経理・会計

個人経営の飲食店オーナーが資金繰りに苦しむ原因とその解決方法を調べてみた

開店ポータル編集部
2020/02/13
 飲食店経営においてもっとも重視すべきなのは、何でしょうか。それは、資金繰りです。約半数の飲食店は、オープンから2年以内に廃業するといわれています。その原因のひとつは、資金繰りがうまくいかずに手元の資金が足りなくなり、家賃や水道光熱費を支払えなくなったことによる黒字倒産です。
 本記事では、資金繰りが苦しくなるいくつかの原因と、その解決方法をお伝えします。

資金繰りが上手くいかないとどうなる?

 「うちは儲かっているから、つぶれる心配はない」と思っていませんか?しかし、帳簿上の売上と、手元に残るお金の額は必ずしも一致しません。クレジットカード払いなどで、後日入金になる売上もあるからです。

 安定した経営を続けていくためには、お金の流れをきちんと把握することが重要です。毎日の収入・支出によるお金の増減を把握して、お店の資金がなくならないように調整する必要があります。

 資金繰りがうまくいかないことで、必要なときに手元に現金を用意できず、家賃、水道光熱費、スタッフのお給料などを支払えなくなって廃業…。これが、失敗する飲食店経営のパターンです。

資金繰りが苦しくなるのはなぜ?

 資金繰りが上手くいかないのには、さまざまな理由があります。
 まずは、以下の3点にあてはまっていないか確認しましょう。

①FLコストが経営を圧迫している
②売上に対して、家賃が適切でない
③キャッシュフローを把握できていない

①FLコストが経営を圧迫している

 資金繰りが苦しくなるおもな原因として、FLコストが高すぎることが挙げられます。
 FLコストとは、F(Food=食材費)、L(Labor=人件費)のふたつのコストの合計を意味します。このFLコストが売上に対して占める割合を、FL比率といいます。

 飲食店におけるFL比率は、平均55~65%となっています。食材費や人件費の管理を怠り、FL比率が60%を超えてしまうと、経営を続けていくのが難しくなります。もしも平均を大きく上回る場合は、それぞれのコストを見直しましょう。

Point:Fコスト(食材費)を見直す
 食材費をカットする方法として、仕入原価を下げることを思いつく方も多いでしょう。
 しかし、食材原価を下げすぎると、提供する料理の質が下がる場合も。「前よりおいしくなくなった」とお客さまをガッカリさせ、客離れを起こす原因になりかねません。

 そこで、メニュー数を絞り、看板商品や本当に食べてほしいメニューのみに力を注ぎましょう。メニュー数を減らすことで仕入れる食材も減り、使い切れずに廃棄する「食品ロス」も防げます。
 キャベツをお好み焼きやロールキャベツ、浅漬けに応用するように、ひとつの食材で作れるメニューのバリエーションを増やすのも効果的です。
 また、仕入先を見直したり、価格交渉をしたりして少しでも安く仕入れる工夫をしましょう。
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Point:Lコスト(人件費)を見直す
 人件費には、スタッフのお給料だけでなく、交通費手当やボーナスなども含まれます。
 人件費をカットする方法としては、人手が必要な業務を機械化することが挙げられます。券売機、食洗機、POSレジ、タッチパネルによるオーダー端末などがその一例です。

 ただし、機械の購入やリース契約には、初期費用、リース料、メンテナンス費用などさまざまな経費がかかります。作業手順を見直せば、機械を購入しなくても人件費を減らせる場合もあるので、検討を重ねましょう。
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 もうひとつの方法は、スタッフのシフトを見直すこと。忙しくない時間帯に大人数のスタッフを配置しても、人件費のムダになるだけです。採用を見直し、いまの人数でお店を回せるようシフトを調整するのも有効でしょう。

②売上に対して、家賃が適切でない

 食材費(F)、人件費(L)のほかに大きなコストとして、家賃(Rent=Rコスト)があります。食材費、人件費、家賃の合計である「FLRコスト」は売上の60~70%、家賃と共益費の合計は、売上の10~20%におさめることが理想です。

