事業譲渡

コロナ倒産の現状|業態は飲食業、形態は破産が最多。経営破綻で悩んだらすべきこと。

開店ポータル編集部
2020/08/03

 国内企業の99%以上を占める中小企業は、日本における雇用の約7割を担っています。中小企業にはコロナ禍による経営悪化で倒産の危機に瀕しているところも多く、産業の衰退や雇用の激減が不安視されています。

 特にダメージが大きいのは観光・宿泊業、飲食業などですが、今後の感染拡大の状況によっては製造業、IT産業などへも影響が広がる可能性があるとみられています。
 本記事では、コロナ禍での倒産の現状と、実際に倒産の危機に直面したときに何をすべきかを考えていきます。

増加している「新型コロナウイルス関連倒産」の現状


 株式会社東京商工リサーチによると、2020年8月3日17時の時点で、倒産準備中の企業も含めた「新型コロナウイルス」関連の経営破綻件数は全国で累計385件(倒産321件、準備中64件)に達していると発表されています。(集計対象外の、負債1,000万円未満の小規模倒産は12件判明)

 新型コロナの影響で倒産する企業は2月から増えはじめ、緊急事態宣言が出された4月に入って大幅に増加しました。8月現在、もっとも多いのは東京都で97件(倒産86件、準備中11件)、次いで大阪府35件、北海道22件。愛知県20件。業種別では飲食業、アパレル関連業、宿泊業が多くなっています。

 以前から業績不振だった中小企業が、コロナ禍で順に倒産しているという見方もあり、地方においては老舗企業が廃業に追い込まれる例もあります。

 現時点で事業を継続していても、実は倒産寸前…という状況にある企業は少なくありません。補助金・助成金などの活用で倒産をまぬがれているケースや、外出自粛の影響で破産申請の手続きが滞っているケースも多いようです。

 全国では、2021年6月までに、倒産の危機に直面する企業が最大6,100社近くに達する見込み。倒産が増えることによる地域経済の衰退、雇用の機会が失われることによる生活困窮者の増加が懸念されています。

新型コロナ関連の倒産321件 もっとも多い形態は?

 ひとことで「倒産」といっても倒産の手続きにはいくつかの形態があります。倒産は、一般的には「企業経営が行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」のこと。
 もっとも知られている形態は「破産」ですが、なにも破産だけが倒産ではありません。倒産の手続きには、次のような複数の形態があります。

①破産
②特別清算
③民事再生
④会社更生
⑤特定調停
⑥私的整理


 ①破産や②特別清算は会社を消滅させる手続きである一方、③民事再生や④会社更生、⑤特定調停、⑥私的整理は、会社の事業を継続するための手続きにあたります。

 このうち、新型コロナ関連の倒産でもっとも多いのは破産で276件(85.9%)。次いで、民事再生が30件(9.3%)。
 業種別でみると、休業要請や来店客の減少がみられた飲食業がもっとも多い58件。次いで、百貨店や小売店の休業が影響したアパレル関連が50件、インバウンド需要が消失し、旅行や出張の自粛が影響した宿泊業が40件と並びます。

破産するとどうなる?

 破産手続きをすると、取引先や債権者からの連絡・取り立てに応じる必要はなくなります。それらの対応はすべて、破産管財人に一任できるからです。

 事業を続ける限り、資金繰りの悩みから解放されることはありませんが、破産すれば抱えている負債も消滅します。精神的な余裕が生まれ、これからどうすべきかについて落ち着いて考えることもできるでしょう。

 しかし倒産手続きのなかで破産という選択肢を取る場合、次の点を覚悟しなければなりません。

【関連】個人経営の飲食店オーナーが資金繰りに苦しむ原因とその解決方法を調べてみた

破産を選んだ場合に覚悟しておくこと

▼個人情報に傷がつく

 倒産後に再起してビジネスをはじめる経営者もいますし、そのような経営者をサポートする制度もあります。しかし一般的に、過去に破産経験のある経営者に対して、金融機関は二度目の融資をしてくれません。破産は個人としての信用に傷をつけ、またビジネスをはじめるときの大きなハードルになると考えましょう。

