閉店手続き

個人飲食店が閉店するときの手続きと、廃業以外の選択肢

開店ポータル編集部
2021/02/01

飲食店は、3年以内に廃業する確率が高いとも言われている業種です。特に最近では新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、廃業を余儀なくされた店舗も数多くあることでしょう。

このような現状ですから、飲食店を経営されている方は、いつ廃業に追い込まれてもおかしくありません。本記事では、飲食店が閉店・廃業する理由と、その手続きの仕方と合わせて、廃業負担を減らすための方法について解説してまいります。

飲食店の廃業数の現状

飲食店は、数ある業種の中でも特に廃業率の高い業種であるといっても過言ではありません。コロナ禍以前のデータ(2018年度)を見ますと、2018年4月~2019年3月までで、飲食店の倒産、廃業の合計は657件を記録しています。この年の全業種の倒産数の合計は1134件であったため、約半数を飲食店が占めていることが分かるでしょう。

 

また、業態別に見ると、酒場・ビヤホールが214件、西洋料理店が101件、喫茶店が73件となっています。都道府県別でみれば、東京都が192件、大阪府が126件、愛知県が84件と続いている現状です。

(出典:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p190602.pdf)

 

特にこれらのデータは、解説しやすいよう新型コロナウイルス感染拡大以前のデータを拝借いたしました。おそらく2020年度では更にこれまでのデータを上回る倒産数が記録されると予想できます。

飲食店の廃業理由

飲食店の廃業理由としては、以下のような理由が考えられます。

・資金難

・利益を求めてしまう

・新規顧客の獲得不足

・人手不足

・立地が良くない

・流行り廃り

・後継者不足問題

・新型コロナ禍における飲食店の廃業

それぞれ詳しく解説していきましょう。

資金難

1つは資金難です。飲食店を開業してすぐは、借入があったり、顧客がつかなかったりすることが予想されます。そのため、開業時に一定期間の売上が見込めないことを想定し、十分な運転資金を用意しておかなければ、開業してすぐに廃業に追い込まれるケースもあるのです。

 

これから飲食店を開業する方は毎月固定で出ていくコスト、変動費等を計算し、半年分程の運転資金をあらかじめ用意しておくと良いでしょう。

利益を求めてしまう

飲食店で売上を上げることを意識することは当然ながら大切なことです。しかし、利益を上げるために、人件費や材料費を極限まで削減しすぎてしまうと、逆にサービスの質を低下させてしまう可能性もあります。

 

サービスや質が低下してしまうと、これまで常連客がついていたとしても、離れていってしまうことにもなりかねません。そうしたことが結果として経営難を招き、廃業においこんでしまうのです。

新規顧客の獲得不足

飲食店の集客では、リピート顧客の獲得に力をいれることが重要であると言われることも多いですが、もちろんそれと平行して新規顧客の獲得も行っていく必要があります。

というのも、完全にリピート顧客に頼った営業をしていると、いざそのリピート顧客が引っ越しをしたり、なんらかの要因で来店頻度が減ったりした際に、経営が傾いてしまう可能性があるからです。

 

そのため、新規顧客を獲得するノウハウがないことが、廃業の理由となっている可能性もあるでしょう。

人手不足

どれだけ経営状態が良くても、人手が足りなければ、満足に営業を続けていくことはできません。飲食店は、正社員だけでなくアルバイトの定着率も悪い業種であると言われており、慢性的な人手不足に悩んでいる店舗が多いです。

 

人手不足が要因で、サービスの質の低下に繋がってしまい、結局は経営を悪化させてしまうことにも繋がる可能性があります。

立地が良くない

また、立地が良くなく、顧客も従業員も集まらずに移転もしくは廃業という選択肢どちらかを迫られるケースもあるでしょう。特に、開業してすぐの場合は、移転をする資金が残っていない可能性もあるため、これから開業をするかたは立地も重要な集客のための要素として考えておかなければなりません。

流行り廃り

飲食店には、流行り・トレンドが存在します。その流行りやトレンドに合わせたお店は、沢山出てくることでしょう。代表的な例は、2019年の夏から大ブームを引き起こした『タピオカ』です。『タピる』という造語が、流行語の候補としても上がるほどに人気があったタピオカですが、今現在は閉店しているタピオカ店も少なくありません。

 

このように、流行りに沿った専門店はブーム中は爆発的に売れるけれど、そのブームが去った途端に経営が傾いてしまう可能性もあるのです。

後継者不足問題

また、経営者が高齢となり経営を続けることができなくなって、いざ子供や親戚にお店を引き継ごうと思っても、それができない場合があります。考えられる理由としては、子供が別の仕事についている、継ぐ意思がない、親戚も子供もいない等があげられます。

 

これにより、たとえ黒字の店舗であっても、後継者不足問題を背景に廃業に追い込まれるケースも少なくありません。実際、全国の飲食店のうち約8割の店舗が後継者不足問題を抱えていると言われています。
 

