資金計画

飲食店の事業計画書に必要な資金計画とは?作り方を知ろう

開店ポータル編集部
2019/12/20
 事業計画書のなかでも重要な項が、今回ご説明する「資金計画」。その概要や作成方法について、理解を深めていきましょう。
資金計画は、銀行からの融資をはじめ、補助金の申請や周囲の協力を得るために欠かせない資料のひとつです。また、店舗を経営するうえでの指標としても役立ちます。

 本記事では、資金計画の作成方法や注意点についてまとめてみました。
 作成した資金計画は、開店時だけでなく、開店後も定期的に経営状況を確認する資料として大切に保管しましょう。

資金計画とは


 資金計画は、事業計画書においてとくに注目される部分。「この事業に対して、これだけのお金を貸しても大丈夫か」「本当に返済ができるのか」といったことの判断材料になる、重要な項です。資金計画には次の4つを盛り込みます。

投資計画
何にいくらお金をかけるのか
売上計画
いつまでに、いくら売れるのか
利益計画
いつまでに、どれくらい儲かるのか
返済計画
借入金をどのように返していくのか

 このような計画を数字で示すことで、金融機関の信頼を得ることができ、融資の審査に通りやすくなります。しかし、資金計画の役割は、それだけではありません。

資金計画のもうひとつの役割


 資金計画のもうひとつの役割は、お店に入ってくる「利益」と手元にある「資金」のズレを把握し、スムーズな資金繰りができるようにすることです。

 飲食業界は、オープンから3年以内に7割以上が廃業、10年生き残れるお店はわずか1割という厳しい世界です。
 廃業に追い込まれるいちばんの理由は、資金繰りができなくなること。たとえ黒字経営でも、固定費の支払いや借入金の返済に困るようになれば、営業を続けることはできません。



 どのお店も、最初は「売上を伸ばす」ことを意識しがち。しかし、「これだけ儲かればいいや」と安心し、資金がいくらあるのか把握せずにいるのは危険です。今月支払うべき家賃や光熱費に充てるお金が手元になければ、どんなに利益が出ていても経営は苦しくなり、黒字倒産まっしぐらなのです。

 利益と手元にある資金はイコールではない。これを認識し、「いつまでに、資金がいくらあればいいのか」がわかるようにすることが、資金計画書の役割であるといえます。

資金計画書のつくり方

 資金計画は、「投資計画」「売上計画」「利益計画」「返済計画」の4つによって成り立つとお伝えしました。ひとつずつ解説していくので、本章を参考に資金計画を立てていってください。

Step①:投資計画

 資金計画の第一歩は、「何にいくらお金をかけるのか」といった投資計画を立てること。投資計画は、「設備資金」「運転資金」というふたつの面から考えます。
 まず設備資金とは、開業時に必要な厨房機器や什器、インテリア、内装工事などにかかるお金です。いちど購入したら、しばらくの間使い続けるものです。
 次に、運転資金とは、お店を営業するうえで継続的にかかるお金。家賃や水道光熱費、食材原価、人件費などが該当します。

設備資金

 土地・建物・設備・什器備品など店舗のオープンに向けて必要な資金のこと。賃貸物件の場合は、入居のさいに必要な初期費用が該当します。

 内訳は、「物件取得費」「設備工事・什器備品」「開業費」などです。
 物件取得費は、一般的に家賃の10ヶ月分程度が目安です。例えば、家賃が20万円であれば、10ヶ月分で200万円。
 設備工事・什器備品は、内装や外装などの工事費用やホールに設置するインテリアなどで、かかる費用は、店舗の規模によって違います。複数の会社から見積もりをとり、なるべく費用をおさえましょう。また、最低限必要な設備のみにして、費用をおさえる工夫も求められます。
 開業費は、開業前の水道光熱費や、仕入れ資金などです。

 以下はレストラン開業における、設備資金の例です。
 場所や規模に応じて金額は変わります。
レストランにおける設備資金例
■物件取得費(保証金)・・・200万
■設備工事・什器備品費・・・600万
■開業費・・・80万
合計 880万

運転資金

 定期的または継続的に必要な資金のことです。従業員の給料や、仕入れに必要な資金、光熱費、通信費などが該当します。
 事業が軌道に乗り利益が出るまでの日数は、平均で約7ヶ月とされています(※日本政策金融公庫調べ)。運転資金は、月にかかる固定費の3ヶ月分から7ヶ月分程度、余裕を持って準備しましょう。

 以下はレストラン開業における、運転資金の例です。
 場所や規模に応じて金額は変わります。
レストランにおける運転資金例(1ヶ月分の固定費)
■材料費…12万円
■人件費…5万円
■賃貸料…20万円
■光熱費・通信費…20万円
■消耗品…1万円
合計 58万円