 この数値を超えている場合、売上に対して高すぎる家賃が経営を圧迫していると考えられます。

Point:賃料適正化サービスを利用する
 不動産価値は変動しやすく、入居時から一定ではありません。そのためいつの間にか、周辺の相場と比べて高額な家賃を支払っていることも。賃料適正化サービスを利用して、家賃の額が適切であるか調べてみましょう。

 賃料適正化サービスでは、土地や建物の状況、借主・貸主双方の事情などを考慮に入れ、家賃の減額ができないか貸主に交渉をしてくれます。
 成果報酬制のため、家賃が減額されなかった場合には、費用は発生しません。
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③キャッシュフローを把握できていない

 食材費や人件費、家賃が現状の経営所帯に見合わないことも、資金繰りが苦しくなる原因です。しかしもとをたどれば、それらのコストがかかりすぎていることに気づけない――つまり、キャッシュフローを把握できていないという問題が根底にあります。

 いつ、いくら収入があって、この日にいくらの支払いがある。そんなお金の流れを把握しておくことは、スムーズに資金繰りをおこなうために大切なことです。

Point:資金繰り表を作成する
 資金繰り表は必ず作成すべきものですが、一朝一夕で完成するものではありません。まずは毎日の帳簿記入によって、貸借対照表と損益計算書を作成しておきましょう。
①貸借対照表
 ある時点でのお店の財務状態を表した資料です。毎日の収入と支出(お金の取引)を、「現金」「売掛金」「買掛金」「未払金」などの勘定科目に仕訳して作成します。

②損益計算書
 一定期間の利益(儲かった額)から経費(かかった費用)を差し引き、「結局いくら儲かったのか(利益はいくら残ったのか)」を表した資料です。

 貸借対照表と損益計算書をもとに資金繰り表を作成すると、お金の出入りをスケジュール上で管理しながら、手元の資金の増減を確かめることができます。

Point:会計士や税理士の力を借りる
 資金繰り表の作成は大切ですが、過去に経理の実務経験がないオーナーにとってはかなりの負担です。営業中は、ただでさえやるべき業務が山積み。閉店後、クタクタになりながらレシートと格闘するのは、体力面でも精神面でもつらい作業です。

 そこで検討すべきなのが、会計や資金繰り、確定申告といった経理関係の業務は、会計士や税理士に任せてしまうこと。
 会計士や税理士は、ただ経理業務を代行するだけの存在ではありません。これまで経営経験のないオーナーは、自分のお店の経営状態がいいのか悪いのか、つかめていない場合がほとんどです。彼らはそこに寄り添い、楽観的でも悲観的でもないプロの目線から、経営改善のためのアドバイスをくれるパートナーでもあります。
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資金繰りを安定させるためにできる、その他の対策

 資金繰りをスムーズにするための対策は、ほかにもあります。
 いくつか挙げてみましたので、ぜひ参考にしてください。

①お店と個人の財布をしっかり分ける

 お店で使う小さな備品を買うときであっても、個人の財布から支払ってしまうと、レシートを失くすなどして会計処理時に金額が合わなくなります。店舗用の財布と個人の財布は、しっかり分けましょう。

 決算で導き出した金額と実際の有高が食い違っていると、納税額に影響します。月々の会計処理だけでなく、確定申告のときにも頭を抱えることになるでしょう。預金通帳も必ず店舗用のものをつくっておき、個人の通帳とは別に管理してください。

②ムダな経費をカットする

 前述したFLコスト、FLRコストに限らず、ムダなコストが経営を圧迫していないかチェックしましょう。
 食洗機を買うときは複数メーカーの製品をチェックする、エアコンクリーニングをするときは複数の業者から見積もりを取る…といった工夫で安くおさめるのも大切です。

 ただし経費カットに必死になりすぎると、サービス面でのお客さま満足度が下がってしまいます。どこにお金をかけるのか、どこを安くおさめるのかといった線引きはきちんとおこないましょう。
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③不良在庫を抱えないようにする

 倉庫などにしまわれたままの食材や備品は、お金が姿を変えたものです。それらを使わないまま保管しておくことを「不良在庫を抱える」といい、資金繰りを悪化させる一因になります。

