閉店手続き

飲食店閉店時の基礎知識 事前に知っておくべき手続きや届出とは

開店ポータル編集部
2019/04/09
 どんなに繁盛していた飲食店でも、さまざまな理由から終わりの時はやってきます。開業するからには、いつかやってくる「店じまい」についても、しっかり頭に入れておきたいところです。
 お店を閉める時には、開業時と同様に、多くの手続きが必要になります。本記事では、閉店時におこなわなければならない基本的な手続きや、行政機関への届出についてまとめました。

赤字だけが閉店の理由ではない!?

 飲食店が閉店する理由のなかで最も多いのは、赤字経営が続くことによる経営不振です
 そして、そのほかにも閉店せざるを得ないさまざまな理由があります。

 人材不足、弟子への暖簾分け、業務好調ゆえの好立地への移転、体力的・年齢的な理由での引退、家庭の事情による経営困難、都市計画による立ち退きなど、経営自体は好調であっても閉店という選択をしなければならないことがあるのです。

閉店時にするべき6つのこと

 閉店を決めてから実際に立ち退くまでに、期間のあるなしに関わらず、必ずおこなわなければならない手続きや行政機関への届出があります

 知らなかったからといって放置してしまうと、後々になって大変な思いをすることになります。しっかりと手順を踏んで、大切なお店の看板をおろしましょう。
 

①店舗物件の契約内容を確認する

 まずは店舗が、「どのような契約を結んでいたのか」を確認をしましょう。
 退去予告は何ヶ月前にすべきか、居抜き譲渡について、原状回復義務の有無など、どのような退去条件を結んでいたのかが重要です

②物件解約の届出をする

 閉店を決意したからといって、すぐに物件が解約できるわけではありません
 解約の届出を提出してから短くても3ヶ月程度、長い場合は半年以上も家賃を支払い続けなければなりません。これを“解約予告期間”といいます。次の借り手が見つかった場合、支払期間が短くなるケースもあります。

 契約で原状回復義務がある場合は工事をして、借りる前の状態、またはスケルトンの状態にしなければなりません。金銭面でも相当の負担になるので、あらかじめ、契約内容の確認をしておきましょう。

③従業員への解雇通告をおこなう

 従業員への解雇通告は閉店の30日以前におこないましょう
 これは労働基準法で定められており、万が一、30日を切ってから通告することになってしまった場合は、“解雇予告手当”を支払うことになります。即日解雇の場合、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなくてはなりません。20日前に予告した場合、10日分だけを支払うということもできます。
 
 従業員が厚生年金・健康保険に加入している場合は、各関係機関に閉店した旨を届出る必要があります。苦楽を共にしてきた従業員には、なるべく早く閉店する旨を伝え、誠意を持った対応を心掛けましょう。

④リース品の精算をする

 什器や機器などのリース契約をしていた場合、解約手続きをして残高を支払う義務があります
 リース品は、リース会社に返却すればいいと勘違いをしている方も多くいますが、それは間違いです。一定期間料金を支払いながら使用し、不要になれば返却するというのは「レンタル」であって、リースではありません。リースとは、リース会社を通して希望の品を購入してもらい、長期にわたって分割払いをする契約のことを言います。したがって、閉店時に支払いが終わっていない場合、残高を支払うのは当たり前のこと。一括で払えない場合は、分割で満額まで支払い続けることになります。

 リース品の所有権は、支払いが終わった時点で借り手に移るケースもありますが、基本はリース会社にあります。勝手に第三者に売り、その資金を返済に充てるなどしないよう注意してください。自身がどのような契約を結んでいるか、きちんと把握しておきましましょう。

⑤レンタル品の返却をする

 レンタル品を使用している場合は、お店の営業最終日に返却する旨をレンタル会社に伝えましょう
 毎日使用していると、レンタル品であることを忘れがちなので気を付けたいところです。放置してしまうと後になって多額の請求が来ることになります。お店の営業を終えるその日に返却し、無駄な出費が出ないよう注意しましょう。

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各行政機関への届出

 期限の決められている手続きは、届出が遅れると罰金が発生する場合があります。速やかに各関係機関へ届出をしましょう。
 電気ガス水道などのライフラインの解約も忘れずにおこないましょう。

■保健所

 開業時には、保健所の許可を取らないことには営業ができないため最初に手続きをします。閉店時にも、届出をしっかりおこないましょう。
・“廃業届”を提出
・“食品営業許可証”の返還

⇒閉店日から10日以内に届出


■警察署

 深夜0時以降~日の出の時間帯に酒類、食事を提供する飲食店(深夜酒類提供飲食店)は、開業時に警察署へ“酒類提供飲食店営業開始届出書”を提出しなければなりません。深夜酒類提供飲食店は、閉店時にも届けを出す必要があります。
・“廃止届出書”を提出
・“届出認定書”の返還
⇒閉店日から10日以内に届出
(届出を怠った場合、30万円以下の罰金を科せられたり、行政処罰の対象になる場合もあるので注意しましょう)

 

■消防署

 開業時に“防火管理者選任届”を提出しています。防火管理者の解任日が閉店日とされているため、閉店時には届出が必要になります。
・閉店日を届出
⇒特に期限はない


■税務署

 下記届出が必要な各書類は、国税庁のホームページよりダウンロードでき、全国共通のものになります。
・“個人事業の開業・廃業等届出書”
・“給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書”
⇒閉店日から1ヶ月以内に届出

・“消費税の事業廃止届出書”(課税事業者の場合)
 
※課税事業者とは、基準期間の売上げが消費税を除いて1,000万円以上の事業者のこと
⇒速やかに届出

・“所得税の青色申告の取りやめ届出書”(青色申告をおこなっている場合)

⇒青色申告を取りやめた、翌年の3月15日までに届出
 

■公共職業安定所

 従業員を雇い、雇用保険に加入している場合は、店舗所在地を管轄する公共職業安定所に届け出る必要があります。
・“雇用保険適用事業所廃止届”(事業主控えのコピーを日本年金機構に提出)
・“雇用保険被保険者資格喪失届”
・“雇用保険被保険者離職証明書”
⇒閉店日の翌日から10日以内に届出

 

■日本年金機構

 従業員を雇い、健康保険・厚生年金保険・雇用保険のいずれかに加入している場合は、日本年金機構の事務所に書類を届け出る必要があります。
・“健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届”
・“雇用保険適用事業所廃止届”の事業主控のコピーを添付
⇒閉店日から5日以内に届出

 

■労働基準監督署

 閉店した場合、保険関係も消滅することとなるので、「確定保険料申告書」を提出して、年度当初に見込みで申告・納付してあった“概算保険料”を精算する必要があります。もし確定保険料の額が概算保険料の額より大きい場合には、その差額を納付しなければなりません。
 また、既に納付している概算保険料の額が確定保険料の額より大きい場合には、労働保険料還付請求書を提出することになります。
・“労働保険確定保険料申告書”
・“労働保険料還付請求書”(還付金がある場合)
⇒閉店日から50日以内に届出

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 これまでに挙げた手続きのほかにも、卸業者への連絡や、売掛金(ツケ)の回収なども忘れてはいけません
 そして何より、お客さまへの告知は、感謝の気持ちを込めてしっかりおこないましょう。

【記事飲食店閉店のお知らせ方法は?告知のタイミングは?

 大切なお店をたたむ時は、気力も体力も必要になります。それでもやってくる「その時」に備えて、どのような届出が必要なのかをしっかりと確認し、計画的な手続きがおこなえるように手順を把握しておきましょう。

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開店ポータル編集部
2019/04/09