 上の場合、58万円の固定費がかかっています。この場合、最低でも174万円。7ヶ月分用意するのであれば、406万円程度必要です。
 ほとんどの場合予算オーバーになるので、投資計画は多めに見積もっておいたほうがいいでしょう。
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★開業時に必要な資金の種類・必要金額に関する記事はこちら★
飲食店開業に必要な資金と種類・必要金額の目安を簡単にまとめてみた

Step②:売上計画

 次は、「いつまでにいくら売るのか」という売上計画を立てましょう。まず、一日あたりの売上高を次の式で求めます。
売上高=客単価×席数×回転率×満席率

回転率…営業時間÷平均滞在時間
カフェであれば、近隣のカフェに訪れてお客さまの滞在時間を感じてみましょう。
満席率…客数÷席数
4名がけのテーブルを2人で使う場合もあるため、20席あっても満席時に10人しか座っていない(この場合は満席率50%)こともあります。

 ランチやディナーなど時間帯ごとに売上高を計算して、合計すると一日の売上高がわかります。低調時(雨の日など)、標準時、好調時(連休など)の3パターンに分けて計算しておきましょう。

Step③:利益計画

 次に、「実際にいくら儲かるのか」という利益計画を立てましょう。まずは、「変動費」と「固定費」に分けた、ランニングコストの確認が必要です。

 変動費は売上の増減によって変わる費用で、食材原価、水道光熱費、人件費、広告宣伝費などが該当します。トータルで売上の60~70%に抑えましょう。
 固定費は、売上の増減に左右されない費用で、家賃、減価償却費、リース料などが該当します。こちらは、トータルで売上の15~25%が目安です。

 理想は、変動費+固定費が売上の90%以下、つまり経常利益が売上の10%以上になることです。融資を受けると、税引き後の経常利益から毎月の返済をすることになるので、ここにも注意してください。計算してみて、残る利益が極端に少ないようであれば、売上計画やコンセプトを練り直す必要があります。

Step④:返済計画

 資金計画のなかでも重要なのが、「どこからお金を借り、どのように返済していくのか」といった返済計画です。

 まず借入先選びですが、新規開業者であれば、銀行の融資を受けるのは難しいでしょう。なぜなら、これまでの実績もなく、経営者としてどれくらいの力があるか分からないからです。倒産のリスクを避けるため、銀行はなるべくお金を貸したくないと考えるのです。

 新規開業の場合は、日本政策金融公庫や地方自治体の融資に申し込みましょう。前提として、開業資金の3割は自分で用意すること。これが融資元からの信頼の土台になります。

 借入金の返済は、税引き後の利益からおこないます。月々の返済額が、税引き後の利益と減価償却費の合計を上回らないように注意して、返済計画を立てましょう。
★資金調達に関する記事はこちら★
飲食店が開業時に頼れる7つの資金調達方法


 資金計画は、完成したら終わりではありません。手元のお金の増減に合わせて、売上計画と利益計画の数字を変えていく必要があります。「いつ、いくら資金が足りなくなるのか」がわかれば、無理のない売上目標を設定でき、お金のやりくりに困りません。

 また、お客さまが現金で支払った場合と、クレジットカードなどで支払った場合は入金のペースが違います。各種業者にお金を支払うときも、取引先によって代引か後払いかが変わるでしょう。

 入金と支払いのペースが異なれば、手元にあるお金の額も変わります。そのため、「イートインと、お弁当の大口注文」「卸売業者Aと卸売業者B」などのように、取引を分けて計算しておきましょう。詳細な売上計画や利益計画を立てることができ、資金計画の信頼度が増します。
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資金調達の方法

 資金調達は、親族や友人からの借り入れのほか、日本政策金融公庫や金融機関から借り入れる方法が一般的です。
 ただし、一定の条件を満たせば、開店資金として活用できる補助金もあります。

 例として、レストランの開業や経営のさいに利用が可能な補助金を紹介します。

地域創造的起業補助金

 経済の活性化を目的に、創業者に経費の一部を助成する制度です。ただし、新しく従業員を1名以上雇い入れるなど所定の条件があります。
 外部資金調達がない場合は、50万円から100万円まで。外部の資金調達がある場合は、50万円から200万円までの範囲で、補助金が受けられます。
 公募期間が決められており、2018年度は、4月27日から2018年5月22日頃まで募集されていました。

小規模事業者持続化補助金

 看板やチラシの作成、内装の改装に使える補助金です。補助率は2/3、補助金の上限額は1事業者に対し50万円です。
 2018年度は、3月9日~5月18日まで受付をしていました。

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 資金計画を含む、事業計画書は、融資や経営状態の見直しはもちろん、補助金の審査にも役立ちます。また、これらの資料はオーナーが自ら作成しましょう。そうすることで、開業後に起こりうるさまざまな事態を想定できます。
 はじめて開業する場合、わからないことも多いはず。そんなときは、頼れる税理士やコンサルタントなどにも相談し、アドバイスをもらいながらすすめていくのがよいでしょう。

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