閉店手続き

飲食店経営|撤退、店舗を手放す前に「かしこい閉店」の3つの方法

開店ポータル編集部
2018/04/27
 赤字がつづくことによる経営不振のほかにも、人材不足や家庭の事情による経営困難など、経営自体は好調であっても「閉店」という選択をしなければならないことがあります。

 いざ閉店するとなるとリース品の清算や、閉店を決意してから退去までの家賃、原状回復工事などの費用が必要になります。お店を手放し、再スタートを切ろうという時、できるだけ資金は手元に残しておきたいところ。本記事ではお店を手放す前に知っておきたい「かしこい閉店」の方法を3つご紹介します。

【飲食店閉店方法】①居抜き物件として売却する

■居抜き売却とは?

 内装設備などの造作物を、そのままの状態で次の店主へ売却する方法を居抜き売却と言います。「賃貸物件の場合、経営者自身が物件所有をしているわけではないから、居抜き売却はできないのでは?」と考えてしまう方もいますが、賃貸物件であったとしても、物件自体を売却するという訳ではないので、居抜き売却ができます。

■居抜き売却のメリット

【現借り手】
・原状回復義務の回避による、工事費のコストダウンができる
・売却金を獲得できる

【物件オーナー】
・次の借り手が比較的早く見つかるため空白期間が無い

【次の借り手】
・開店時の工事費や設備購入などのコストダウンができる

 このように、三者にとってメリットが大きい居抜き売却ですが、気をつけなければならないポイントもあります。それは、物件オーナーの承諾が必須なこと。大抵の賃貸借契約書には、そもそも居抜きの状態で契約を終了させてもいいとは記載されていません。民法第616条 第598条でも定められていますが、借りたものは元の状態にして返すことが基本です。そのため居抜き売却をする際には、オーナーの承諾を得る必要があります。
 

■居抜き売却の方法

Step①オーナーの許可を得る

 まずは、オーナーから造作譲渡の許可をもらうことから始めます。前述の通り、契約内容次第では原状回復が必須の可能性もあるので、必ず確認をしましょう。

Step②売却相手を探す

 その後“次の借り手”を探すわけですが、事前に何を譲渡するのか、それぞれいくらで売却したいかをしっかりまとめてから交渉に当たりましょう。開業時に居抜き物件からスタートする飲食店は、数多くあります。知人やスタッフなど、次の借り手が身近にいる場合は、スムーズに進められるでしょう。

Step③オーナーへの報告・契約

 次の借り手が見つかった旨をオーナーに報告し、紹介します。そこで問題がなければ、現借り手と次の借り手の間で造作譲渡契約を交わします。譲渡後のトラブルを防ぐためにも、しっかりと契約書を作成しましょう。その後、オーナーと次の借り手の間で賃貸借契約が行われます。

 ここで気を付けたいのは、現借り手が解約届を提出するタイミングです。提出してしまった後で居抜き売却がうまくいかなかった場合、売却ができないまま原状回復工事を行い、退去するということにもなりかねません。次の借り手が見つかってから提出した方が良いでしょう。

 個人で居抜き売却を行う際は、細心の注意を払いながら進めていきましょう。後々、トラブルが起きてもすべて自分で対処しなくてはなりません。閉店に向けてさまざまな手続きを進めなければならない状況下で、自身で行うのが難しい場合は居抜き売買専門業者へ依頼し、仲介してもらうのも手です。その際には仲介手数料は発生しますが、プロの手を借りることは安心材料にもなりますので検討してみるといいでしょう。

【飲食店閉店方法】②業務委託で営業を続ける

■業務委託とは

 業務委託とは、現借り手が賃貸借契約を続けたまま、店舗運営をしてくれる別の方に店ごと引き継ぐこと。閉店の理由はさまざまです。店舗経営は好調であっても体力的な問題や、家庭の事情などがその理由にあたる場合もあります。そのような時は、別の方に店舗運営をまかせる“業務委託契約”を考えてみてはいかがでしょうか。業務委託もまた、契約上禁止されている場合があるので、よく確認しましょう。

■メリット

【委託元】
・営業が続く限り、毎月収入(委託料)が得られる
・運営の手間がかからない
・賃貸借契約は続いているので、業務委託契約の期間満了時にもう一度お店を運営することができる
【委託先】
・飲食店運営の経験をつむことができる
・開業時の初期投資を抑えることができる
 

■業務委託の進め方

Step①契約内容を決める

 まずは、委託先を募集するための契約内容を決めなくてはなりません。その際に最も気を付けなければならないのは、賃貸借契約上できることとできないことを明確にしておくことです。物件によっては、営業時間の制限や、音を出す際の禁止事項、改装や機器の入れ替えなど、細かく禁止事項が決められている場合もあります。後々のトラブルを避けるため、あらかじめ契約内容に組み込むようにしましょう。

Step②委託先の募集をかける

 適正な条件で募集をかけることがポイントです。長く営業を続けてもらうためにも、あまりにも厳しい契約内容を提示することは避けましょう。月々の支払いの負担が大きすぎては、開業資金のコストカットができるとしても、委託先は契約に踏みきれないでしょう。

Step③契約を結ぶ

 お互いの条件をしっかりと確認できたところで、業務委託契約を交わします。

 委託先は低コストで開業はできるものの、通常の賃料にプラスして委託料も支払わなければならないので、ランニングコストは多少かかってしまいます。適切な委託料を設定し、委託希望者が契約しやすくなるようにしましょう。また、突然の解約に備えて保証金や解約金に関しても契約時に設定しておく必要があります。

▽事業譲渡について
飲食店事業譲渡の注意点 目的・条件・マイナス面・業者について

【飲食店閉店方法】③業務転換で再スタートをきる

■業務転換とは

 思い切って業態を大きく転換し、収益増を目指す方法です。
 ただし、業態転換時に工事をするなど新たな投資が必要になるため、慎重な判断が必要です。

■業務転換の方法

・客単価の高い業態に転換する
・近所にはない業態に転換し、新規顧客を獲得する
・昼と夜で業態を変える

 業務転換をする際には、自店が置かれている状況を把握し、何を変えれば売り上げが伸びるのか慎重に調査を重ねましょう。
 業務転換には、内装工事や機器の購入などの出費も考えられるので、タイミングと現状の見極めが重要です。

「閉店」に悩んだら、開店ポータルBizにご相談ください


 お店をたたむ場合、経営を続けることと同様の苦労と苦悩を経験することになります。しかし、お店を手放すことは、すべての終わりではありません。次のステップへのスタートにもなるのです。ただお店を閉めるのではなく、居抜き売却業務委託業態転換などを視野にいれてみてはいかがでしょうか。道はひとつだけではないということを忘れずに、最良の選択をしていきたいですね。

▼関連記事▼
【閉業ガイド】飲食店の閉店方法、やるべきこと、手続き、サポートについてまとめてみた

 開店ポータルBizでは、閉業や経営の立て直しに悩む経営者さまに、適切なアドバイスをさせていただきます。ご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。
開店ポータル編集部
2018/04/27