新型コロナ禍における飲食店の廃業

飲食店はもともと廃業率の高い業種ですが、新型コロナウイルスの感染拡大が顕著になった2020年の3月ごろから新型コロナウイルスの影響を受けたという事由での廃業数が増加しています。

実際、帝国データバンクの調査では飲食店の倒産が2020年1月~11月までの間に736件発生し、11月の時点で過去最多を更新したとされています。このままのペースですと、12月末時点で800件に上る可能性があると予想できるでしょう。

 

具体的な理由としては、

①イートイン利用者数の大幅な減少

②仕入れ先や物流が滞る

③営業時間短要請

等があげられます。

 

テイクアウトやデリバリーを開始している店舗については、ある程度の利益が得られている部分もあるようですが、宣伝方法や認知度によってはあまり効果が得られてない店舗もあるのが現状です。

また、営業時間の短縮要請などにより、見込んでいた利益が得られずに経営状態が悪化してしまうケースもあります。

飲食店の廃業手続きについて

飲食店の廃業手続きの流れは以下の通りです。

【法人飲食店の廃業手続き】

まずは、法人格を持った飲食店の廃業の流れを解説していきます。

①飲食店の営業を終了する

②解散決議と清算人の選任を行う

③通知・官報広告を行う

④財産と債務を整理する

⑤財産分配確定後、清算確定申告

⑥清算決了の登記を行う

⑦税務署に清算決了届を提出

⑧廃業完了

 

官報の広告期間は2か月以上、清算確定申告に関しては、財産分配確定後から1か月以内と具体的な期間が定められています。尚、債務等の整理が終わらなければ廃業をすることはできないので、廃業を決めた時点で早めに整理をしておくようにしましょう。

株式会社で100%の株式を経営者が保持している場合はすべての財産が手元に残ることになります。

【個人飲食店の廃業手続き】

一方、個人飲食店の廃業手続きの手順は以下の通りです。

①財産・債務の整理

②リース契約の清算、支払い

③賃貸借契約の解約

④廃業通知

⑤各行政機関への届け出

⑥仕入れ先や取引先への連絡

⑦物件の原状回復工事

 

個人飲食店では、廃業が決まった時点で、財産や債務の整理を行います。また、リース契約の支払い等が残っている場合もあるので、清算し、必要であれば残額の支払いを済ませるようにしましょう。

 

その後、賃貸借契約を解約し、廃業届け等を行政機関に提出します。廃業する旨は、仕入れ先や取引先にも連絡をいれておくとよいです。

 

最後、賃貸借契約の解約ができたら、物件を原状回復する作業が残っています。原状回復は、借りていた物件を元の状態に戻すことで、床やクロスの張替などで高額請求がされる可能性もあります。

居抜きで店舗を売却する場合は原状回復費用が必要ない可能性もありますので、できるだけ廃業コストをかけないよう検討されるとよいでしょう。
 

飲食店廃業の負担を減らすにはM&Aも

法人の飲食店で100%の株式を経営者が保有している場合は、保持している財産をすべて手元に残すことができますが、そのほかの法人飲食店、個人飲食店では、廃業するのに多額のコストが必要な可能性もあります。

リース契約等や借入金の残金を支払う必要があったり、現状機回復費用が高額になるなど、廃業をすれば、資金問題からきれいさっぱり逃れられるというわけではないのが難しいところです。

 

そこで、飲食店の廃業における負担を減らす方法として、近年ではM&Aが注目され始めています。M&Aとは、簡単に言えば第三者に経営を売り渡すことです。子供や親戚ではなくても、経営を引き継ぐことができるため、後継者不足問題の解決等にもつながります。

また、人手が足りていない飲食店でも、M&Aで他店舗、他企業の飲食店を買い取ったりすることで、人材も同時に獲得することができるため、人手不足の解消にもアプローチすることができるでしょう。

 

そして何より、売却側は廃業コストがかからないうえに、売却益を得ることができるため、今後の生活資金を調達することも可能です。

 

まとめ

本記事では、飲食店が閉店・廃業するときの手続き方法と、負担を減らすための対策について解説いたしました。

飲食店の廃業数は新型コロナウイルスの影響もあり、今後増えていくことが予想されます。とはいえ、飲食店の需要は絶えずあるものです。何らかの形でサービス展開を充実させていくか、経営を第三者に譲り、事業を継続させていくのか、検討すると良いかもしれません。

何より、廃業するには、原状回復費用等多額の資金が必要になります。M&Aを実施すれば、売却益が得られるうえに、廃業コストを0に抑えることができるのは、嬉しい利点であると言えるでしょう。

 

開店ポータルBizでは飲食店の廃業手続きの支援やM&A実施のお手伝い等をさせていただいております。ご不明な点のある方、ご相談のある方は是非下記のお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
 

開店ポータル編集部
2021/02/01