情報収集をすれば、優位に立ち退き条件の話し合いを進めることができます。通達が来たからといって、すぐに応じる必要はありません。先述したように、開発にあたって、行政機関は地域の人に向けて説明会を開きます。まずはそこに足を運び、どのように計画が進められているのかをつかみましょう。

 いかに交渉を有利に進め、立ち退き料を多く受け取るかは大切なところ。弁護士や不動産鑑定士の目星をつけておき、損のない立ち退きができるように準備しましょう。立ち退きを新たなビジネスチャンスにつなげるために、落ち着いて対処することが肝心です。
★閉店のお知らせに関する記事はこちら★
飲食店閉店のお知らせ方法は?告知のタイミングは?
 
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2020/01/14