保有資産をすべて失う

 破産手続きが始まると、会社が所有しているすべての資産は、破産管財人の管轄となります。不動産などの形ある資産から、築き上げてきたブランド力といった無形の資産まで、すべてを手放します。すべての資産は現金化され、債権者などに分配されることになりますが(換価処分)、会社側はこれらの資産に対して一切口出しできません。

連帯保証人の責任が消えない

 経営者自身が、金融機関などからの借入金の連帯保証人である場合は、会社が倒産してもその責任は消えません。借り入れた額を換価処分で完済できなかった場合は、連帯保証人として自らが弁済する必要があります。

倒産・経営破綻で悩んだら、まずは専門家に相談しよう

 経営が苦しいからといってすぐに破産手続きに進むことはおすすめしません。

 取引先への連絡、債権者や従業員への説明などやるべきことも山積みで、会社の状況によって優先順位が異なります。専門家でない限り、どれから着手すべきか適切に判断するのは難しいでしょう。

 倒産を考えたらまずやるべきことは、弁護士に相談すること。倒産手続きに詳しい弁護士に相談し、アドバイスを受けましょう。
 弁護士の仕事は、倒産手続きのサポートだけではありません。会社を無くさずに済むための次のような方法を、まずは一緒に考えてくれます。

▼事業譲渡(M&A)

 事業譲渡(M&A)は、新しい経営者に会社や店舗を有償で受け渡し、事業を引き継いでもらう方法です。オフィスや店舗、内装設備、備品、従業員といった有形のものだけでなく、ブランド力や経営ノウハウといった無形のものまで譲渡対象になります。

 事業譲渡の魅力はなんといっても、従業員の雇用を維持できること。倒産を考えたときに頭を悩ませるのが、従業員を解雇しなくてはならないという問題ですが、事業譲渡をするのであればその必要はありません。「従業員の雇用を守りながら身を引く」という、経営者としての責任を果たすことができます。

 譲渡後は新しい経営者とタッグを組み、以前培ったノウハウや人材、資産を活用しながら事業をより大きく成長させることもできます。


▼私的整理または民事再生

 「私的整理」とは、裁判所を介さずに金融機関や取引先(債権者)と話し合い、借入金の返済プランを練り直す方法です。
 開業時に立てた返済プランを変更し、債務の一部または全部の免除、支払い期限の延長などを取り決めることで会社の再生を目指します。

 「民事再生」とは、裁判所に申し立てをした上で、資産調査などにもとづく「再生計画案」を作成し、事業を続けつつ計画に沿って返済していく方法です。大きく減額された負債を計画通りに返済できれば、残りの負債は免除されます。

 私的整理や民事再生の手続きに成功し、新たに作りなおした計画通りに支払いを終えることができた場合、会社は負債のない健全な状態に戻ります。



 弁護士はこのほかにも、事業の継続をサポートする補助金や助成金、融資などの制度を調べて提案してくれます。また、社労士として登録している弁護士であれば各機関への提出を代行してくれたりすることも。
 泣く泣く破産手続きに進み、会社を消滅させずに済むよう、さまざまな選択肢を提案してくれるのが弁護士です。

店舗経営・事業譲渡・閉店のお悩みは、開店ポータルBizにご相談ください


 築き上げてきた資産やブランド力、経営ノウハウを、倒産というかたちで消滅させてしまうのは心苦しいもの。「事業譲渡」「私的整理」「民事再生」などの方法で、倒産を選ばずに済む道がないか考えたいものです。

 とはいえ、資金繰りに苦しみながら無理に事業を続けると、会社も経営者自身もボロボロに疲弊するだけです。専門家に相談して、倒産を選ぶか、事業を続けるための方法を模索するかを決めましょう。会社が置かれている状況や個別の事情を考慮して、適切なアドバイスをしてくれるはずです。

 開店ポータルBizでは、閉業や経営の立て直しに悩む経営者さまに、適切なアドバイスをさせていただきます。ご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。また、本記事で取り上げた事業譲渡(M&A)について詳しく知りたという方には、専任のコンシェルジュが詳しくご説明いたします。下記のフォームからご連絡ください。
開店ポータル編集部
2020/08/03