 確かに、トマトのストックがないとアラビアータはつくれませんし、アラビアータを目当てに来店したお客さまを逃す(=機会損失)になるかもしれません。それも売上にかかわりますし、資金繰りにも影響します
 オープンからしばらく経つと、一定期間に使い切れる量が徐々に分かってくるもの。自分のお店が持てる、適正な在庫の量をつかんでいきましょう。
★不良在庫の防止に関する記事はこちら★
飲食店の悩みの種!不良在庫を出さない管理法と上手な処分方法

④ポイントカードでリピーターを増やす

 安定した資金繰りをおこなうには、売上をアップさせることも必要です。お客さまにアピールする手段として「値下げ」を思いつくオーナーも多いでしょう。

 しかし、単純に安くするだけでは集客にはつながらず、ただ売上が下がっただけ…という結果になることも。値下げよりも効果的なのが、ポイントカードを作成してリピーターを増やすことです。
 「スタンプ〇個でデザートサービス」、「水曜日はレディースデーでポイント2倍」など、来店の後押しとなる価値をポイントカードにつけましょう。

⑤取引先への支払いや請求の時期を調整する

 「受け取りはなるべく早く、支払いはなるべく遅く」が資金繰りをうまくいかせる鍵です。

 取引先への支払いは、月末締めの翌月末払いにするなど、なるべく長くするとよいでしょう。必ず後払いに応じてもらえるとは限りませんが、交渉してみる価値はあります。

 ただし、料金の滞納はお店の信用にかかわります。入金日にかんしてこちらの都合を聞いてもらった場合はなおさらです。支払い予定をスケジュール上できちんと把握し、滞りなく入金しましょう。

 逆に、得意先からはなるべく前払いで代金をいただくことで、資金を確保しやすくなります。こちらも可能な限り交渉してみましょう。請求にかんしてもスケジュール確認を怠らず、入金期限を過ぎている取引先には早めに連絡を取るようにしてください。

⑥スタッフの給料日を遅めに設定する

 一緒に働くスタッフのお給料は、支払ってしかるべきとはいえ大きな支出です。給与支払い日はなるべく遅め(毎月25日以降)にし、月末、手元に現金を確保できるようにしましょう。水道光熱費や食材費など、ほかの支払いとの兼ね合いを考えたうえで支払日を決めてください。

 キャッシュフローを安定させるためには、時給を上げるとき、月単位での昇給よりもボーナス支給にするのがおすすめです。

⑦クレジットカード払いで現金を確保する

 各種業者への支払いでは、クレジットカードを利用すると手元に資金を多く残すことができます。クレジットカードの引き落としは、翌月または翌々月であることが多いからです。オーナー個人のカードではなく、お店名義のクレジットカードをつくっておきましょう。

 支払いに猶予があるからといってムダなお金を使ってしまうと、翌月以降に苦しくなることも覚えておきましょう。

⑧開業後2年間の消費税免除を利用する

 料理やサービスの価格にプラスされた消費税は、お客さまに代わってお店が国に納めなければなりません。

 しかし個人事業主であれば、一定の条件を満たすことで、開業から2年間は消費税の納付が免除されます。資金を確保するうえでありがたい制度なので、次の条件を満たしている場合はぜひ活用しましょう。

・資本金が1,000万円未満
・最初の半期の売上が1,000万円以下
・最初の半期の人件費が1,000万円以下


 お店によっては、消費税を支払うほうがよい場合もあります。税理士に相談のうえ、どちらが望ましいのかを判断してください。

店舗経営の悩みは、開店ポータルBizに無料相談しよう

 事業をおこなう上では、各種支払いや万が一のアクシデントに備えて、すぐに使える現金を手元に用意しておくことが大切です。そのために、お店のキャッシュフロー、つまり収入と支出による現金の増減に気をつけながら、うまく資金繰りをおこなわなければなりません。

 日本政策金融公庫から受けられる創業直後の融資制度、税理士のアドバイスなど、活用できるものはできるだけ活用しましょう。

 開店ポータルBizでは、飲食業界に強い税理士探し、店舗運営にかかるコスト削減のほか、資金調達サービス、地域やお店にあった集客方法・HPやSNS運用についてのご相談を無料で承っております。ぜひお気軽にお問い合わせください!
 
開店ポータル編集部
2020/02/13